ディストピアは、ユートピア(理想郷)の対義語として使われます。
和訳としては、「暗黒郷」「絶望郷」といった表現が見られますが、そのままカタカナ使いが一般的のようですね。
今回、このテーマを取り上げた理由は、人類が衰退していく末路は決して望まないが「今、生きている人たちへの警鐘」として見るべきものが多くあるように思うからです。
逆に言うと、人類はどこまでも「ユートピア」に果てしない希望を持っているはずだから。
さて、この『死の谷間』、今、『バービー』など最も売れっ子のマーゴット・ロビーが主役にもかかわらずあまり話題になっていないのがちょっと残念。
マーゴット・ロビーといえば、『スーサイド・スクワット』のハデハデが印象に残っていますが、きれいなスッピンでの登場も新鮮。
最後まで余韻の残る、一見の価値のある映画を考察してみました。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/ZforZachariah/)
考察:「アダムのA」…アルファベット最後の「Z」は誰?
この映画のどこがディストピアかを一言でいうと、核戦争で汚染された地球です。
地形から偶然そうなったのか、主人公アン(マーゴット・ロビー)の住む谷間は幸運にも核汚染から免れたというところから物語は始まります。
原題は、ロバート・C・オブライエンの※小説「死の影の谷間(Z for Zachariah)」がほぼそのままタイトルに。
内容が宗教的で、また見ようによっては哲学的だと言われる理由はここにあります。
アンが子どもの頃に読んだ絵本で「The ABC Bible Book」というのがありました。
アルファベッドを覚えるために、「AはアダムのA、BはベンジャミンのB…」と、聖書に登場する人物の名前を使っているのです。
最後の「Z」が、ザカリアのZ(Z for Zachariah)というわけです。
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死の影の谷間 (海外ミステリーBOX) :ロバート・C. オブライエン (著)
※放射能汚染をまぬかれた谷間で、たったひとり生き残ったアン。そこにやってきた見知らぬ男の正体は?―少女の目を通して、核戦争後の恐怖を描く傑作ミステリー。1976年エドガー・アラン・ポー賞受賞作。【引用:Amazon】
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考察:「死の谷間」は、創世記の再来か?
人類最初の人間Aが「アダム」、すると人類最後の人間Zは、本作に登場するこの3人というわけでしょうか。
あるいは、物語の最後に残る唯一の1人のこと?
さて、3人とは、核汚染後に「死の谷間」に迷い込み生き伸びた?アン、ルーミス(キウェテル・イジョフォー)、ケイレヴ(クリス・パイン)。
最初はアンが、自分しか生存していないと思っていたところへ、ふいっと現れたのがエンジニアだという男ルーミス。
「死の谷間」で、しばらく二人で暮らす男女。
それは、まるで※創世記の再来を意味し、二人はエデンの園に暮らすアダムとイヴの例えだといわれます。
■「アダムとイヴ」のたとえとは?
※罪を犯して神から追放を受けた人類とその人類に対する神の救いが聖書全体をつらぬく問題であるとすれば、旧約巻頭のこの書こそ、その問題への出発点である。天地の創造、人類のはじまり、楽園追放、ノアの洪水、その子孫の増加、そしてイスラエル民族の祖先たちの罪と罰の記録。次々に壮大な神と人類の物語が展開されてゆく…。【引用:Amazon】
アダムとイヴに近づく、もう一人の男は蛇?
次に現れる男ケイレブは、地下に潜って核汚染を免れていた元鉱山労働者。
まるでイヴをそそのかすために現れた蛇にたとえられ、アンとルーミスの2人きりの関係に変化が表れ始めます。
聖書から物語を引っ張ってきたというのですが、それがなければストーリーは究極の三角関係。
しかし、核戦争後のディストピアを、新たな天地創造の始まりと捉えるとどうでしょう。
そして、登場人物が3人しかいないこの映画、向かうところが次第に怪しくなります。
あらすじ:協働する二人が、ある夜、女と男を意識
アンとルーミスがはじめて出会った時こそ、お互いに警戒はしたものの、やっと出会えた生存者同士として二人はアンの家で同居することに。
アンには、父から教わった農耕や狩猟の技がありました。
また、ルーミスは男の力に加え、エンジニアとして機械類を扱える知識を持っています。
二人で役割を分担し、少しづつ生活レベルを上げていくことに。
そんな二人は、ある夜、果実から作ったワイン酒で収穫をお祝いし合います。
すっかり酔った二人、そこになんともいえない空気が漂います。
これまで、生き延びることしか頭になかったのに、お互いが男と女を意識し出したのです。
●マーゴット・ロビー(Margot Robbie)
誕生日:1990年7月2日生まれ
星座:かに座
身長:168㎝
出身:オーストラリア
▶おすすめの代表作品
※実在する企業トップのセクハラに、まさかの大型訴訟!
