今回は2026年秋公開の注目映画『DIGGER/ディガー』をご紹介します。
(ネタバレ少し含みます)
今作については賛否両論巻き起こっていますが…観るかどうか、迷ってる方は絶対に映画館で観たほうがいいと思う1本です!
できれば劇場の大きなスクリーンの、大音響で観るべきという1本だと思います。
(トップ画像:引用https://www.facebook.com/deadline)
世界を救うのは世界を壊した男?トム・クルーズの異色作

石油発掘会社のCEOであるディガー・ロックウェル(トム・クルーズ)は、自らの利益を追求するあまり、地球を滅亡の危機に陥れてしまう。
事態の収拾を図るべく動き出す彼だが、果たして世界を救う事はできるのか?!
『バードマン』『レヴェナント:蘇りし者』などで知られる、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の作品。
トム・クルーズを主演に迎え、共演はリズ・アーメッド、ジョン・グッドマン、ザンドラ・ヒュラー、マイケル・スタールバーグ、ジェシー・プレモンスらが名を連ねる。
権力者が引き起こす大混乱を、政治風刺やブラックコメディを交えて描く。
先が読めそうで、微妙に読めない「入れ子構造」

本作の特徴のひとつが、マトリョーシカのような入れ子構造です。
ディガーたちの物語を観ていると思えば、いつの間にか舞台上の出来事になり、今度はその舞台に立つ役者たちの話、さらに…とレイヤーが重なっていきます。
ひとつの物語に腰を落ち着けたかと思うと、また別の層へ。
先が読めそうで微妙に読めない展開も相まって、観ているこちらはなかなか気が休まりません。
こうした構造によって、何が現実で、何が演出された物語なのか、その境界も曖昧になっていきます。
ただ、仕掛けそのものは決して難解というわけではありません。
映画が何を風刺しようとしているのかは比較的わかりやすい一方で、物語の層が切り替わるたびに集中を求められます。
率直に言って、鑑賞後かなり疲れを感じました。
真実は人それぞれ。それでも「真実」の物語は人を動かす

本作を観ながら考えていたのは、結局真実は人それぞれなのだろう、ということです。
同じ出来事でも立場や価値観が違えば当然受け止め方は変わります。
しかし世の中で起こる複雑な事象も「ひとつの真実」として、わかりやすい物語に置き換えることで、集団をまとめたり、特定の方向へ誘導したりすることもできるのだと思います。
ディガーは、エゴや欲望、権力への執着が誇張された、わかりやすい人物として(舞台上で)演出されます。
彼の物語は、本人の存在とは関係なく、劇の中で演じられ、語られ続けられるのだろうと思います。
何度も物語として語り直されるうちに、象徴としてのイメージが強くなる一方で、実際にはどんな人間だったのか、その輪郭はかえってあいまいになっていくのかもしれません。
『ディガー』はそんな「真実」の得難さや、それでも「真実」を語る物語を求めずにいられない私たち人間の風刺を、さまざまな物語の層を通して見せている作品という印象でした。
約10分にわたる、トム・クルーズの圧巻の演説

本作を観た人におそらく最も印象に残す場面は、トム・クルーズが迫真の演技を見せる、約10分間の演説シーンだと思います。
あのシーン、ディガーが語る言葉を、現実の政治家や世界情勢と結びつけずに観るのはむずかしいのではないでしょうか。
誰を、何を風刺しているのかダイレクトに伝わってくるような圧を感じました。
ともすれば、観客が自分なりの解釈を差し込む余地がなく、窮屈と捉えられかねないシーンにもなりますが、私はあのトムの演技あってこそ出せる圧迫感という感じで楽しめました。
大げさな身振りや声の貼り、言葉に込められた熱量。
ディガーという人物の異様さ、権力の大きさが一気に押し寄せてくるあのシーンは本作の見どころだと思います。
安っぽい舞台装置が映し出す、自然と人間の関係

本作は、ふつうの物語と見せかけて、実は観客が序盤で観ていたものは舞台で演じられる劇中劇だった…
というのが最初のオチだと思うのですが、「舞台」そのものの活かし方も印象に残りました。
オチが明かされるシーンでは、ディガーと大統領が窓の外を見つめるショットから、演劇用小物の木がぽろっと崩れてしまうというのを映します。
このことで、観客には今まで観ていた映像が「劇中の誰かによって演出されたもの」だとわかります。
作り物だとわかっているのに、それを波や風として受け取る。
本作を観ていると、自然現象を緻密に人間の手で再現し、制御しようとする行為には、どこか皮肉が感じられます。
現実の自然もまた、カメラに収められ、映像となり、ニュースや政治の言葉を通して意味づけられていきます。
舞台上の小道具と、映画の中で描かれる大きな自然災害。その対比が面白く感じました。
また、本作は切羽詰まった展開が多いのですが、緊迫した場面で病床に臥す大統領にヨボヨボと妻が薬を運んできたり、メイドが汚れたシーツを片づけたりする日常的な動作が入り込むのもシュールで可笑しかったです。
壮大な権力闘争や世界の危機が描かれる一方で、誰かの身体をケアしたり、生活を維持する仕事は淡々と続いています。
大きな物語とは少し離れた、こうした日常の営みも印象に残りました。
まとめ:見応え十分な作品だけど、ちょっと疲れる?

『ディガー』は印象的なシーンもいくつもあり、トム・クルーズの演技には目を見張るものがありました。
特徴的な入れ子構造、政治風刺についても考えさせられる部分はあります。
ただ全体の印象としては劇中の物語から舞台上の物語へ、さらに役者たちの話へと移り替わる展開に振り回され、ラストも期待したほどのカタルシスは得られずちょっと疲れた…という感じです。
『エディントンへようこそ』を観たときの感覚に少し似ていました。
が、少しでも気になっているならばぜひ観るべき作品ではないでしょうか。
アリ・アスター監督最新作『エディントンへようこそ』を考察、面白さは遅れてやってくる?!(by:にゅっき)


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