タリバンによるアフガニスタンの騒乱を出すまでもなく、今も世界中で紛争は治まりません。
今回紹介する映画は、実在の戦場記者「メリー・コルヴィン」を描いた実話映画『プライベート・ウォー』。
『シビル・ウォー』の戦場記者も話題ですが、こんな作品もあるので是非ご覧ください。
メリー・コルヴィンは、知る人ぞ知る、あえて世界中の紛争地帯を選び取材をし続けたいわゆる戦場記者。
というより、兵士以上に戦った戦士かもしれません。
演じるのは、優し気な顔に似合わずなぜかタフな役柄が似合うロザムンド・パイク。
失踪ミステリー『ゴーン・ガール』を観た人はその意味がわかるのではないでしょうか。
茶の間に届く、空爆の黒煙の下には…?
街中を覆う空爆の黒煙や渇いたピストル音が、平和な茶の間に届くのは目の前に起こる事実を取材し続ける記者がいればこそ。
戦争の犠牲者となる、なんの罪もない人たちの「現実」を突き付けてきたメリー・コルヴィン。
残念ながら、彼女自身、志半ばで砲弾の犠牲者となってしまいます。
映画というより、ドキュメントと言ってもおかしくない素晴らしい映画です。
ぜひ、一度ご覧になって下さい。
●ロザムンド・パイク(Rosamund Pike)
誕生日:1979年1月27日(みずがめ座)
身長:174㎝
出身:イギリス・ロンドン
▶おすすめの代表作品
※クライマックスは、震え上がります!
※ナチスの非情な№3「ラインハルト・ハイドリヒ」の妻を演じます。
コルヴィンが左目を失った理由ースリランカー
彼女の最期は、2012年、シリアの激戦地ホムス地区。
そこからさかのぼる形で、彼女のし烈な記者活動歴が紹介されます。
メリー・コルヴィンが所属していたのは、イギリスのサンデー・タイムズ紙。
彼女が有名となったのは、2001年、記者団が組織されていない紛争地スリランカでの内戦取材からです。
上司ショーン・ライアン(トム・ホランダー)の反対を押し切り、反乱軍の単独取材を自ら志願して決行します。
この時、政府軍が放った戦車砲弾に巻き込まれ左目を負傷します。
フセイン独裁政権下の惨状ーイラクー
退院したのは、しばらく経ってからの2003年。
負傷した左目を覆う眼帯のアイパッチを付けて再び記者活動に戻るのですが、後々、メリーのトレードマークとなります。
次に向かったのはイラクの首都バグダッドでした。
フセインの独裁政権下にあって、惨殺されたクェート人が埋められたという墓地の取材でした。
現地で知り合った、フリーカメラマンのポール・コンロイ(ジェイミー・ドーナン)と同行。
見どころは、立ち入り禁止の区域に取材潜入する緊迫の場面。
メリーの機転で自分たちを医療機関のメンバーだと偽るのですが、その度胸の据わったやり方には驚くばかりです。
●ジェイミー・ドーナン(Jamie Dornan)
誕生日:1982年5月1日(おうし座)
身長:178㎝
出身:アイルランド
▶おすすめの代表作
※どちらも新人に近い俳優が出演。話題を呼んだ官能映画です。
※戦場記者の伝記映画。ロザムンド・パイクと共演しました。
強気な取材の陰にあるストレスーPTSDー
なんとか現地に潜入し、無残に埋められた多数の亡骸を見届け残された家族たちの報道に成功するメリー。
しかし、彼女が目にした死体の惨状は目を覆うばかり。
これは帰国後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)となって、彼女を確実に蝕んで行く様子がわかります。
一見、男まさりの言動で常にタフなメリー。
しかし、その実は酒・たばこ、時に男でストレスを紛らわしていたのでした。
独裁者カダフィの単独インタビューーリビアー
メリーの症状を心配する周囲の勧めもあり、一旦は病院で治療することに。
しかし、病院から復帰すると再びメリーは戦場に戻る決心をします。
今度は、2009年のアフガニスタン。
ポールとともに、タリバン政権と戦うアメリカ軍に同行します。
ここでも、犠牲者はあどけない子どもたちばかり。
二度の流産経験のある彼女だからでしょうか、亡くなる子供への愛情は人一倍でした。
2011年のリビアでは大規模な反政府デモを取材。
特筆すべきは、当時の独裁者カダフィの単独インタビューに成功します。
メリーの舌鋒鋭い質問に、あのカダフィがたじたじする場面は見ものです。
孤立する女性と子どもたちー最後のシリアー
息つく暇もなく紛争地取材を続けるメリーに、上司のショーンは休息をすすめますがメリーの意志はひとつでした。
「私が(現場を)見るから、あななたちは何も見なくていい!」
と上司への言葉を残します。
2012年にメリーが飛んだのは、独裁政権のアサド政府軍と反政府軍の内戦がますます激化するシリア。
彼女の取材欲を再び動かしたのは、激戦地ホムス地区で多くの女性と子どもが地下で孤立しているという情報でした。
空爆にさらされ、一刻も早く退避するよう指示が出される中に自ら飛び込みそこから彼女が発信し続けたものは何だったのでしょうか?
「私が死体で掘り起こされた時、感銘を与えたい」と強がりで高級下着を自慢していたメリー・コルヴィン。
悲しいエンディングが待っていました。
まとめと感想
戦場記者が、戦地で特別に守られるルールなんか一切ありません。
むしろ、目立つ記者は狙い撃ちされるという現実。
その中で彼女が取ったひとつひとつの行動は見る価値がある一本です。
これは、実際にメリー・コルヴィンの死を伝える当時のCNNニュース(YouTube参照)です。
戦場記者のし烈さ ★★★★★
戦場記者のストレス ★★★★★
ロザムンド・パイクの低い声 ★★★★★
報道ニュースを見る目が変わる ★★★★★
On the Front Line: The Collected Journalism of Marie Colvin
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