スーサイド・スクワッド(予告編:Amazon) (サントラ:楽天)
参考記事:マーゴット・ロビーおすすめ映画3選、ハーレイ・クインから死の谷間まで
参考記事:『ザ・スーサイド・スクワッド2』前作越え極悪党が集結!ジェームズ・ガン新監督で。
収穫のワインに酔った女の誘いに…
酔ったアンは、ルーミスを誘います。
少なくとも、お互いに好意をもって暮らしている二人、遮るものはなにもありません。
時間も果てしなくあります。
しかし、誘われたルーミスはなんとアンを拒みます。
そして、ルーミスは「今、性急にここで男女の関係になることはない、お互いをもっと時間をかけて理解し合ってからでも遅くない。」となだめるのでした。
このシーンは、映画の後半、そしてクライマックスに繫がる見どころです。
●キウェテル・イジョフォー(Chiwetel Ejiofor)
誕生日:1977年7月10日生まれ
星座:かに座
身長:178㎝
出身:イギリス・イングランド
▶おすすめの代表作品
※虐げられた黒人奴隷の12年間をリアルに表現。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。
※画像にあるように、前述のマーゴット・ロビーと共演。核戦争後の荒廃した世界は、現代版「アダムとイブ」?
世紀の2枚目、クリス・パインにザワツク
アンの誘いをルーミスが断ったあとも、二人が協力し合って過ごす日々になんら変化はありません。
映画を観ている方も、二人きりの時間がずっと続くのだから、お互い納得するならそんな選択もあったもしれない、などと思っていると…。
なんと、二人の間に男がもう一人出現し、「エデンの園」は大きく変化していきます。
観客にも落ち着かない妙なさざなみが立ってきます。
ちなみに、ケイレブ演じるクリス・パインは、「世紀の2枚目」と言われたイケメン俳優。
素朴なルーミス演じるキウェテル・イジョフォーとのイメージ格差が際立ち、キャスティングの妙に唸ってしまいます。
●クリス・パイン(Chris Pine)
誕生日:1980年8月26日生まれ
星座:おとめ座
身長:184㎝
出身:アメリカ・ロサンゼルス
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「3人」になって、一気に変わる世界観
ケイレブを見つけたアンは、地下に長く潜んでいたケイレブの事情を聞き、家に招こうとします。
しかし、そこには見るからに動揺しているルーミスがいました。
ルーミスはアンに頼まれ、渋々、ケイレブを家に入れることを承知するものの、以降、3人で暮らす空気感は一気に変わることに。
アンは普通にケイレブと接しているように見えます。
しかし、ルーミスには、アンがなにかにつけケイレブの肩を持っているように思えてなりません。
わけもなくイラ立つルーミス。
挙句のはてにルーミスは聞かれもしないのに、アンに「ケイレブが好きなら一緒になってもいいよ。」と言ってしまったのです。
結末は突き放され感か、示唆的か?
(最後のネタバレなし)
3人での共同生活ですが、どこかに危険をはらんだものを感じます。
たとえば、狩猟に出かけたケイレブとルーミスですが、銃を構えたケイレブがルーミスに挑戦的になります。
また、近くの滝つぼの前に立つルーミスのすぐ後ろに、ケイレブらしき男の影が。
一方、アンには以前、ルーミスを誘惑したような気配はなく、どちらかといえばケイレブに送る視線の方が気になります。
そして、アンはケイレブに予想もしない行動に出るのでした。
映画の結末は、ちょっと突き放されたような感じもありますが、観ようによってはいかにも示唆的です。
始まりの「A」はわかったが、最後の「Z」が誰なのかを謎かけしているようにも見える不思議な映画です。
まとめ~3人の素晴らしい演技力~
予告編にもチラッと見えますが、アンがテーブルの上にあったガラスコップを落とすときの表情をしっかり見て下さい。
マーゴット・ロビーが、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』で見せる顔とは正反対の顔です。
また、キウェテル・イジョフォー(『それでも夜は明ける』など)も、クリス・パイン(『スター・トレック』も、主役映画がいくつもある名優です。
ぜひ、彼らの絶妙の表情や仕草から、今作の醍醐味を味わってみて下さい。
こんにちわ!コメント失礼致します。
マーゴット・ロビーのファンでしたが、この『死の谷間』はお恥ずかしながらまだ未視聴で、その存在をたった今知りました…!
あのマーゴットがすっぴんで演じているということで惹かれましたが、それ以上にとても深そうな興味深い作品で面白そうですね。
宗教的で哲学的な意味を持ち、さらにディストピアな世界が舞台とのことで好きな要素がたっぷり詰まっているので時間がある時に観てみようかなと思います!
最初見たとき、エンディングにちょっと、ん?、となりましたがこの記事を書きつついろいろ調べたらテーマの深さに驚きました。
(核汚染で、そんなにうまいこと地形から汚染を免れるなんてことあるの?とあまり思わない方がいいかも。テーマを語るためのシチュエーションを素直に受け入れた方がわかりやすいと思います。)ちなみに、地味なマーゴット・ロビー(笑)もいいですよ!