アツく世界を魅了し続けている「インド映画」。
『RRR』のロングランヒットを受け、日本でも※インド映画旋風が巻き起こっています。
そんな中で今回ご紹介するのは、映画好きなら1度は観てほしい良作『エンドロールのつづき』です。
インド版『ニュー・シネマ・パラダイス』とも言われている本作は、インド映画には珍しく歌って踊らない静謐なドラマ作品。
パン・ナリン監督自身の実話でもある『エンドロールのつづき』の魅力を解説していきます!
(冒頭画像:https://twitter.com/shochiku_youga/)
あらすじ:少年が恋したのは「映画」だった!
インドの田舎町でチャイ売りをしている少年・サマイ(バビン・ラバリ)。
ある日父に連れられて映画を観た彼は、光が創り出す映画の世界にすっかり心奪われてしまいます。
しかし厳格なバラモンである父は映画を「低俗なもの」として、以降映画を観ることを禁じてしまうのです。
映画に恋焦がれたサマイは、ひょんなことから映写技師のファザル(バヴェーシュ・シュリマリ)と取引をします。
それは、「世界一美味しいチャパティを作るサマイの母の弁当」と引き換えに「映写室から映画を観れる」というもので……。
光の芸術にのめり込んでいくサマイは、やがて自分でも映画を作りたいと望むようになります。
■「インド映画」って何?【管理人・選】
バーフバリやRRRで日本でも一躍注目を集めた インド映画超入門!
※ボリウッドの華麗なるダンスと歌、長尺のドラマ、時折挿入される滑稽なコメディ、そして何よりその色彩の鮮やかさ。これらが、私たちのなかでインド映画というジャンルを象徴するイメージかもしれません。
しかしながら、インド映画とはこれだけではありません。その背後には、インドという国の豊かな歴史、文化、社会が息づいているのです。【引用:Amazon】
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魅力①:映画の根源的な喜び、楽しみを描き出す
パン・ナリン監督が自身の幼少期と主人公・サマイを重ね合わせて創り出した『エンドロールのつづき』。
本作で描かれているのは、単なる「映画が好き!」という気持ちだけでなく、映画の根源的な魅力です。
サマイが魅了されるのは、スクリーンへと伸びる一筋の「光」。
映画に魅せられて劇場へ潜り込んだサマイは、その「光」に手を伸ばし、手のひらを返しながら美しさを堪能します。
映画の魂は「光」に宿り、それがスクリーンに映る「芸術」に昇華されていくのだと体感させられる名場面です。
このように本作では、「映画とは何か?」と考えさせるような場面がいくつも登場します。
仲間との手作り映写機、心踊る上映会
本作の印象的な場面の1つが、サマイと仲間の少年たちが行うオバケ村での上映会です。
ファザルとの交流をとおして「自分でも映画を上映できる!」と気付いたサマイ。
彼は仲間の少年たちと協力して映画のフィルムを盗み出し、手作り映写機での上映会に挑戦します。
仲間と共犯関係になり、1つの計画をとおして少年たちが成長する様子は、名作『スタンド・バイ・ミー』を思い起こさる展開です。
(※本作の中では鉄道のレールが印象的に登場しており、『スタンド・バイ・ミー』へのオマージュが込められているのかもしれません。)
サマイは映写機を作る過程で「フィルム」の仕組みや、動く映像がスクリーンに映し出される原理を学んでいくことに。
オバケ村での上映会は、インドの伝統衣装・サリーをスクリーン代わりとして、映画に合わせて少年たちが音を出すという方法で行われます。
パン・ナリン監督の実体験に基づいたこのシーンは、映画好きなら誰しも心躍ってしまうはず。
少年たちの創意工夫に満ちた上映会はアナログですが、集まった村人たちの楽しそうな笑顔が印象的です。
映画とは「喜び」そのものだということを思い出させれくれます。
魅力②:物語から見えてくる、インドの光と闇
『エンドロールのつづき』の舞台となるのは、パン・ナリン監督の出身地・グジャラート州。
グジャラート語を使った映画が日本で公開されたのは本作が初めてです。
サマイの暮らしからは、どこか懐かしさを感じるインドの魅力が伝わってくる一方で、貧しいインドの村の現実も突きつけられます。
独特のファッションやフードに魅了される
パン・ナリン監督がグジャラートの独特な風情を表現するために特にこだわったのは、「ファッション」や「ヘアメイク」です。
女性たちが見にまとう色彩豊かなサリーやアクセサリーの数々に、目が釘づけになってしまいます。
さらに彼女たちの自然体な魅力を引き出すため、ファンデーションは落としてメイクアップしたそう。
本作のラストシーンでは印象的にカラフルなバングルが登場するのですが、映画好きなら思わずほくそ笑んでしまう演出があるので最後まで楽しんでくださいね。
他にも本作で目にとまるのは、サマイの母親が作る※スパイスたっぷりの手料理でしょう。
彼女が息子のために弁当を作る場面は、毎回俯瞰で映し出されます。
色とりどりの野菜にスパイスを詰め込む様子に、ついついお腹の音が鳴りそうに。
母の手で作り出される料理は観客の心をも温かくしてくれます。
▶参考:インド家庭料理(管理人:選)
※インド版お惣菜ともえいるサブジや、豆料理、サラダや飲み物、肉や魚料理などもりだくさんの内容です。しかも、たったの5つのスパイスで作れるのがウリ! 代表的な5つのスパイス(クミン・ターメリック・コリアンダー・チリパウダー・ガラムマサラ)を揃えるだけで作れる、教室でも人気の料理を厳選して紹介しています。【引用:Amazon】
当たり前に映画を観ることができる尊さ
サマイは毎日働かなければならず、映画を好き放題観ることはできません。
しかもたった6歳の少年であるにも関わらず、です。
さらに本作では、サマイが通う学校の先生から印象的なセリフが飛び出します。
それは、「現代のインドには2つの階級しかない」というもの。
先生は「英語ができる層」と「英語ができない層」に分かれていると説くのです。
パン・ナリン監督自身も、「英語ができない人は高度な教育を受けることも、ビジネス・チャンスを掴むこともできない」と語っていました。
現代のインドに根強く残る貧困や、階級による差別についても、本作のテーマになっているのです。
サマイは自らの手で映画を作るために一歩踏み出し、観客もサマイのそしてインドの未来に光と希望を感じることができます。
一方で、普段私たちが当たり前のように映画を観ることができるのがいかに尊いことかを痛感させられるのです。
■参考:動画配信・レンタル・本【管理人・選】
参考記事:インド映画おすすめ3選、ボリウッドは歌と踊りと衣装の魅惑!Halleがハマった深みへ案内!
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まとめ
『エンドロールのつづき』を観ればきっと、今すぐにでも映画館に足を運びたくなるはず。
映画を大きなスクリーンで観られるということの喜びや素晴らしさを再認識することができます。
次から次へと注目作を生み出しているインド映画界から、今後も目が離せません!
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ウェス・アンダーソン作品の世界観が大好き!ライターの「もな」です。
映画にどハマりしたのは、小学生の頃に『ロード・オブ・ザ・リング』を観てから。
それからというもの、映画は私の人生にとって欠かせないもので、大学では映画学を専攻しました。
私の書く記事が、誰かと素敵な映画との出会いの場になったら嬉しいです。
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