アガサ・クリスティといえば、「ミステリーの女王」と呼ばれる推理小説作家。
彼女の小説自体の人気もさることながら、ミステリー作品としていくつも映画化されてきました。
数年前に『オリエント急行殺人事件』が公開され、ケネス・ブラナー演じる名探偵エルキュール・ポワロが見事、難事件を解決してくれました。
あの結末には、誰もが驚きを隠せません。
ポアロがその次に行き着いた先は、エジプト・ナイル(映画化『ナイル殺人事件』)。
そして、イタリア・ベネチア(映画化『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』)と、ポアロの謎解きツアーは続きます。
ここでは、そんなクリスティ原作の人気作「ポアロ=ケネス・ブラナー3部作」と、番外編でクリスティ自身が最高傑作と認めた『ねじれた家』の4作を紹介しましょう!
(冒頭画像:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/)
《目次:映画化「アガサ・クリスティ」作品おすすめ4作品》
1.A Haunting in Venice
最新作は『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』(23)
名探偵ポアロシリーズの『オリエント急行殺人事件』、『ナイル殺人事件』に続く今作『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』』は、前作とちょっと趣が変わります。
映画タイトルにあるように、「ベネチアの亡霊」としてホラー感が加味されます。
原作は、1969年発表の※「ハロウィーン・パーティ」です。
ミステリー&ホラーとして、ポアロの謎解きはさらに難解さが深まりそうです。
ずっと隠遁生活にあこがれているポアロが過ごしていたのは、「水上の迷宮都市」と言われるイタリアのベネチア。
そこで図らずも謎の霊媒師に出くわし参加した降霊会で、またまた招待客の一人が殺されるという事件に遭遇します。
しかも、普通では考えられない超常現象?での殺害。
迷宮都市ベネチアに呼応するかのように、ポアロの思考も迷宮入りしていくのでしょうか?
※アガサクリスティ原作「ハロウィーン・パーティ」
ハロウィーン・パーティー (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
※推理作家のオリヴァ夫人を迎えたハロウィーン・パーティで、少女が突然、殺人の現場を目撃したことがあると言いだした。パーティの後、その少女はリンゴ食い競争用のバケツに首を突っこんで死んでいるのが発見された!童話的な世界で起こったおぞましい殺人の謎を追い、現実から過去へと遡るポアロの推理とは。【引用:Amazon】
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霊媒師に『エブエブ』のミシェル・ヨー、ポアロと対決!
今作のキャストは、ポアロ役は前2作に続きケネス・ブラナーが監督と主演を兼ねます。
すっかりポアロの顔となったケネス・ブラナーが楽しみですよね!
そして、注目はポアロ探偵に対峙する霊媒師に『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞主演女優賞を獲得したミシェル・ヨーが登場します。
霊媒師がピッタリのミシェル・ヨーをご覧ください。
2. Death on the Nile
『ナイル殺人事件』は、アガサお得意の密室殺人!
ポワロ探偵シリーズの2作目は、『ナイル殺人事件』です。
第1作目のヒット作『オリエント急行殺人事件』に続き公開されました。
ポワロが休暇を過ごす予定だったエジプト。
どういうわけか、事件はポワロが休暇中に起こってしまうんですよね。
エジプトで遭遇したのは、ナイル川に新婚旅行にきていた美貌のリネット・リッジウェイ(ガル・ガドット)とその夫サイモン(アーミー・ハマー)。
(『オリエント急行殺人事件』のキャストも豪華でしたが、今回もいきなり『ワンダーウーマン』の主役(ガル・ガドット)や『ビリーブ 未来への大逆転』のアーミー・ハマーが登場します!)
