時間軸通りには進まない、失恋映画3作品
終わった恋を振り返るとき、
「どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」
「あんなに完璧な時もあったのになぁ」
「あの時あの人は何を考えていたんだろう」
と、とりとめもなく色々なシーンを思い出してしまうものですよね。
今回ご紹介するのは、そんなリアルな思い出のように、進んだり戻ったり、恋の終わりを起点として遡ったり、時間軸通りには進まない失恋映画3作品です。
3つのカップルのリアルな恋愛物語を味わってみてください。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/FIVEhundredDAYSofSUMMER/)
1.『(500)日のサマー』
■草食系男子トムが、職場で出会ったサマーに一目惚れしてから失恋するまでの500日を描いた作品。
■主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットはゴールデングローブ賞にノミネートされました。
■ズーイー・デシャネル演じるヒロイン・サマーのファッションも見どころです。
恋の始まりのハッピー感を全開にしたミュージカル的な演出も楽しく、一見明るくキュートな雰囲気ですが、実はかなりシビアに二人のすれ違いを描いたビターな作品です。
映画館で観た当時、トムの目線から語られるサマーは、奔放で気まぐれに草食系男子を振り回す小悪魔女子だと思っていたし、サマーの言動のあちこちが不可解でした。
でも10年が経ち、恋愛についてもう少しだけ知見を深めた今、サマーについては少し違った感覚を抱くようになりました。
あの名作映画に突然涙するシーン、最後にベンチで交わす会話…。
女心がわからなくて悩んでいる男性の皆さん、観たらますます女心がわからなくなること請け合いです。
ぜひ一度目はトムの気持ちに共感しながら、そうしたら次はサマーの気持ちを想像しながら、二度目を観なおしてみていただけたら、と思います。
トムも10年経ったらあの頃のサマーのことが少し分かるようになるのかもしれません。
2.『ふたりの5つの分かれ路』
■『まぼろし』『8人の女たち』などで、「女より女のことが分かっている」と言われているフランソワ・オゾン監督のフランス映画。
■主人公マリオンを演じるヴァレリア・ブルーニ・テデスキは、カーラ・ブルーニ(モデル&ニコラ・サルコジ元フランス大統領夫人)お姉さんです。
■タイトルの通り、二人の出会いから別れに至るまでの5つの岐路を切り取った作品です。
ジル(ステファヌ・フレス)とマリオン、ある夫婦の離婚と決別のシーンから始まり、時が遡って倦怠期、出産、結婚式、そして出会いのシーンが5つの短編のように描かれていきます。
何気ない日常や幸せだったはずの人生のイベントの中で、どこに小さな亀裂が入り、埋められないほどの大きな溝となり、やがて決して道の交わることのない二人へと変わっていってしまうのか。
続けていくことの限界を実感した瞬間、何かを完全に諦めた瞬間、愛しているのに孤独に耐えられなくなった瞬間。
どちらかと言えばマリオンの心情から描かれている二人の岐路ですが、きっとジルにもそういった瞬間があったのでしょう。
終わることが初めから分かっている二人だからこそ、その日々を覗き見しているこちら側は、言いようのない不安感にいたたまれなくなります。
”愛”を何よりも重んじるフランスの恋愛観、ジェンダー観
この映画はロンドンに短期留学していた際に、フランス人のシェアメイトと一緒に観た作品で、確かその時には英語字幕がついたものを、彼は原語で、私は字幕で観たのだったと思います。
字幕と言えども英語なので、その時には半分くらいしか内容が理解できず、帰国後にもう一度思い出して観直して、その当時の彼の心情のことも少し考えたりしていたのでした。
愛の国フランス。
シェアメイトの彼は日本人では一生口にすることもないような情熱的でロマンチックな言葉を日常的に発していて、私にはそれが本気なのかジョークなのかも分からず、日々文化の違いというものに圧倒されていたものでした。
こちらの作品も、そんな典型的な日本人から観ると信じがたいような会話が夫婦の間で交わされ、ハリウッドとはまた全然違う、フランスの恋愛文化を感じる作品です。
【YouTube:予告編】
余談ですがそんななか、何気ないシーンなのに妙に覚えているのが、兄夫婦を家に招く前にマリオンが帰宅したシーン。
「お化粧を直さなきゃ」
というマリオンに、ジルが返す言葉。
日本語訳では
「必要ないよ」
だったのですが、確か原語では
「十分美しいよ」
だったのです。
これがヨーロッパの男性の言葉選びのセンス。
日本人の男性にももう少しこんな人が増えたらなあ、、と思ったのでした。
3.『ブルーバレンタイン』
■『ブロークバック・マウンテン』『マリリン7日間の恋』などのミシェル・ウィリアムズは、この役でアカデミー主演女優賞にノミネート。
■そして『きみに読む物語』『ラ・ラ・ランド』などのライアン・ゴズリングは、ゴールデングローブ賞にノミネートされました。
共に演技派と評価の高い二人が、かつては愛し合いながらも7年のうちに破局へと向かう夫婦の姿をリアルに熱演しています。
頭髪を抜いてまで疲れた夫ディーンを渾身で演じたライアン・ゴズリングは必見です。
さて、今作は『バッファロー66』や『ブラウンバニー』のようなドライでおしゃれな映像で過去と現在を同時進行で重ねつつ、恋愛トラウマ映画と呼ばれるほど容赦なく辛辣に、終わりゆく愛情を描写する作品です。
これを観た男性側は、
「ディーンは優しくていいやつなのに、シンディが勝手に心変わりして酷すぎる」
と感じる人も多いようなのですが、女性側から見ると、やはりこうなってしまうのは避けがたく感じる部分もあるのです。
作品中でも二人の思いが嚙み合っていない部分なのですが、決して収入面だけの問題ではないのです。
どんなに愛情深くて一途だと分かっていても、女性は尊敬できないと感じてしまった男性を愛し続けられないのではないでしょうか。
そして一度愛が消えてしまった女性は、どうやってもあの頃の気持ちを取り戻すことはないのです。
思いあうタイミングがずれることのもどかしさ
ある友人のカップルのことを思い出しました。
自由な彼にずっと尽くし続けてきた彼女の中で、ある日ふとプツッと糸が切れてしまったのです。
彼は焦って、あらゆる優しさを発揮したり、笑わせてみたりと、彼女の心を取り戻すべく奮闘し、
「自分はこんなに変わったのに何が嫌なの?」
と彼女に聞きました。
彼女は一言言ったそうです。
「生理的に無理になった」
愛が消えてしまった相手というのは、女性にとってはよく知らないその他大勢の男性を押しのけて「生理的に無理な人リスト」の上位に一気に上り詰めてしまうことがあるのです。
でも例えそうだったとしても。拒絶される側だけでなく、愛が消えてしまう側も、それまでに何度も傷ついて心をすり減らして、もうそこにしか辿りつけなかったのかもしれません。
まとめ~痛みを伴わない別れなんてない~
出会って恋に落ちて愛し合ってすれ違って、そして別れが訪れる。
誰もが経験したことのあるありふれた恋や愛、けれどもその中身は十人十色で、人の数だけ、カップルの数だけ色々な形があるものです。
だからこそ恋愛をテーマにした映画作品は無数にあり、多くの人が共感します。
そんな数ある恋愛映画の中でも特に今回は、出会いから別れを時系列どおりに見せないことで、二人のすれ違いをよりくっきりと際立たせる、心にグサッと刺さる映画3選をご紹介しました。
参考記事:「女と男の曖昧な関係」が楽しめる3つの映画。微妙な距離感が面白い!
記事へのご感想・関連情報・続報コメントお待ちしています!