映画界で、指摘される声が多いのが男女間格差の問題です。
撮影や制作現場に力仕事が多く、過去から典型的な男性中心社会だった結果だと言われています。
男優・女優で異なる待遇面や、差別問題、セクハラ問題が顕在化してきていますが、意外なのはこういったジェンダー問題がクローズアップされるのはここ最近のこと。
文化度の高いはずの映画産業のこと、開けた業界と思いきや古い慣習や実態を知ると驚かざるを得ません。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/BarbieTheMovie/)
関連記事:ぜひ観てほしい女性映画監督による作品特集【洋画編】、約40本の話題作・注目作品を一覧で紹介!
《目次:台頭する女性監督と代表作品
- グレタ・ガーウィグ監督
- 『バービー』『レディ・バード』など
- パティ・ジェンキンス監督
- 『ワンダー・ウーマン』『モンスター』など
- キャスリン・ビグロー監督
- 『ハート・ロッカー』『デトロイト』など
- ソフィア・コッポラ監督
- 『プリシラ』『ビガイルド』など
- カリン・クサマ監督
- 『ストレイ・ドッグ』など
▶参考:サイト内女性監督の作品記事
さて、そんな中でも最近、女性監督の話題作がますます注目されるようになっています。
本来「女性監督作品」を区別して取り上げること自体がおかしいとはいうものの、監督人数、作品数そして各種映画賞の受賞などまだまだ少ない中で、注目され、評価される作品を発信する女性監督が確実に増えているのも事実。
今記事では、映画界の男女間格差とジェンダー・ギャップに変化をもたらす監督と代表作を紹介したいと思います。
1.Greta Gerwig
グレタ・ガーウィグ監督、『バービー』でさらに注目!
こちらの画像は、2023年公開の話題作『バービー』発表会のもの。
全身ピンクの衣装に身を包み登場しました。
実際の映画の中でも、全編ピンク中心のカラフルな舞台セットの中で主演「バービー」(マーゴット・ロビー)が登場します。
さぞかし今作は、かつて「女の子」が手放さなかった大好きなバービー人形へのノスタルジー映画かと思いきや、実はグレタ・ガーウィグ監督から強烈なメッセージが込められていました。
ひとことでいえば、「バービー=ステレオタイプの女性らしさ」を否定するもの。
劇中、現実社会に飛び出した「バービー」が見たものは、なんと生みの親会社「マテル社」すら男社会だったというもの。
まさかの展開に、これこそグレタ・ガーウィグ監督作品の、女性に焦点を当てるという一貫性を再認識できるおすすめ作品です。
こちらは、2019年のヒット作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』の制作インタビュー時のもの。
このやわらげな表情は、映画監督のイメージとは少し違ってどちらかといえば女優そのもの。
それもそのはず、彼女は映画賞をとった経験のある元本格女優です。
彼女が監督として注目されたのは、2018年公開のシアーシャ・ローナン主演『レディ・バード』でした。
ほぼはじめての監督作品だったのですが、なんとアカデミー賞監督賞と脚本賞にノミネートされ、世間をアッと言わせました。
そして、その2年後が、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』となりました。
同じく主演にシアーシャ・ローナンを迎え、メリル・ストリープやローラ・ダーンといった名優と、当時新進のフローレンス・ピュー、ティモシー・シャラメをといったそうそうたるキャスト陣に。。
なんと、アカデミー賞では作品賞はじめ6部門にノミネートされ、コロナ渦での公開でしたが注目を集めた映画となりました。
『レディ・バード』など作品一覧
●グレタ・ガーウィグ監督(Greta Gerwig)
誕生日:1983年8月4日生まれ
出身:アメリカ・カリフォルニア州
▶おすすめの監督作品
※監督出身のサクラメント時代を被らせているのでしょうか…。
参考記事:卒業・入学式、旅立ちの日のおすすめ映画『レディ・バード』
(ガーウィグ監督の世界観を表した本も出版されています。)
3.Patty Jenkins
パティ・ジェンキンス監督、ガル・ガドットと再タッグ!
