
先日、大学の先生のこんな言葉を思い出しました。
「映画はファーストカットが肝!そこで映画の面白さが決まる!」
私「もな」は大学で映画学を学んでおり、この言葉を聞いて以来、映画の見方がガラッと変わったのを覚えています。
今記事では、映画がかける「ファーストカット」の魔法について、熱く語らせてください!
(トップ画像:https://x.com/MImovie_jp/)
心を掴む「ファーストカット」、もなの偏愛トーク!

ファーストカットとは、文字通り、映画の始まりとともに観客が最初に目にする場面。
大学の先生は、「ファーストカットが映画の9割」とまで言いました。
たしかに、映画の出だしで心を掴まれると、その後の物語に全神経を集中できますよね。
ファーストカットが語ることとは?
映画のファーストカットは、いわば映画の「名刺」と言ってもいいでしょう。
これから始まる作品の雰囲気は?
何が語られていく?
どこが舞台で、誰が主人公?
そういった情報を、開始1秒で観客に伝える重要なシーンなのです。
ファーストカットの掴みが良ければ良いほど、観客の五感がくすぐられ、その後の物語にグッと入り込むことができます。
また、作品の世界観やトーンも分かりますよね。
それを逆手にとって、物語をミスリードできるのも面白いポイント!
ファーストカットで先入観を持たせておいて、大どんでん返し!なんて展開も作ることができます。
映画は始まりが9割と言えるのは、これらの理由があるからなのです。
印象的なファーストカット、5作品を紹介!
では、実際に筆者が「このファーストカットは凄い!」と感じた映画たちを紹介します。
➊『ラ・ラ・ランド』

ファーストカットの大事さを知ってから、筆者が一番最初に観た作品が『ラ・ラ・ランド』でした。
LA名物と名高い、高速道路の大渋滞から始まり、夢を追う若者たちの歌&ダンスで物語の幕が開けます。
何よりすごいのは、ファーストショットからノーカットでミュージカルパートが展開されること!
実際の高速道路をジャックしての長回し撮影のため、失敗は許されない状況だったといいます。
製作陣の熱意の結晶とも言えるファーストカット(ファーストシーン)で、観客側も一気に心掴まれてしまうのです。

➋『時計じかけのオレンジ』(スタンリー・キューブリック版)

強烈なファーストカット映画といえば、『時計じかけのオレンジ』を思い出します。
映画が始まると同時に映し出される、主人公・アレックスの顔のドアップ。
カメラが引いてくごとに、アレックスの表情から服装、彼の仲間、風景に至るまで、尋常ならざる空気をまとっていることが分かります。
この先を観るのがなんだか怖い、でも気になる、そんな風に思わせる不気味なオープニング。
どんな物語が始まるのか全く予想させてくれない点においても、本作のファーストカットは秀逸だと言えるでしょう。

➌『セッション』

『時計じかけのオレンジ』がドアップから引いていくファーストカットならば、『セッション』は引き画から対象に寄っていくファーストカット。
スタートの画は、暗い廊下の奥で誰かがドラムに向かうというもの。
緊張感のある雰囲気の中で、カメラが廊下を進み、段々とその人物にクローズアップしていきます。
観客は、思わず廊下の奥に目を凝らし、聴こえてくる音にも耳を傾けるはず。
あえて集中力を要するファーストカットにすることで、観客の興味を引く効果があると考えられます。
➍『ザリガニの鳴くところ』

ファーストカットの風景と音で、映画の世界観に引き込むことができます。
その良い例が『ザリガニの鳴くところ』。
この作品の舞台は、アメリカ・ノースカロライナ州の湿地帯。
ファーストカットで、陽に染まり風になびく湿地の美しい風景と鳥の鳴き声が目と耳から入ってきます。
一瞬にして、身も心も湿地の大自然に抱かれている気分にさせてくれるのです。

似たように、風景と音のファーストカットで秀逸なのは『バベル』。
砂漠にたたずむ山羊と銃声。
言葉を超えた繋がりがテーマの映画にふさわしい、静かで衝撃的な始まりで、観客の心を現実から映画の世界へと引き込みます。
❺ウェス・アンダーソン監督作品
独特の世界観や色彩、シンメトリーな画面構成で観客を惹きつける、ウェス・アンダーソン監督。
そんなウェス監督の作品は、ファーストカットから「これぞウェスの世界!」が展開していくから、思わずワクワクするのです。
例えば、『グランド・ブタペスト・ホテル』。
ファーストカットから、まるで絵本を開いたような世界観が広がります。

また、『アステロイド・シティ』ではテレビチャンネルのロゴがファーストカットで表示され、場面が変わってテレビスタジオで司会が話しているシーンへ。
レトロでコミカルな出だしが、宝箱のようなウェス世界が展開していくことを予感させてくれます。

ファーストカットで、その監督らしさを存分に発揮しているのが面白いですよね。
おまけ:『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』

最近作で話題の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』のファーストカットに注目してみました。
ファーストカットで登場するのは、謎のボックス。
もちろん、この時点で観客は何のボックスなのか、どんな役割を持つのか分かりません。
そして、物語の転機となるシーンでこのボックスが不気味に再登場。
主人公・イーサンの心情そして行動に、大きな影響を与えます。
物語の中盤でファーストカットの謎の種明かしをするという仕掛けになっていたわけです。
このように、一見して意味を理解できないファーストカットが、後々の物語の伏線になっていることも!
だからこそ、ファーストカットをなんとなく見流してしまうのはもったいないのです。

まとめ
皆さんがご覧になった作品で、時に印象に残っている「ファーストカット」はありますか?
これからご覧になる映画で、映画のはじまりに注目すると、より鑑賞が味わい深くなるかもしれません!
《ライター:もな》 クリックで担当記事の一覧へ→

ウェス・アンダーソン作品の世界観が大好き!ライターの「もな」です。
映画にどハマりしたのは、小学生の頃に『ロード・オブ・ザ・リング』を観てから。
それからというもの、映画は私の人生にとって欠かせないもので、大学では映画学を専攻しました。
私の書く記事が、誰かと素敵な映画との出会いの場になったら嬉しいです。
記事へのご感想・関連情報・続報コメントお待ちしています!