えん罪と戦う人たちを描いた映画ですが、途中まで観ていて本当にイラつきます。
どうしてもっとはっきり言わないの?
なんで誰も助けてあげないの?
『リチャード・ジュエル』は、まじめな青年が真面目過ぎたばかりに「えん罪」という深みにはまっていく様子が描かれています。
しかし、彼を救うために、ひとりの弁護士が立ち上がります。
事の成り行きから、リチャード・ジェルを有罪に仕立て上げようとするのはなんとFBI。
国家権力と戦う様子は、本当に手に汗握ります。
▶参考:実際の事件を紹介する本
※映画『リチャード・ジュエル』(Richard Jewell)のアトランタ五輪爆弾事件、松本サリン事件、甲山事件を扱う。3つの冤罪事件を通して、犯罪報道を考える。【引用:Amazon】
クリント・イーストウッド監督、深く静かに訴えたこと
監督は、数々の映画に登場したベテラン名優でもあるクリント・イーストウッド監督。
最近は監督としての活躍が顕著で、いくつもの名作を残しています。
どの映画も、胸にズシンとくるものが多いですね。
本作以外の筆者のおすすめは、『運び屋』『硫黄島からの手紙』。
『運び屋』は、このマガジンサイトでも紹介しています。
●クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)
誕生日:1930年5月31日生まれ
星座:ふたご座
身長:193㎝
出身:アメリカ・カリフォルニア州
▶おすすめの代表監督作品
※監督作品。スナイパーのカッコ良さと悲哀があふれています。
※監督と主演。イーストウッド自身の人生と主人公を被らせているようでたまりません。トビー・キースの音楽も最高!
マジメな主人公、何事にも一生懸命だった…
主人公、リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は実在人物で、そのまま映画のタイトルになっています。
母親と暮らすマジメな青年で、映画はリチャードが中小企業局の備品係として働いていることろから始まります。
この備品係というのは、局内で働く職員の席を巡回し、事務備品などを配っていくという仕事。
目立たない仕事ながら、彼は局員が必要なものを的確に見つけ出し、先回りして配布するほど生真面目でした。
後々、リチャードがえん罪を受け、彼の弁護をすることになったブライアント弁護士(サム・ロックウェル)とはここで知り合うのです。
リチャードは、ブライトン弁護士がスニッカーズのチョコバーが大好きなのも知っていて机の引き出しに入れてあげていたことも。
ブライトン弁護士も、そんな茶目っ気があって可愛い性格のリチャードを気に入っていました。
学校の警備員、ここでの仕事がえん罪の伏線に
リチャードが将来的に一番やりたかった仕事は、警察など法務執行官の仕事でした。
リチャードは、ほどなく中小企業局を退職。
ブライトン弁護士にも将来の夢を語り、退職の挨拶を済ませます。
この時に弁護士からもらった名刺が、後にブライトン弁護士との縁を繋ぎます。
法務執行官の仕事を目指す中で、次に彼が就いた仕事は学校の「警備員」。
学生たちに学内ルールをしっかり守らせることも、正義感の強いリチャードにとっては大事な仕事でした。
そしてある時、校内で飲酒していた学生に注意余って手を出してしまい、これが原因で学校を首になります。
特段にひどいことをしたわけではなかったのですが、えん罪に繫がるひとつの伏線となっていきます。
イベント会場の警備で、ベンチ下に発見した忘れ物?
