スパイ小説と言えば、彼。
イギリスのジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』が原作です。
(追悼!残念ながら、2020年12月12日死去されました。ご冥福をお祈りいたします。)
ジョン・ル・カレ自身が、東西冷戦中イギリス秘密諜報部所属だったこともあり、原作の臨場感は迫るものがあります。
舞台は、東西冷戦下のイギリス諜報部(通称「サーカス」)。
旧ソ連情報部とのし烈なダマしあいで、旧ソ連が自国の二重女スパイを闇に葬ってまで守ろうとしたものは何だったのでしょう?
奇妙なタイトル『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』は、サーカスに所属した幹部のコードネームに由来します。
ティンカー(鍛冶屋)、テイラー(仕立て屋)、ソルジャー(兵士)、ベガーマン(乞食)、プアマン(貧乏人)。
これは、「コントロール」(ジョン・ハート)と言われた、サーカスの前長官がある目的で名付けたものでした。
東西冷戦時代、MI6・イギリス諜報部にいた「もぐら」
実は、サーカス幹部の中にソ連情報部に20年近く内通している、いわゆる二重スパイ「もぐら」がいると疑っていたのが前長官のコントロールでした。(画像:中央)
ある事件をきっかけに彼が責任を取り失墜した後、英政府の高官は、元幹部のベガーマンこと、ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)に接触。
スマイリーはすでに退官していましたが、引き続き「もぐら」のあぶり出しを依頼されます。
コントロールから、自分も疑われていたことに驚くスマイリーですが、かつての経験と情報網を辿り依頼を引き受けることにします。
●ゲイリー・オールドマン(Gary Oldman)
誕生日:1958年3月21日(おひつじ座)
身長:174㎝
出身:イギリス・イングランド
▶おすすめの代表作品
※スパイ映画の最高傑作。ゲイリー・オールドマンの演技にシビれます。
ソ連情報部の黒幕に操られる、二重女スパイ「イリーナ」
「もぐら」の存在を察知した、サーカスの海外工作員
サーカス内の「もぐら」に関する情報は、サーカスからイスタンブールに派遣されていた工作員リッキー・ター(トム・ハーディ)からもたらせられます。
ターが、現地で接触を図っていたのは、ソ連情報部のイリーナ(スヴェトラーナ・コドチェンコワ)という女スパイ。
彼女と恋仲となったターは、彼女の亡命希望と引き換えにサーカス内の「もぐら」の存在を知らされます。
さっそくロンドンのサーカス本部に情報を上げるのですが、絶妙のタイミングでその翌日、イリーナは港で何者かによって暗殺されてしまうことに。
「ウィッチクラフト作戦」仕掛けた人間と、仕掛けられた罠
一方、コントロールの後任となった長官アレリン(トビー・ジョーンズ)が進めていたのが「ウィッチクラフト作戦」。
この作戦は、英国駐在のソ連大使館員ポリヤコフに偽情報を渡すというものでした。
ちなみにアレリンは、コントロールが「ティンカー」と名付け、疑っていた人物のひとりです。
しかしこの作戦、スマイリーの調べでわかるのが、仕掛けたのはアレリンではなかったのです。
仕掛けたのは、ポリヤノフの背後、つまり彼の本国であるソ連情報部の幹部「カーラ」という人物だったのです。
ニセ情報だと承知の上で、騙される理由とは?
カーラこそ、サーカス内の「もぐら」を操る影の上司として存在。
「もぐら」を通じて、あえてニセ情報作戦を展開するように仕掛けたというわけです。
ソ連側は、いかにもだまされたようなフリをしてイギリスの出方を見る。
そして、イギリスの情報提携先であるアメリカ情報局の動きさえつかもうとしていたのです。
いかにサーカスそしてイギリスは、「もぐら」を使ったソ連によって愚弄されていたのかが次第に明らかになってきます。
「もぐら」探しの『裏切りのサーカス』、クライマックス
さて、スマイリーはサーカス内で信頼できる男ピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)を使って内部調査をすすめ、「もぐら」が誰かを絞り込んでいきます。
前長官コントロールの残した情報から見えてくるのは、現長官はアレリンだが後ろで操っているのはテイラーことビル・ヘイドン(コリン・ファース)かではないのか?
いや、愚直なソルジャーこと、ロイ・ブランド、日和見的なプアマンこと、トビー・エスタヘイス…と、スマイリーは仮説を立て、「もぐら」をあぶり出すため、ある仕掛けを実行するのでした。
中盤以降に物語は急展開、見落とさないようにご覧ください。
まとめ~闇に生きるスパイ映画の真骨頂~
(最後のネタバレなし)
最後のネタバレ、つまり「もぐら」が誰だったかはもちろんおいておきましょう。
あまりにも名作過ぎるこの映画ですが、一方で隠語や瞬間の表情で語られる部分も多くあり要注意です。
もぐらが誰だったかを知った上で、もう一度見るとさらに面白味が増すとも言われています。
登場人物の地味な人間模様と、ひたすら感情を見させない描写こそ、まさに闇に生きるスパイ映画の真骨頂かもしれません。
最後に、今作の主人公スマイリーを演じたゲイリー・オールドマンが意味深なコメントを出していますのでぜひ参考にして謎解きをして下さい。
こんな仕掛けを作った、ジョン・ル・カレに完敗です。
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