ポワロが聞いたのは、リネットは夫の元婚約者であるジャクリーン(エマ・マッキー)から、執拗に付きまとわれているとのこと。
3人の間になにかきっと深い事情がありそうだと感じるのですが、そうこうしているうちに一緒に乗り合わせた遊覧船内で「お約束の殺人」が勃発します。
殺されたのは、なんど相談者のリネットでした。
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※美貌の資産家リネットと夫サイモンのエジプトでのハネムーンに暗雲が垂れこめていた。サイモンのかつての婚約者が銃を隠し二人を付け回しているのだ。不穏な緊張感が高まるなか、ナイル川をさかのぼる豪華客船上に一発の銃声が轟く。それは嫉妬ゆえの凶行か? 船に乗り合わせたポアロが暴き出す意外な真相とは? 【引用:Amazon】
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ポワロに試練、再び起こる密室殺人事件
リネットが殺されたとなると、一番最初に疑われるのはジャクリーン。
婚約までしていた夫を横取りされたとしてリネットに怨念を持ち、二人の新婚旅行先までついてきたのですから動機は十分です。
しかし、ジャクリーンのアリバイを証明する人物が現れ、事件はさっそく難しい局面に入ります。
ただ、『オリエント急行殺人事件』がそうであったように、今回の殺人事件も、ナイル川に浮かぶ遊覧船内という密室殺人。
再び、ポワロの推理が動き出します。
どんな推理で、どんな決着に導くのか楽しみです♪
参考記事:新『ナイル殺人事件』あらすじと主要キャスト、ガル・ガドット対エマ・マッキーが密室対決⁈
3.Murder on the Orient
『オリエント急行殺人事件』、豪雪に埋まった列車内で
ところで、ポワロが先に手掛けた難事件の代表である『オリエント急行殺人事件』はどんな事件だったのでしょう?
20世紀半ばの、トルコ・イスタンブール発フランス・カレー行きの長距離列車「オリエント急行」が舞台です。
途中から豪雪となり、立ち往生せざるを得なかった車中で起こった密室殺人事件。
乗客は、ポワロと乗務員を含めて16人。
列車の運行会社の依頼を受け、警察に引き渡すまで私立探偵ポワロが捜査を進めることになります。
殺されたのは、富豪の男でいかにも殺されてしかるべき過去を持つ男でした。
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※冬の欧州を走る豪華列車オリエント急行には、国籍も身分も様々な乗客が乗り込んでいた。奇妙な雰囲気に包まれたその車内で、いわくありげな老富豪が無残な刺殺体で発見される。偶然乗り合わせた名探偵ポアロが捜査に乗り出すが、すべての乗客には完璧なアリバイが……ミステリの魅力が詰まった永遠の名作の新訳版。【引用:Amazon】
国籍、職業、年齢がバラバラな乗客たち
ポワロは、真犯人に辿り着くために、乗客一人ひとりと面談を行います。
すると、犯行が行われた時間にそれぞれがアリバイを持ち、しかも証明する人がいるという奇妙な結果に辿り着きます。
お互いが、お互いをかばい合っている?
いや、偶然に乗り合わせたはずの、国籍も職業も年齢も何の共通点も持たない乗客たちにそんなことができるのだろうか?
しかし、一方でポワロが感じ取ったのは、全員が怪しいという矛盾でした。
見どころは、個性豊かな乗客たちのキャスト陣
ミステリー映画の楽しみ方は、もちろん真犯人を見つける謎解きです。
ところが、ポワロをして全員が怪しいと疑わさせるベテランキャスト陣と演技が凄かった!
主なキャストと、代表作を紹介しておきましょう。
- ドラゴミロフ公爵夫人:ジュディ・デンチ(『007シリーズ』など)
- そのメイド:オリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』など)
- 未亡人のハバード夫人: ミシェル・ファイファー(『危険な関係』など)
- 家庭教師デブナム:デイジー・リドリー(『スター・ウォーズ』など)
- 宣教師エストラバドス:ペネロペ・クルス(『ボルベール〈帰郷〉』など)
- ハードマン教授: ウィレム・デフォー(『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』など)
- そして、殺された富豪ラチェット:ジョニー・デップ(『パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズ』
小説を読んで、結末を知っている人たちは、特に名優たちの絶妙の演技を楽しんで下さい。
4.Crooked House
『ねじれた家』、クリスティ自身が認めた最高傑作!