次にリチャードが就いた仕事が、イベント会場の警備員。
時は1996年7月、アトランタ・オリンピック関連のイベント警備が彼の仕事となります。
とにかくマジメなリチャードのこと、会場の警備はもちろんのこと参加者への会場案内も親切に行う優秀な警備員でした。
さて、事件はそんな中で起こったのです。
コンサートに集まった観衆でごった返す会場を巡回するリチャードは、ベンチの下に置かれたバッグを発見。
他の警備員が誰かの忘れ物だろうと言う中で、彼はルールにのっとり「不審物」、状況によっては「危険物」として処理することを主張。
緊急連絡を受けた爆弾処理班が対応するまで、観客を近づけないように誘導をし始めるのでした。
警察に入った、30分後の爆破予告の電話
その頃、警察にイベント会場に爆弾をしかけたという予告電話が入ります。
当局が謎の電話を調査していたその頃、不審物は猛烈な破裂音を立て爆発。
リチャードの誘導で難を免れた人もいましたが、結果、多くの負傷者を出すことに。
翌日、地元新聞社はこの事件を大きく報道。
記事の内容は、爆発の詳細に続き「警備員が被害を最小限に食い止める!」とありました。
リチャード・ジュエルは、この報道により一気に有名に。
息子とと二人暮らしの母親ボビ(キャシー・ベイツ)は、自慢の息子を誇らしげに思うのでした。
えん罪をつくることになった、ささいな情報
しかし、事件の焦点は爆破物を仕掛けた犯人と謎の電話の主にあることは言うまでもありません。
捜査を担当するFBIチームは、情報収集に躍起となります。
そんな中で浮上したのが、こともあろうか不審物の第一発見者リチャードだったのです。
マスコミで有名になったリチャードを見て、連絡をしてきたのはリチャードが警備員をしていた頃の学校の学長。
首になった理由を警察に報告してきたのです。
第一発見者を疑うという鉄則もあり、FBIはリチャードに焦点を当てていきます。
一方、事件の真犯人情報を探っていた人物が他にもいました。
それは、特ダネを探す地元紙の記者キャシー・スクラッグス(オリヴィア・ワイルド)。
彼女は親しく付き合うFBI捜査官から、捜査線上にリチャード・ジュエルの名前があることを聞き出します。
英雄を一転、被疑者に転落させたニュース
スクープの欲しかったキャシーは、この情報をトップ記事に掲載。
「FBIがヒーローを疑う!」
あまりにもショッキングな内容に、全米のマスコミが飛びつき英雄リチャードは一気に被疑者に転落。
ここから、冒頭書いた「イラつく状況」が映画全体を支配していきます。
FBIの描いたプロファイリング(犯人像分析)は、低階層の孤独な白人男性。
リチャードの過去の言動情報が積み重ねられていきます。
FBIは、作り上げた人物像=犯人像の裏を取るため、捜査への協力依頼という口実で本人リチャードを「尋問」し出したのです。
法務官に憧れていた彼は、疑われているのが自分なのに事件の犯人像について余計な話をぺらぺらとしゃべってしまうのでした。
強引なやり方のFBI、気付き始めたリチャード
さすがのリチャードも、聞き取りの仕方が誘導的であることに気付き、企業局時代に知ったブライトン弁護士に連絡を取ります。
リチャードのことを覚えていたブライトン弁護士、状況を聞いてすぐさま言ったのは、今後は「何もしゃべるな!」。
リチャードがFBIに行った発言により、彼がかなり不利な状態にあることを察知したのです。
「このままだと、まちがいなく犯人に仕立て上げられる。戦う気はあるか!」と。
さて、今作の面白さはここから始まります。
ブライトン弁護士は、ひるむことなく国家権力そして扇動的なマスコミ報道と対決する姿勢を見せます。
悪役となるFBI捜査官に毅然と立ち向かっていく様子は、映画前半の「イラ立ち」が大きかっただけに胸がすく思いがします。
まとめ~二人の名優で実話の臨場感が~
この映画では、二人の名優がえん罪にはめられていく実話の臨場感をひしひしと伝えてくれます。
ひとりは、ブライトン弁護士を演じるサム・ロックウェル。
彼の出演作でおすすめは、『バイス』(ブッシュ元大統領役)、『スリー・ビルボード』、『ジョジョ・ラビット』(ナチスドイツの教官)といったところでしょうか。
いずれも、バイプレイヤーとしての存在感がすごいのと、映画自体も一見の価値あり作品です。
ちなみに、『スリー・ビルボード』ではアカデミー賞助演男優賞にノミネートされています。
●サム・ロックウェル(Sam Rockwell)
誕生日:1968年11月5日(さそり座)
身長:175㎝
出身:アメリカ・カリフォルニア
▶おすすめの代表作品
もう一人の名優は、母親ボビ役のキャシー・ベイツ。
大ベテランの彼女の出演作品は多岐にわたります。
中でも代表作で有名なのはミステリー映画『ミザリー』で、アカデミー賞主演女優賞に輝いた経歴を持ちます。
今作ではリチャードをこよなく愛し、息子を信じて守り続ける優しい母親役が映画に重厚感をもたらしてくれます。
リチャードの無実を切々と訴えるシーンは感動的です。
今作で、アカデミー賞助演女優賞ノミネートに選ばれました。
ぜひ、二人の参考作品もあわせてご覧になって下さい。
●キャシー・ベイツ(Kathy Bates)
誕生日:1948年6月28日 (かに座)
身長:160cm
出身:アメリカ合衆国・テネシー州
▶おすすめの代表作品
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