映画館では絶対予告から観たい派、どうもミナギです。
今回は『セッション』のあらすじと見どころを紹介します。
人生にたくさんの影響を与えてくれる、我々の生活に欠かせない「音楽」。
音楽がテーマの映画はやはり、人生が豊かになっていくハートフルな作品が多いように感じます。
オーケストラや吹奏楽の様に「団体で何かを目指し一つのものを作り上げていく!」というものは特にですね。
しかし逆に音楽に良くない意味で狂わされてしまう人もいるわけで、主人公をはじめとした今作『セッション』の登場人物達も、まさに憑りつかれてしまったその一部です。
最早ホラー映画と言ってもいいような、救いようのない狂気的な展開の連続で物語が進んでいきます。
他の音楽映画とは一線を画した、特殊な魅力をたっぷりお伝えできればと思います。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/WhiplashMovie/)
あらすじ:人生を狂わせる、狂気のスパルタ・レッスン
主人公は名門音楽学校に通う19歳の青年、アンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)。
世界的ジャズドラマー、バディ・リッチの様な、偉大なドラマーを目指しています。
ある日教室でいつものようにドラムを叩いてたところ、学内最高と言われている指導者のテレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ)に目を付けられます。
後日フレッチャーはニーマンのクラスに訪れ、そのまま自身の管理するバンドチームにニーマンを引き抜きました。
最高指導者による待望の上位クラス入り!しかし・・・
学内最高のチームに入れると、期待で胸を膨らませて練習に参加するニーマン。
しかしその希望や期待は、初日で粉々に砕かれます。
フレッチャーは「完璧な演奏」を異常な程に求める鬼教師だったのです。
生徒の演奏が自身の基準に少しでも満たない場合は、侮辱や暴言を含む容赦ない罵詈雑言と暴力を浴びせ、それを受けた生徒たちは次々に心が折れていきます。
例に漏れずニーマンも僅かなテンポの違いで罵声を浴びせられ、皆の前で殴られてしまい、ただうつむいて泣く事しかできませんでした。
そして、ただ「完璧」を求める狂気の世界へ
しかしニーマンはここで折れることはありませんでした。
悔しさに火が付いて、この日をキッカケに文字通り血のにじむような猛特訓を始めます。
フレッチャーの指導は過激さを増すばかりですが、それに続くようにニーマンも段々と狂気的にドラムへのめりこんでいきます。
恋人や家族とも疎遠になってまで、フレッチャーの要求する極みへと進むことだけを考えひたすらにドラムを叩きますが、そんな最中に様々な事件が不幸なまでにニーマンを襲います。
それぞれ違った理由、違った世界で「完璧」を追い求める二人。
二人の奏でる音楽と歪んだ師弟関係は、どのような結末を迎えるのか。
映画で性格診断?貴方は耐えきれるか?
パッケージだけ見ると、“主人公が紆余曲折しながら上達していく青春もの”に見えてもおかしくないですよね。
筆者はバンドでヴォーカルとギターをやっているのですが、この作品はドラマーの知り合いに「音楽をやってる人が見ると心臓がバクバクして苦しくなるよ」と言われ、そこまで言うならと鑑賞しました。
実際紹介してくれた知り合いのドラマー以外にも、この映画を見ると自分が追い込まれている様な気分になって苦しくなってしまう人も一定数いるようですね。
今作のテーマは「ドラム」ですがあくまでそれはテーマであって、本質的には「自分を追い込みすぎてしまう人」全般に刺さる内容じゃないかなと思いました。
主観してしまうと辛くなる!あなたはニーマンと同じタイプ?
個人的な感想としては、あくまでも映画としてかなりオーバーに表現された「ひとつの努力の形」だと思います。
人によっては、ニーマンの様にどんどん追い込まれている様に感じ、抜け出せなくなってしまうタイプもいるでしょうね。
ちなみに、筆者は妥協してでも常に自分の事を考えて適度に逃がしてあげるタイプです。
幼い頃からピアノをしていましたが楽譜を読むのが大の苦手で、自分の思い思いに誤魔化しながら弾くのが得意(?)でした。
フレッチャーに殴られるどころではすまないでしょうね・・・(笑)
そんな性格ですので、これを見て苦しむこともなく、とても他人事に「イヤンこんなの楽しくないワン」と思いました。(笑)
しかし同時に「でもちょっとは見習わないとネ」と天の声が聞こえてきた気もします。
結局のところ、どちらも極端なのは良くないのでしょうね。(笑)
物語を盛り上げる迫真の演技とドラムテクニック!