グレタ・ガーウィグ監督の作品が、女性の生き方に焦点を当て男性は劇中で脇役になっているのと同じく、こちらパティ・ジェンキンス監督作品も同様です。
しかし、表現や題材は全く異なり、ジェンキンス監督の代表作『ワンダーウーマン』を見れば一目瞭然。
「スーパーマン」や「バットマン」など男性中心だったアメコミ界のヒーローに代わり、「女性ヒーロー」にはじめてスポットを当てたのがジェンキンス監督です。
前作のメガヒットに続き、続編の『ワンダーウーマン 1984』も圧巻の大作でした。
どちらも最近の作品ですが、2003年には『モンスター』というスゴイ映画も作っていました。
主演のシャーリーズ・セロンの体当たり演技の方が話題(アカデミー賞主演女優賞獲得)になりましたが、タイトル通り、モンスター化した実在女性を取り上げた監督の、注目デビュー作品となりました。
『ワンダー・ウーマン』など作品一覧
●パティ・ジェンキンス監督(Patty Jenkins)
誕生日:1971年7月24日
出身:アメリカ・カリフォルニア州
▶おすすめの監督作品ワンダーウーマン 1984(予告編)
※前作からさらにバージョンアップ!スティーブとも再会し大活躍!
5.Kathryn Bigelow
キャスリン・ビグロー、女性初めてのアカデミー監督賞!
さあ、女性映画監督で最も有名な人といえばこの人、キャスリン・ビグロー監督。
イラク戦争の爆弾処理班を描いた、2008年の『ハートロッカー』で、女性初めてのアカデミー賞監督賞を受賞しました。
女性監督というバイアスで映画を観ることはよくありませんが、とにかくそのハードさには圧倒されます。
受賞後のスピーチで、「この作品を世界各国で命懸けで従軍しているすべての男女に捧げたい」と述べています。
『ハート・ロッカー』など作品一覧
●キャスリン・ビグロー監督(Kathryn Bigelow)
誕生日:1951年11月27日
身長:182㎝
出身:アメリカ・カリフォルニア州
▶おすすめの監督作品
※爆弾処理の緊張感はハンパではありません!
※実話モデルのリアル感が半端ではない緊迫の連続です。
その後、ウサーマ・ビン・ラーディン殺害の実話をもとにした『ゼロ・ダーク・サーティ』 。
今も後を絶たない黒人差別事件ですが、これは白人警官による黒人射殺事件を扱った『デトロイト』。
(参考記事:米黒人暴行死!実態を暴いた映画『デトロイト』、今も続く人種差別の構図!)
社会派監督といえばそれまでですが、いずれも実際の一大事件をベースに制作されており、そのリアル作品には手に汗を握ります。
まだまだ今後の活躍に期待したい監督です。
7.Sofia Coppola
ソフィア・コッポラ監督、『プリシラ』をプレミア上映!
2023年9月に開催された第80回ヴェネチア国際映画祭で、ソフィア・コッポラ監督の『プリシラ(Priscilla:原題)』がプレミア上映。
「プリシラ」は知る人ぞ知る、エルヴィス・プレスリーの元妻で映画では彼女の波乱の半生が描かれています。
エルヴィス・プレスリーは、『エルヴィス』で映画化されたのは記憶に新しいところです。
しかし、ソフィア・コッポラ監督が描くのは、エルヴィスの人生で最も重要な女性に焦点を当てたところがポイント。
それが、エルビスの新たな素顔を観客に届けようというわけです。
ソフィア・コッポラ監督と一緒に映るのは、プリシラ・プレスリー本人です。
参考記事:A24×ソフィア・コッポラ監督『Priscilla』、妻の目に映るエルヴィス・プレスリーの素顔!
