映画『帰らない日曜日』は、孤児院で育ったメイドと名家の跡取りとの「禁断の恋」を描いたラブストーリーです。
この作品には、秘密の恋愛を盛り上げる様々な心理学的要素が含まれています。
そこで今回は、この映画を通して、恋愛に使える心理学を紹介したいと思います。
映画『帰らない日曜日』(22)
作品情報
「最良の想像的文学作品」に贈られるホーソーンデン賞を受賞したグレアム・スウィフトの原作「マザリング・サンデー」を、女性監督のエヴァ・ユッソンが映像化。
主人公のジェーンには、オーストラリア出身の若手女優オデッサ・ヤング。
彼女が恋するポールを、イギリスの若手俳優ジョシュ・オコナーが演じています。
さらに、コリン・ファースとオリヴィア・コールマンというアカデミー賞受賞俳優が脇を固めています。
原作:マザリング・サンデー(著)グレアム・スウィフト (新潮クレスト・ブックス)
あらすじ
舞台は第一次大戦後のイギリス。
晴れ渡った三月の、とある日曜日の出来事でした。
この日は「母の日」と呼ばれ、イギリス中のメイドが年に一度の里帰りを許されていたのですが、ニヴン家で働くジェーン(オデッサ・ヤング)に帰る場所はありません。
彼女は親に捨てられ孤児院で育った、天涯孤独な身の上なのです。
どう過ごそうか途方に暮れていた彼女のもとに、一本の電話がかかってきます。
それは、シェリンガム家の跡継ぎであるポール(ジョシュ・オコナー)からの誘いでした。
ジェーンは幼馴染との結婚を控えるポールと、秘密の逢瀬を重ねていたのです。
ポールにとって、この日は大事な結婚前祝いの昼食会でしたが、それに遅れてまでジェーンと会うことを選んだのでした。
シェリンガム家の邸の寝室で、身分違いの愛する彼と抱き合うジェーン。
ポールは行為を終えると、昼食会へと向かい、一方、一人残ったジェーンは、広大な邸を裸で歩き回り、ケーキを食べてくつろぐのです。
彼女がニヴン家に戻ると、思わぬ知らせが待っていました。
そして時は経ち、作家となったジェーン。
彼女は誰にも話すことのなかったこの一日を、小説に書き綴るのでした。
映画『帰らない日曜日』、恋愛心理学的に解説
さて、ここからは、映画『帰らない日曜日』で描かれている内容をもとに恋愛心理学を解説。
実際の恋愛で応用する方法も紹介したいと思います。
1.恋を盛り上げる「ロミオとジュリエット効果」
ジェーンとポールの恋愛には、乗り越えるのが困難な障害があります。
ジェーンは孤児院で育ったメイドである一方、ポールは名家の跡取りであり、歴然たる身分の差がありました。
さらにポールは結婚相手が決まっているため、ジェーンとの交際は認められないのです。
このように、恋愛に障害がある場合「ロミオとジュリエット効果」が働きます。
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』から名付けられたこの効果は、障害があった方がやる気が起きたり、目標達成への意欲が高まる心理現象です。
例えば、交際に身内が反対している、遠距離恋愛や不倫など、その障害が高ければ高いほど恋も盛り上がるのです。
これを応用するには、会える日を限定するのが効果的です。
それによって、あなたの価値を高められます。
あなたとなかなか会えないことで、「ロミオとジュリエット効果」が働きます。
その結果、相手はあなたのことを貴重な存在だと思うようになるのです。
会えない日もあなたのことを想うようになり、あなたと過ごす時間をより大切にするでしょう。
ロミオとジュリエット(新潮文庫)ウィリアム・シェイクスピア (著)
2.秘密を共有する「カリギュラ効果」
ジェーンとポールの交際は、二人の他には誰も知らない秘密です。
そのため、ジェーンはポールからの誘いの電話を別の人と偽って受け答えします。
さらにジェーンはポールと会うために普段は邸の裏口から入って、寝室で愛し合っていました。
もしもバレたら別れさせられる、誰にも知られてはいけない禁断の恋愛なのです。
禁止や制限を受けるほど、それに興味をそそられてしまう心理現象を「カリギュラ効果」といいます。
この「カリギュラ」は、1980年に公開された映画『カリギュラ』が、その過激な内容から公開禁止されたにも関わらず、世間の注目を集めたことに由来します。
これを実際の恋愛で使うには、悩みを相談するのが効果的です。
あなたの悩みを「誰にも言わないで」という一言をつけて、相手に打ち明けるのです。
それによって相手は「言いたいけど言えない」という「カリギュラ効果」が高まり、同時にあなたへの興味も高まります。
さらに、二人だけで秘密を共有しているという事実によって信頼度も増すため、親密になれます。
3.仲を深める「自己開示の返報性」
この映画で最も印象的なのは、ジェーンが裸で邸を歩き回る場面です。
これは、彼女が身も心もさらけ出しているということを表しています。
ジェーンは天涯孤独な身の上で、失うものは何もありません。
さらにポールへの愛を、彼女は自ら打ち明けます。
つまり、ジェーンは生い立ちや自分の気持ちなどを全てさらけ出しているのです。
そんな彼女だったからこそ、跡取りとして様々なものを背負っているポールは「君には何でも話せる」と劇中で語るほど、好意をもったのでしょう。
ジェーンのように、プライベートな情報を自ら打ち明けることを「自己開示」といいます。
恋愛の場面においても、自分の想いや意見を正直に話すことはとても有効で、なぜなら、それをすることによって相手も同様に全てを打ち明けるようになるからです。
相手から好意を受けると、自分も返さなければならないと思う心理を「返報性の原理」といいます。
デートの際に、趣味などのプライベートな情報や、相手への好意は自分の方から打ち明けるようにしましょう。
相手も同じように、あなたに心を開きます。
「自己開示の返報性」を使ってお互いの心の内をさらけ出すことで、二人の仲はさらに深まるのではないでしょうか。
まとめ
この映画で印象的なのは、主人公のジェーンが身分の違うポールに対して、媚びたりせずにいつでも自然体で接していることです。
恋愛において、相手を信頼させることが一番大切です。
自分を偽っている相手を、人は信用しようと思いません。
その点で、ジェーンの自然さはポールを安心させるのに効果的だったといえます。
自分を良く見せようとするのではなく、ありのままの姿で恋愛する方が良いと、この映画に教えられた気がします。
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こんにちは!ライターの「げん」と申します。
映像が好きで、テレビドラマのプロットなどを書いていました。また、恋愛小説をファッション誌で連載したこともあります。これらの経験をもとに、映画を通して恋愛を学ぶ記事を書いています。
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