アガサ・クリスティが書いた多くの長編小説の中で、自らが最高傑作と評したのが『ねじれた家』(原題:Crooked House)を最後に紹介しておきましょう!
ポワロは登場しませんが、違う語り部が物語を運んでくれます。
殺人が行われた華麗なる一族「レオニデス家」に住む家族の依頼で登場するのが、元外交官のチャールズ・ヘイワード(マックス・アイアンズ)です。
殺されたのは、当主のアリスタイド・レオニデスで、就寝中に何者かによって毒殺されます。
チャールズが同居する家族の聞き取りをすすめていくと、彼らはいかにも「ねじれた」ような人物ばかり。
意外な真犯人!お約束以上のドンデン返し
さて、あらためて「この物語には意外な真犯人が!」と言わなくても、ミステリー作品に意外性はつきもの。
この作品では、想定以上のドンデン返しで期待を裏切りません。
意外性のひとつは、当然ですが真犯人の意外性です。
チャールズに調査を依頼したのは、殺されたレオニデスの孫ソフィア(ステファニー・マティーニ)で、彼の元恋人でした。
多少、過去を引きずりながらも、チャールズはソフィアを含めた家族全員から調査を進めていきます。
まず、浮かび上がってきたのは、レオニデスの再婚の妻ブレンダ(クリスティーナ・ヘンドリックス)でした。
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※ねじれた家に住む心のねじれた老人が毒殺された。根性の曲がった家族と巨額の財産を遺して。内部の者の犯行と思われ、若い後妻、金に窮していた長男などが疑心暗鬼の目を向け合う。そんななか、恐るべき第二の事件が……マザー・グースを巧みに組み入れ、独特の不気味さを醸し出す童謡殺人。【引用:Amazon】
もうひとつの意外性、殺人に至った犯人の動機!
真犯人の意外性の他に、この物語にはもうひとつの意外性がありました。
ミステリーで殺人犯をあぶり出して行く過程は、なぜ殺すに至ったかという動機が重要です。
家族愛のない家庭の大富豪の当主が殺された時、考えるのは財産への執着心ではないでしょうか?
それについては、再婚していた妻、息子たち夫婦、そしてその子供たちも一様に疑わしいところがあったのは確か。
調査を進めるチャールズが、操作に行き詰まり感を覚えたのは、「もしかすると、もっと違う動機があるのでは?」。
映画を観る人の、誰もが驚く二つの意外性!
これぞ、ミステリー!というドンデン返しが仕組まれていますので、最後までたっぷり楽しめます!
- レオニデス家の大伯母イーディス:グレン・クローズ
- 同 次男の妻マグダ・レオニデス:ジリアン・アンダーソン
- 同 若い後妻ブレンダ・レオニデス:クリスティーナ・ヘンドリックスなど
キャストでは、被害者の大伯母イーディスを演じるグレン・クローズのベテランの味が光ります。
次男の妻マグダには、ジリアン・アンダーソンが登場。
彼女は、不滅の『X-ファイルシリーズ』の、なんと「スカリー警部」。
終始、酔っぱらってしまっていました(笑)。
まとめ~映画で楽しむミステリー~
ミステリーは、小説のページをハラハラしながらめくっていくという、原作小説での楽しみ方も確かにあります。
一方、映画での楽しみ方はその役になり切った俳優の絶妙な演技にあります。
真犯人であるかないかは別にして、問い詰められた言葉に動揺し、なんとなく「犯人感」を見せてしまう瞬間を楽しむという方法です。
疑わせるように見せたしぐさは、映画の展開をミステリアスにするためにわざとしたものかもしれません。
鑑賞する人は、惑わされずストーリーをしっかり追いかけましょう。
DVDなど再生可能なものは、ちょっと巻き戻して振り返ると面白いかもしれませんね。
《原作者紹介》
●アガサ・クリスティー(Agatha Christie)
誕生日:1890年9月15日~ 1976年1月12日
出身:イギリス
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