北欧フィンランド映画『ラスト・ディール』、老美術商が人生を賭けた仕事の行方は?

ラストディール
🍏【青木かこ】フィンランド映画『One Last Deal』ヘイッキ・ノウシアイネン

原題『One Last Deal』、邦題『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』を紹介しましょう。

ヘルシンキで美術商を営む老人が、仕事人生を賭けた一枚の署名の無い絵画を見つけ、長年培ってきた審美眼で名前を失くした絵画をオークションで競り落とそうとしますが…

美しいヘルシンキの街並み、手書きでの顧客リスト、タイプライターを使っての領収書など、デジタル化された現代とは違うアナログの丁寧さが伝わる心温まる映画です。

【フィンランド製作:2020年公開】

見どころ① 売れない美術商老人、確かな審美眼と絵画を観るプロの目

ラストディール,ヘイッキ・ノウシアイネン
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美術商を営むオラヴィ・ラウニオ(ヘイッキ・ノウシアイネン)は、以前ほど絵が売れず経営難に陥っていて、そろそろ店を畳もうかと考える日々。

一人娘のレアから、孫息子オットーの職業体験先としてオラヴィの店で体験させて欲しいと電話がありますが、督促状や以前のオークション落札金も払えないオラヴィは口を濁します。

オラヴィは美術商仲間の友人パトゥに誘われ、オークションの内見会に足を運び、そこで会場の片隅に置かれていた一枚の男性の人物画に目を奪われます。

その人物画はオークション目録では「男の肖像」作者不明と書かれていて、パトゥからもサインもない絵画は売れるはずもないと言われるも、オラヴィの審美眼はその絵画は間違いなく名画だと確信。

孫息子オットーが職業体験に店にやってきて、オラヴィは仕方なく受け入れますが、オットーが、オラヴィの愛する美術をガラクタを集めているだけだと言い放ったため、オラヴィは彼を美術館に連れて行きます。

オットーが「マクドナルド男」と評したウント・コイスティネンの絵を、オラヴィは「モデルに媚びない潔さ」、老人と手を繋いでいる幼子の絵を見て、「命を歩んできた者と歩みゆく者だ」と絵画の奥深さを孫息子に教えるのです。

ただ美しいだけではない、作者の人生観までも絵画から読み取るオラヴィの審美眼。

美術商を生業としてきたオラヴィの言葉を聞くと、絵画の奥深さに気付かされるでしょう。

オラヴィのアナログで丁寧な仕事ぶり

金庫に保管された、きちんと整理されている手書きの顧客リストを出すオラヴィ。

デジタル社会が当たり前となった昨今は、顧客はパソコンで管理され、領収書などもスマホで確認出来るようになりましたね。

お若い方だと、複写式の納品伝票など見たことも無い方がいらっしゃるかもしれません。

タイプライターを使って一桁ずつ数字を打ち込む姿は、オラヴィの美術商としての誇りを感じました。

アナログ時代をご存じの世代の方には、効率の良いデジタルには無い、アナログならではの良さを思い出させてくれます。

見どころ② 疎遠だった孫、職業訓練を通してのふれあい

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サインもない人物画の作者を調べる手がかりは、絵画の裏の破れた書簡の「GRADEN」のみ。

図書館で膨大な資料の中から人物画の作者を調べるオラヴィを助けてくれたのは、デジタルに精通する孫オットーでした。

サインの無い「男の肖像」はロシアの巨匠イリヤ・レーピン作だった

イリヤ・レーピンとは

イリヤー・エフィーモヴィチ・レーピン Ilya Yefimovich Repin, 1844年8月5日ハリコフ近郊 – 1930年9月29日 晩年はフィンランド領クォッカラに自宅を構える。移動派を代表するロシア帝国の画家・彫刻家。生きながらにして伝説となった画家。

心理的洞察を持ち合わせた写実画によって名高く、いくつかの作品は既存の社会秩序の矛盾や階層間の緊張を露わにしている。社会的名士の肖像画を制作する一方、しばしば貧困や差別にあえぐ社会の最下層を題材として、数多くの作品を残した。

(引用元:イリヤ・レーピン『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 2021年12月4日 (土) 21:51UTC)

サインの無いあの人物画は、ロシアの巨匠イリヤ・レーピンの「キリスト画」であることを突きとめたものの、間違いなくレーピンの作品であると証明するものが無ければコレクターに売る事は出来ません。

オットーはネットを使い、ロシアの巨匠イリヤ・レーピンの「キリスト画」だと証明するため、フィンランド在住の老女が持っていた絵画図録を借りにいき、一冊の古い「レーピンの宗教画」という本の中からあの「キリスト画」を見つけるのです。

疎遠だった孫オットーは、祖父の仕事人生を賭けた大仕事に一役買い、オラヴィの美術商という仕事に惹かれていきます。

見どころ③ 借金をしてまで落札、署名の無い絵画は売れるのか?

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オラヴィは友人パトゥに借金を申し込み2000ユーロを借りて競り落とすことを決め、美術商人生を賭けた最後の大仕事に出ます。

しかしオークション当日、「男の肖像」は電話にてすでに1300ユーロで申し込みがあり、どんどん値段が上がっていきます。

値段は、パトゥから借りる予定の2000ユーロを大幅に超え、電話の相手VSオラヴィと白熱した競り合いに。

落札金額はなんと1万ユーロにまで高騰。

この作者不詳の絵画に、これほどまでに高額の値段をつけるとは、オークション会場の誰が予想できたでしょうか。

白熱する競り合いに視聴者はハラハラ!

絵画の価値を知っているのは、作者がロシアの巨匠レーピンだと知っている、電話の主とオラヴィだけなのです。

この落札シーンは、オラヴィの経営状態を知る視聴者にとって最もハラハラするシーンでしょう。

オラヴィが高額落札したのをじっとみつめるオークションハウスの男性。

彼もまたこの絵画の価値を調べていたのです。

オラヴィは、レーピンのコレクターの顧客と12万ユーロで取引する予定でしたが…レーピンの作品だと知ったオークションハウスの男性に邪魔され、取引は流れてしまいます。

銀行からも借りることは出来ず、オラヴィは落札金額1万ユーロを捻出するため、なりふりかまわず奔走することに。

オラヴィの仕事人生を賭けたこのレーピンのキリスト画は、いったい誰の手に渡るのでしょうか?

 まとめ

口数の少ない美術商オラヴィを演じるヘイッキ・ノウシアイネンの、どこかさみしげでありながら、意思の強さを感じる目の演技が素晴らしく、妻を失くした後一人娘のレアを気遣う事を忘れていたものの、孫オットーと最後の大仕事が出来たオラヴィには、悔いのない人生だったはず。

最後にレア宛にオットーの職場体験の評価シートの追記の言葉が、そう物語っています。

いつか自分もオラヴィのように人生を賭けた大仕事をして幕を降ろしたい!と思える名作映画だと思います。

ちなみに私の仕事は…映画ライターとして、私の書いた記事を読んで、多くの人に「是非観てみたい!」と思ってもらえることですね!

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