さて、「ソフィア・コッポラ」という名前を聞いて、特徴あるファミリーネームで思い出す人もいるのではないでしょうか。
そう、『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』の「フランシス・フォード・コッポラ」監督の娘になります。
父親自身が、文字通り「ゴッドファーザー」のような存在で家族にはそうそうたるメンバーが名を連ねる一家です。
そんなスーパー・サラブレッドの家系を持つソフィア・コッポラ監督は、作品にも常にセレブ感が満載。
映画にも独特の世界観を表現する女性監督です。
『ビガイルド』『マリー・アントワネット』など作品一覧
代表的な映画は、「ガーリー・カルチャー」や「ガーリー・ファッション」の元祖と言われるだけあって、登場する女性のファッション信奉者が多く存在。
代表的な映画に、『マリー・アントワネット』(アカデミー賞衣装デザイン賞)、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』(第70回カンヌ国際映画祭・監督賞)などがあります。
冒頭の画像は、「ビガイルド」で起用したエル・ファニング、ニコール・キッドマンと打ち合わせをする監督。
こんなキレイな衣装をまとった女ばかりの住む寄宿舎が舞台の映画で、そこでとんでもない殺人事件が起こります。
最新作『オン・ザ・ロック』(スター・チャンネル)では、結婚し2児の母となったソフィア・コッポラ監督同様、新たなステージに立った女性が描かれています。
9.Karyn K. Kusama
カリン・クサマ監督、話題の『ストレイ・ドッグ』
最後の紹介するのはこちら。
このツーショットは、『ストレイ・ドッグ』(原題:「Destroyer」)のPRシーンで、左がカリン・クサマ監督。
東洋系の雰囲気と名前から察する通り、彼女は日系アメリカ人です。
映画タイトルは、クサマ監督の尊敬する日本の黒沢監督の「野良犬」がルーツとのこと。
そして、左にいるのは主演のニコール・キッドマン。
「こんなニコール・キッドマンは見たことがない」というキャッチがあるぐらい、すごい汚れ役とアクションで登場します。
クサマ監督をして、彼女を起用できたことを「監督の特権」と語るぐらい熱い思い入れがあったとのこと。
『ストレイ・ドッグ』など作品一覧
●カリン・クサマ監督(Karyn K. Kusama)
誕生日:1968年3月21日生まれ
出身:アメリカ・ニューヨーク州
▶おすすめの監督作品
※少し前のSF作品ですが、シャーリーズ・セロンのキレッキレのアクションが!
また、ニコール・キッドマンこそ、映画に携わる女性が少ないことを公言する女優のひとり。
「女性の映画人を増やすためにも女性監督と仕事をし続ける」として、今回、彼女の方からクサマ監督に出演を依頼したと言われています。
メイキング映像で語られるニコール・キッドマンと、カリン・クサマ監督の言葉に、今後の映画界への強い結託を感じずにはいられません。
参考記事:「大役担ったハリウッドの日系女性監督 現地の多様性は?」(朝日新聞デジタル)
監督のその他のおすすめは、シャーリーズ・セロン主演の『イーオン・フラックス』です。
まとめ~「女性監督の」という形容詞がなくなる日~
今記事では、「台頭する女性映画監督」というタイトルを付けました。
しかし、そもそもこの「女性監督」という表現を使うことがまだまだ映画界の男女格差が過渡期であることを言っているようなものです。
「あの作品は、〇〇監督」と形容詞が付かずに語られる日が待ち望まれます。
と言いながら使ってしまいますが、今回紹介した女性監督は一部でしかありません。
今後も引き続き紹介していきたいと思います。
《まとめ:台頭する女性監督と代表作品
- グレタ・ガーウィグ監督
- 『バービー』『レディ・バード』など
- パティ・ジェンキンス監督
- 『ワンダー・ウーマン』『モンスター』など
- キャスリン・ビグロー監督
- 『ハート・ロッカー』『デトロイト』など
- ソフィア・コッポラ監督
- 『プリシラ』『ビガイルド』など
- カリン・クサマ監督
- 『ストレイ・ドッグ』など
▶参考:サイト内女性監督の記事
●マリア・シュラーダー監督『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
●シャナ・フェステ監督『ラン・スイートハート・ラン』
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