ヨルゴス・ランティモス監督『ブゴニア』をレビュー、常連キャストで監督が問いかけた“中心”の幻想

エマ・ストーン
メインキャスト「エマ・ストーン」、話題の丸坊主

今回は韓国映画Save the Green Planet!を原作に、ヨルゴス・ランティモス監督が再構築した『ブゴニア』を紹介します!

メインキャストとして、CEO・ミシェル役を演じるのは、『女王陛下のお気に入り』『哀れなるものたち』など、ランティモス作品常連のエマ・ストーン

養蜂家テディを怪演するのは、同監督の『憐みの3章』出演のジェシー・プレモンス、相棒ドンにはなんと本作が演技初挑戦のエイダン・デルビスが扮します。

本レビューでは物語核心のネタバレは避けていますが、鑑賞前はできるだけ情報を遮断するのがおすすめです!

(トップ画像:引用https://www.facebook.com/deadline)

ブゴニア
©にゅっき

羽音から始まる物語、印象的な蜂のモチーフ

蜂の羽音が、どこか不穏に響く―物語は、静かな不穏さのなかで始まります。

舞台は現代、主人公は養蜂家のテディです。

彼は、巨大製薬会社のCEO・ミシェルが世界の混乱を生み出していると信じています。社会の歪みには必ず“中心”がある。

エマ・ストーン
CEO・ミシェル(エマ・ストーン)https://www.nylon.jp/

そこを断てば世界は変わる。そう確信した彼は、仲間のドンとともにミシェルの誘拐を実行します。

シンプルな設定です。

ですが映画は、この行動を単なる陰謀論信者の暴走として処理しません。

テディの確信の奥にある孤独や焦燥を、ブラックユーモアを利かせつつ、丁寧に映し出していきます。

また本作で印象的なのが、蜂のモチーフです。

ジェシー・プレモンス
https://www.gqjapan.jp/article/

女王蜂がいて、働き蜂が支える。その構図は、企業社会のヒエラルキーとよく似ています。

テディが“中心”という発想にとらわれるのも、彼が養蜂家であることと無関係ではないでしょう。

しかし蜂の群れは、女王一匹だけで成り立っているわけではありません。

個体が入れ替わっても、巣は機能し続けます。中心があるように見えて、実は分散的に動いているのです。

このズレが、映画全体に静かな緊張を生みます。

●エマ・ストーン(Emma Stone)

誕生日:1988年11月6日生まれ

星座:さそり座

身長:168㎝

出身: アメリカ・アリゾナ州

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“群れの外”に立つ管理人、テディの複雑さ

ジェシー・プレモンス
左:ドン(エイダン・デルビス)右:テディ(ジェシー・プレモンス)https://www.gqjapan.jp/article/

テディは社会の中心から遠い場所にいる人物です。

カリスマCEOミシェル率いる製薬会社の倉庫で働く下っ端であり、愛する母親とも引き離され、いとこのドンとの二人ぼっちの暮らし。

どこか共同体の外にいるようにも見えます。

けれど彼は同時に、養蜂家です。巣箱を管理し、蜂たちの秩序を保つ側にいます。

ここに、テディというキャラクターの複雑さがあると思います。

彼は“群れの外”に立ちながら、小さな群れを統率する存在でもあるのです。

社会から排除された側でありながら、ヒエラルキーの構造を内面化している。だからこそ彼は、「中心」という考え方そのものを疑えません。

ブゴニア
https://www.nylon.jp/

ただ彼が否定したいのは構造そのものではなく、自分がそこに含まれていないという事実なのかもしれません。

「自分がこんな生活を送るはめになったのは何かがおかしいからだ」

自分の生活に何か意味があるはずだ、と手繰り寄せてできていったものが陰謀論なのかもしれません。

●ジェシー・プレモンス(Jesse Plemons)

誕生日:1988年4月2日生まれ

星座:おひつじ座

身長:178cm

出身:アメリカ・テキサス州

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憐れみの3章(作品情報)

世界を動かすのは誰?

ブゴニア
https://www.facebook.com/deadline

対して製薬会社CEOのミシェルは、テディからすると確かに女王蜂のような存在感を放っています。

しかし映画は、彼女を絶対的な支配者としては描きません。

彼女もまた巨大な構造の一部であり、その構造は一人の意志だけでは止まりません。

ミシェルが「多様性」についてのメッセージビデオを収録するシーンなどはその典型だと思います。

彼女は多様性の価値観を強く打ち出すことで社会の潮流との一致を体現するよう要請されているのです。

テディが信じているほど、世界は単純ではないのです。

女王はいる。けれども、群れは女王だけでは動かない。

その事実が、静かにテディの信念を揺らしていきます。

陰謀論を信じてしまう、ときに危うくときに滑稽…

ジェシー・プレモンス
https://people.com/

『ブゴニア』は、革命が成功する物語ではありません。

むしろ、「中心を倒せば世界は変わる」という物語を信じてしまう人の姿を描いているように思えます。

テディの姿は、ときに危うく、ときに滑稽です。

しかしそこには、彼の救いようのない現実の世界に秩序や意味を見いだしたいという切実な願いも感じられます。

作中でテディが自転車で爆走するシーンでは、毎度オーケストラ的な大げさな音楽が流れるのが印象的です。

が、これはコミカルな場面であると同時に、テディ視点の世界を絶妙に表現しています。

彼の世界では確かにあんな風に音楽が流れるほど、危うくて滑稽に見える行動も大きな意味を持つのです。

ヨルゴス・ランティモス監督は、そんな「陰謀論を信じてしまう人」がなぜ、どうやって陰謀論を拠り所にして生きているのかというのを丁寧に描いているように思います。

ブゴニア
https://x.com/bugonia_jp/

まとめ:他の陰謀論系作品と比較して!

今回は雇われ監督だったということもあり、ヨルゴス・ランティモス監督らしさは若干弱めだったかもしれませんが、『ブゴニア』大変楽しく鑑賞しました。

また個人的にドン役のエイダン・デルビスが演技初挑戦とは思えない素晴らしい演技で、ほかの俳優陣に全く引けを取っていなかったのがうれしい驚きでした。

同じく陰謀論系映画として、『ワンバトルアフターアナザー』や『エディントンへようこそ』と比べてみるのも面白いかもしれません。

気になりましたらぜひ鑑賞してみてください。

関連記事:アリ・アスター監督最新作『エディントンへようこそ』を考察、面白さは遅れてやってくる?!

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