また今作は数々の賞を受賞しており、シンプルに物語としてもとっても面白いです。
様々な事件からどんどん歪んでいく師弟関係が見もので、サスペンスの様な予想できない起承転結が詰まっています。
後半は拍車がかかり、どんどん私情丸出しの姑息ともいえるバトルへと発展していきます。
リアリティがあるようでないような映画としての旨味も詰まっていて、さすがたくさん賞を取っている作品だなとドキドキワクワクさせられます。
また当然演技も見事で、フレッチャーの狂気と追い込まれていくニーマンの狂気を画面越しにこれでもかというくらい訴えてきます。
恐ろしいほど淡々と繰り広げられる、ドラムの超絶技巧!
そしてこの映画が視聴者を引き込む大きな理由は、やはりなんといっても息を飲むほどに高度な演奏シーン。
素人目にもわかる超絶技巧の数々が、静かに、そして確実にどんどん高くなっていく心拍数を表しているかの様に物語を盛り上げていきます。
もう十分凄いことをしているのに全く納得していないフレッチャー、その感情を表しているかのように、演奏シーンは派手でなく恐ろしい程淡々としているんですね。
またドラムは、ピアノやギターの様に音階がわかりやすい楽器ではないので、打ち鳴らされる打楽器の音の粒はとても単純で、それがより淡々と静かに迫ってくる狂気さを生み出しているミソな気がします。
主人公のニーマンを演じたマイルズ・テラー氏は、この撮影に向けてかなりドラムを練習したそうです。
(引きで撮っている演奏シーンも多々ありますし、そりゃそうですよね・・・)
手元を演じるのはアメリカのドラマー、“Kyle Crane”
それ以外にも、手元のシーンなどは実際のプロドラマーが演じており、うまくつなぎ合わさっています。
ここで一つ自慢ともいえる余談なのです。
実は2023年1月、筆者が神戸でライブをした際、なんと劇中で実際に手元の超絶技巧シーンを演じたアメリカのドラマー「Kyle Crane」氏が共演相手としていらっしゃって、少しお話させていただいた事があります。
ツアー中で昼夜逆転の生活を送っているため顔がこれでもかという程パンパンな筆者は置いておいて、左の方がCrane氏。
実際に生で見たステージも、まんま劇中の様な超絶技巧と確かなテクニックの連続で、震えました。
得意の中学英語で話しかけたところ気さくに話してくださり、写真をお願いした時も快く撮ってくださいました。
ご自身のキャリアでも、セッションの仕事はやはり代表作といえるものらしいですね。
映画好きとしても、宝物の1枚です。
たまたま来日して行ったライブが我々のツアーと被った事でこういう機会が生まれたわけで、事実は小説より奇なりと言いますか、まるで映画の様な巡りあわせでとても感動しました。
映画のサントラは勿論、Crane氏のソロ名義でのアルバムもオルタナティブでとってもかっこいいので、是非この映画と一緒に聴いてみてください!
まとめ:ある意味反面教師?頑張る自分を癒してあげて
いかがでしたか?
原題の「Whiplash」は劇中でも度々演奏されるハンク・レヴィのジャズの有名曲のタイトルで、「むち打ち症」という意味があります。
また、首に大きな負担がかかるドラマーの職業病の名前でもあるそうです。
実に皮肉の効いた、意味深で奥深いタイトルで筆者は原題の方が好きです。
気になった方は是非見てみてください。
そしてあなたがもしこれを見て苦しくなってしまうタイプだったら、あなたは日々自分を追い込みすぎかもしれません。(笑)
自分を認めて、今より少し楽観的に目の前の課題と向き合ってみてもいいかもしれませんね。
それでは。
《ライター:野元ミナギ》クリックで担当記事一覧へ→
■1998年生まれ、大分県在住。
「Sleeping Girls」というバンドでボーカルとギター、作詞作曲をしています。
音楽、映画、お酒、オカルト、猫、水族館、お笑いなどなどが好きです。
好きな映画達の魅力が上手く伝われば幸せです。
■X→https://twitter.com/ponagitin6937
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