フランス映画『あのこと』感想、中絶が違法時代に妊娠したアニー・エルノー原作の葛藤実話

あのこと
『あのこと』主演アナマリア・ヴァルトロメイ

今回ご紹介するのは中絶が違法だった60年代フランスで、予期せぬ妊娠をした大学生アンヌが将来のために葛藤する映画『あのこと』です。

フランスを代表する作家※アニー・エルノーが若き日の実体験を基にして描いた短編小説※「事件」を映画化した本作。

映画を観た原作者はオードレイ・ディヴァン監督に対し、「あなたは真実の映画を作った。」と原作者に起きた残酷な現実の全てを忠実かつ正確に描いたと評価しています。

第78回ヴェネチア国際映画祭で最高賞の「金獅子賞」に輝き、世界の映画賞を席巻した『あのこと』の感想と見どころを解説していきます。

(冒頭画像:引用https://gaga.ne.jp/anokoto/about/)

映画『あのこと』:作品概要

映画タイトル『あのこと』
原題L’evenement
監督・脚本オードレイ・ディヴァン
出演アナマリア・ヴァルトロメイ、ケイシー・モッテ・クライン、
ルアナ・バイラミ他
公開日・上映時間2022年(1時間40分) 【YouTube:予告編】

監督・脚本:オードレイ・ディヴァン

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https://twitter.com/anokoto_movie/

監督を務めるのは、『ナチス第三の男』『バック・ノール』などの脚本を手掛けたオードレイ・ディヴァン

本作は2019年監督デビュー作以来、2作目の長編映画です。

女優レア・セドゥを主演とした新作『エマニエル/Emmanuelle』(原題)では監督・脚本を担当すると発表されています。

主演女優:アナマリア・ヴァルトロメイ

アナマリア・ヴァルトロメイ
https://twitter.com/anokoto_movie/

主演女優は、『5月の花嫁学校』(20)、『ジャスト・キッズ』(19)などに出演したアナマリア・ヴァルトロメイ

本作ではセザール賞最優秀新人女優賞ルミエール賞、ベルリン国際映画祭ではシューティング・スター賞を受賞と、今後が期待される若手女優の1人です。

『あのこと』:あらすじ

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1960年代、中絶が違法だったフランス。

卒業間際の優秀な大学生アンヌは、大切な試験を前に妊娠が発覚してしまします。

未来を約束する学位の取得と自らが願う未来のために今は産めない。

決断に迫られ、もがき苦しむアンヌの壮絶な12週間を<体験する>……。

『あのこと』:感想と見どころ

全体感想

妊婦に産まない自由がなかった時代の、女性の激しい怒りが秘められた映画です。

中絶の相談をすると、「妊娠しているならリスクはない」言い寄ってくる男。

保身のため、なにもしてくれない医師。

この時代は中絶しようとする本人のみならず、その行為に加担した人も罰せられます。

刻一刻と時が過ぎる中、頼る相手も中々見つからず孤立していくアンヌの怒りと葛藤に感情が大きく揺さぶられます。

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アンヌを体験する、衝撃の映画体験

観る側に衝撃的な印象を与えたのは、主人公と同化するかのようなカメラワークでしょう。

オードレイ・ディヴァン監督は、「カメラはアンヌ自身になるべきで、アンヌを見ている存在であってはならない」と。

そのために何度もリハーサルを行い、カメラワークにこだわりぬいたそうです。

アンヌが自己流の中絶法を試しているところは、局部が映っていないにも関わらず、強い緊迫感と痛々しい体験を観客に与えます。

それこそがこの映画が世界で絶賛される点の1つです。

アンヌ役のアナマリアに向けてオードレイ監督は、「アンヌは戦争に向かう兵士だ」という言葉を繰り返しかけたそうです。

そんな監督の要望を理解し演じきったアナマリアの演技はまさに戦う兵士そのものです。

途中で見方を失い倒れても、立ち上がり強い意志の元戦い続ける。

そんなアンヌの迫真迫る演技に目が離せません。

フランス社会における中絶

中絶が法で禁じられていたということに衝撃を受けている人は多いのではないでしょうか。

フランスでの人工中絶は1810年から刑法で犯罪、加えて1920年からは避妊具の販売も違法でした。

1920年の法律ができた背景には第一次世界大戦(1914-1918)があります。

多くの戦死者が出たフランスは人口を増やさねばならず、1920年に避妊具の販売禁止に加え、避妊・中絶の情報提供すら法律で禁止されるようになりました。

アンヌはおめかしをしてクラブに行くような普通の大学生です。

そんな彼女が避妊具も買えない、中絶は違法という世の中で、恋愛と将来の夢を両立することは難しはず。

女性が夢を叶えるには社会の制度が整っていない時代が約60年間に実際にありました。

まとめ

あのこと
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この映画はそんな肩身の狭かった女性の怒りを赤裸々に描いています。

観た人は原作者アニー・エルノーの秘められた怒りと想いをきっと感じるはずです。

物語を観るだけに収まらない、体験する映画をぜひご覧ください!

また、こちらは2023年5月10日にDVDがリリースされるそうですので要チェックです!

■『あのこと』アニー・エルノー原作本「事件」と著者の紹介【管理人・編】

嫉妬/事件 (ハヤカワepi文庫 )

「事件」1963年、中絶が違法だった時代のフランスで、妊娠してしまったものの、赤ん坊を堕ろして学業を続けたい大学生の苦悩と葛藤、闇で行われていた危険な堕胎の実態を克明に描く。(2作品を収録)

著者:アニー・エルノー

1940年、フランス北部ノルマンディー地方のリルボンヌ生まれ。父を語った自伝的な第4作『場所』1984年度のルノードー賞を受賞。つづく第5作『ある女』では母を語り、『シンプルな情熱』では一転して自己の性愛体験を語って大反響を呼んだ。(中略)2008年に発表したLes annéesでマルグリット・デュラス賞を受賞した。現在も執筆活動を精力的に続けており、2022年にはLe jeune hommeを上梓。2022年にノーベル文学賞を受賞した。【引用:Amazon】

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