前トランプ大統領が言った、「52か所」の報復攻撃
1979年のイラン革命以降、アメリカのイランとのにらみ合いが続いています。
2020年、アメリカがテロ組織の指導者としてきたソレイマニ司令官を殺害するというニュースが走りました。
当時のトランプ大統領は、バグダッドにある自国の大使館が彼らにより危険にさらされたことについて、40年前にイラン(テヘラン)で起こったアメリカ大使館員人質事件を持ち出しツイートをしました。
「今後、イランが米国人を対象にしたテロ行為を行えば報復攻撃をする地域は『52か所』ある」と。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/argomovie.jp/)
イラン革命後に勃発、イラン・アメリカ大使館員人質事件
実は、この「52」という数字は、1979年11月から444日にわたって人質にした大使館員の人数だったのです。
まさに、アメリカの40年間にわたる怨念の事件だというわけです。
今も持ち出される一連のアメリカ対イランの確執。
報復の連鎖を心配せずにはいられません。
そこで今回紹介する映画は、この人質事件を扱った映画『アルゴ』です。
まずは、予告編をご覧ください。
イランに急遽差し向けられた、米CIA「人質奪還のプロ」
イランはもともと親米国だったのですが、1979年2月のイラン革命の後、アメリカが旧支配者のパフラヴィー皇帝の亡命を手助けしたとして新支配者のホメイニ師から一転、敵視されることに。
それに賛同した民衆が、同年11月にテヘランのアメリカ大使館を襲撃したのが事件の始まりです。
実は、『アルゴ』が取り上げているのは、大使館の52人とは別建物にいた領事部所属の6人の救出作戦です。
大使館が暴徒の侵入で危険を察知し、6人は先に建物からの脱出を図ります。
しかし、逃亡をイラン側に知られると6人はおろか、人質となった52人への制裁も危惧されるため、どうしても隠密裏に脱出を進めなければなりません。
そこで現地に派遣されたのが、アメリカCIAの「人質奪還のプロ」トニー・メンデス( ベン・アフレック)でした。
●ベン・アフレック(Ben Affleck)
誕生日:1972年8月15日 生まれ
星座:しし座
身長:192cm
出身:アメリカ・カリフォルニア州
▶おすすめの代表作品
ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット(予告編:Amazon) (楽天)
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「アルゴ」とは、架空の映画タイトル名だった!
さて、気になるのが「アルゴ」という名前。
いったい、何の名前でしょうか?
これは、領事館から先に脱出した6人をイラン国外に逃すために、CIAメンデスが考案した「偽映画」のタイトルだったのです。
一旦建物から脱出した領事館員は、知人宅や親アメリカの公的機関などを経て、カナダ大使の公邸でしばらくかくまってもらうことに。
しかし、問題はそこからです。
いかにしてイランからバレずに脱出するか、逆に言えば、6人がイランにやってきた嘘の目的が必要だったのです。
つまり、彼らはSFファンタジー映画「アルゴ」の製作クルーでイランにやって来て、撮影が終了したので帰国する手はずを偽装しようとしたのです。
打開策の妙案が見つからない中で、CIA本部をして「最高の最悪案」と言わしめた作戦でした。
テヘランでの空港出国手続きは、手に汗握る緊張の連続!
この特別映像では、「奇策」に協力するハリウッド関係者や政府関係者がなんとものんびりした様子で語っています。
テロップでは、「国外脱出する怪しい連中を『革命防衛隊』が一軒づつ調べている」とあります。
このイランの「革命防衛隊」の司令官こそ、2020年1月3日にアメリカの空爆で殺された「ソレイマニ司令官」だったのです。
6人が最後の脱出窓口となるテヘランの空港での出国手続きは、「偽映画クルーたち」には息が止まる時間となります。
当時のカーター大統領、再選を果たせなかった大事件!
当時のアメリカ大統領はカーター大統領でした。
CIAメンデスの勇気ある行動と、実際に領事館員を無事に脱出させた実績は、カーター大統領によって祝福されたことは言うまでもありません。
しかし、当の大統領は残る大使館員52人の救出に手こずったことが原因で大統領選挙で再選を果たせず失職することに。
アメリカ国民は、444日も人質を救出できない弱気な大統領に失望したのでした。
前トランプ大統領がツィートした、「52」の意味は?
さて、あれから40年数年後の今。
前トランプ大統領がイランに対して強気に出た理由は、40年前と同様、間近に大統領選挙を控えていたからだと言われています。
改めてアメリカ国民に「52人の人質」の屈辱を思い起こさせ、強い大統領のイメージ付けるためだと。
ちなみに『アルゴ』は、2012年の第85回アカデミー賞で「作品賞」含む3冠を獲得しました。
当時の歴史的事実をふまえて鑑賞すると、緊張感もひとしおの作品です。
■参考書籍
※革命によって親米の王政が崩壊し、史上類を見ない「イスラム共和制」が樹立されてから40年を経たイラン。
「悪の枢軸(すうじく)」「世界最大のテロ支援国家」と米国に名指しされ、脅威論も根強いこの国の、実際の姿とはいかなるものか。
イランははたして危険な国なのか。テヘラン特派員がその素顔を活写する。
※日本人はイランに対してどのようなイメージをもっているだろうか。革命、戦争、日本に大挙してやってきた労働者…。しかし、それはイランの「非日常」的な一面に過ぎない。古代に広大な帝国を築き、正倉院へガラス器をもたらしたペルシアは、アラブのイスラーム勢力や欧米諸国の侵入・干渉を受けながらも、独自の文化を守り抜いた。不安定な世界情勢のなか、現在も模索を続ける人々の真実の姿を伝える。
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