今回は2026年公開映画の中でも話題作である、クリストファー・ノーラン監督『オデュッセイア』をご紹介します。
壮大な神話映画を観たはずなのに、エンドロールを眺めながらわたしが感じていたのは「人生って、思い通りにいかないものだよな…」というごく身近なことでした。
『オデュッセイア』は古代ギリシャの叙事詩を壮大なスケールで描きながら、意外にも私たちの日常にも通じる「予測できない人生」について考えてくれる作品…と私は捉えました…!
(トップ画像:https://www.facebook.com/OdysseyMovie/)
映画『オデュッセイア』:あらすじ

物語の主人公はトロイア戦争を終えたオデュッセウス(マット・デイモン)。
戦争には勝利を収めたものの、故郷イタカへ帰るまでには長く過酷な旅が待ち受けていた…
海を渡る途中でサイクロプスのポリュペモス(一つ目の巨人)に遭遇したり、「ちいかわ」でもすっかりお馴染みのセイレーンなど、さまざまな怪物や神々に翻弄されたりしながら故郷と家族のもとを目指す。
オデュッセウスの妻ペネロペをアン・ハサウェイ、息子テレマコスをトム・ホランド、女神アテナをゼンデイヤが。
さらに、ロバート・パティンソンら豪華キャストが終結し、古代ギリシャの神話世界を圧倒的な映像と音楽で描く。

感想①│予測できない人生を描く神話
本作を観て感じたのは、神話の世界で起きていることなのに、その実「人生あるある」に見えるということでした。
せっかくうまくいったと思ったことが、思わぬ方向へ転がってしまう。目的地に向かう目途が立ったと思えば、また遠ざかってしまう。
自分ではどうにもできない出来事に巻き込まれ、ただ時間だけが過ぎていく…。

もちろん、現代の生活で私たちはサイクロプスに襲われたり、魔女に呪いをかけられたりすることはありません。
でも、規模を小さくして考えてみれば、似たようなことは誰の人生にも起こるものではないでしょうか。
「この道を進めば、きっとこうなる」と考えていたのに、思いがけない出来事で予定が狂う。
反対に、当時はただの失敗と思っていたことが、何年か経ってみると別の意味を持ったりする。
最近はキャリアや人生設計など、できるだけ先のことまで詳細に予測して正解のルートを選ぼうとする人が多いように思います。
『オデュッセイア』を観ていると、そもそも人生や世界というものは、そんなに予定通りにできていないのではないかと思わされます。
人生には、偶然や不条理や、どうにもならない遠回りが最初からかなりの量が含まれている、そんなことを神話というスペクタクルで示してくれているように感じました。

感想②│「余計な矢を放ってしまう」ことの人間らしさ
そんな「人生の予測不能さ」を考える上で印象に残っているのは、オデュッセウスたちがサイクロプスから逃げる場面です。
洞窟からの脱出の際、オデュッセウスたちはなんとか逃げ切れる、という状況を作ることに成功します。
それなのにオデュッセウスは逃走の間に、わざわざ最後にサイクロプスに向けて1本の矢を放ってしまいます。
それは彼の怒りからの行動なのか、意地なのか、矜持なのか。よくわかりませんが、合理的な判断ではありません。
しかし誰にでも、生きていれば人生のどこかで余計な矢を放ってしまうときがあると思います。
このシーンでは、知略に長けた英雄であるオデュッセウスが、冷静さを欠く瞬間を描いており、そこにはやはり私たちと同じように「不完全な人間」が現れているように思いました。

感想③│勝利しても、帰還しても、人生は元通りにならない
もう一つ印象に残ったのが、トロイア戦争での勝利と、その後のオデュッセウスの苦悩の関係性です。
オデュッセウスは彼が発案したトロイの木馬作戦によってトロイアを攻略することに成功します。
しかし、勝利の後にオデュッセウスは自分がしてしまったことへの自責の念を抱え、その苦悩とともに長く旅を続けることになります。
そんな彼の傍らにあらわれるようになったのは、知恵や正義の神であるアテナです。

戦いに勝利すれば、それによって背負うものも生まれてしまう。
逆に、故郷や何かを失ったからこそ、あとになって別のものを得ることもある。
人生も、単純な足し算や引き算ではないのだと思います。
映画終盤、長い旅の末、ようやく帰還を果たすオデュッセウスが、最終的には自らの追放を望む姿もまた印象的でした。
「行って帰ってくる」物語の定型に当てはめるならば、帰還したところで物語を閉じてしまってもいいんじゃないかと思うのですが、本作はオデュッセウスが自分の運命を彼なりに受け止め、解釈し、「追放」というひとつの決着を付けます。
思い通りにならなかったことも、取り消せない過去も含めて、「自分の人生はこういうのもだ」と自分なりに意味づけていく。
それもまた「帰還」ということなのかもしれません。

まとめ:今を生きる私たちと紐づけてみると…
というわけで、映画『オデュッセイア』たいへん楽しく鑑賞しました!
どの場面もロケーションハンティングの賜物か、非常に画づくりに説得力があり、3時間ずっと見ごたえのある映像を堪能できました。
今を生きる私たちと紐づけてみると、「なぜこの時代にオデュッセウスの物語を映画に?」という疑問に対する答えっぽいものが見つかるかもしれません。
ぜひ劇場で、(そして大きなスクリーンと圧倒的な音楽と共に)鑑賞してみてください。
▶The Odyssey (Original Motion Picture Soundtrack)
【ルドウィグ・ゴランソン作曲】
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