フランス映画の名匠アルノー・デプレシャンの人間ドラマ傑作選、クライムからロマンスまで

アルノー・デプレシャン
アルノー・デプレシャン監督

アルノー・デプレシャン(Arnaud Desplechin)

アルノー・デプレシャンはフランスのルーベ出身の映画監督・脚本家です。

パリの“IDHEC(高等映画学院)”にて映画を学びました。

(現在の名称は“La Fémis(国立高等映像音響芸術学校)”で、同校の出身者は『Summer of 85』(20)や2023年2月3日に日本での劇場公開を控える『すべてうまくいきますように』(23年2月3日・日本公開)のフランソワ・オゾンなど)

『キングス&クイーン』(04)はルイ・デリュック賞を受賞、『あの頃エッフェル塔の下で』(15)はセザール賞リュミエール賞・監督賞を受賞、その他多くの作品がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されています。

映画祭などを通してこれまで幾度も来日したこともあり、日本に親しみを持っているようです。

今回はそんなアルノー・デプレシャンの作品の中から、味わい深い人間ドラマを描いた2作品、『ダブル・サスペクツ』『レア・セドゥのいつわり』(劇場未公開映画)を紹介しましょう。

(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/profile.php?id=100078017690898)

『ダブル・サスペクツ』(19)クライム、ミステリー/ドラマ

※原題『Roubaix, une lumière』(Roubaix:ルーベ(地名)、une lumière:光、灯り)

ダブル・サスペクツ
https://le-pacte.com/france/film/roubaix-une-lumiere

あらすじ

フランス北部の街ルーベ。

ベルギーとの国境に隣接するルーベは、多民族が暮らし犯罪が絶えず起こるフランスで最も貧しい街です。

中東出身のダウード署長率いるルーベ警察は、日々発生する街の様々な事件の収拾に尽力しています。

そんなルーベでクリスマスの夜に放火事件が発生。

目撃者である女性クロード(レア・セドゥ)にたどり着いたものの、クロード、そして彼女と同棲する女性マリー(サラ・フォレスティエ)の曖昧な証言で、放火事件は解決の兆しが見えずにいました。

そんな中、クロードの通報により老女の遺体が発見されます。

ルーベ警察は2つの事件に関係を持った彼女たちに捜査の目を向けることになります。

監督自身の出身地を舞台にした刑事ドラマ

ダブルサスペクツ
左:マリー(サラ・フォレスティエ)右:クロード(レア・セドゥ)https://le-pacte.com/france/film/roubaix-une-lumiere

作品の舞台ルーベは、アルノー・デプレシャンの出身地です。

フランスと言えば、パリ、芸術、建築、ファッション・・・。

オシャレで明るいイメージが真っ先に浮かびやすいですが、移民問題、テロ被害、学校におけるスカーフ問題など、暗いニュースもよく耳にします。

なかでもルーベはフランスの抱える問題を認識しやすい街であることが予想できます。

会話や、人物、街の描かれ方からルーベがどういった街か、住民はどんな生活をしているのか、生きていく中でどんな事に直面するのかを思い浮かばせてくれることでしょう。

サヤヲ的見解ですが、アルノー・デプレシャンは社会問題を作品として提起するのではなく、作中で日常的に、当然在るものとして描いているように感じます。

これまで名を挙げた社会問題の他にも、作品に忍ばせたであろう物事が見て取れるかもしれません。

しかし、それらの物事に対して明確な主張をしない表現によって純粋に楽しませてくれます。


 ダブル・サスペクツ(作品情報)

『レア・セドゥのいつわり』(21)ロマンス、エロティック/ドラマ

原題:『Tromperi』(欺瞞‐人の目をごまかし欺く)

レア・セドゥのいつわり
https://le-pacte.com/france/film/tromperie

あらすじ

1987年、ロンドンに住むユダヤ系アメリカ人の小説家フィリップ。

彼の仕事場を幾度と訪れる女。

人生、夫婦の関係、宗教など様々なことを会話し、体を重ね、女は帰っていきます。

フィリップはいつか発表する作品のため、会話をノートに書き留めます。

ノートにはNYで入院している女、チェコから亡命した女、教え子の女など様々な女との会話調のメモが書かれています。

はたして、彼女たちは実在するフィリップの愛人だったのか、著者の想像上の人物だったのか…。

男女の背徳な会話を映像化

レア・セドゥのいつわり
https://le-pacte.com/france/film/tromperie

本作は、アメリカの現代小説家フィリップ・ロス(Philip Roth)の小説「Deception(いつわり)」(1990)を基にした映画です。

この小説は著者と同名の人物が登場する作品群の一つです。

●フィリップ・ロス(Philip Roth)

誕生日:1933年3月19日

没年:2018年5月22日

出身:アメリカ・ニュージャージー州

▶フィリップ・ロスの著書一覧

▶おすすめの著書(同名人物の登場)


原作:いつわり(フィリップ・ロス著)


父の遺産(単行本)

原作に倣い物語はほぼフィリップと女たちの会話です。

フィリップは質問を投げて耳を傾け、女たちはそれに答える、ここだけ聞くと展開がなく平凡でつまらないのでないか…と思ってしまうかもしれませんが決してそんなことはありません。

扇情的な男女の会話と官能的なシーンで描かれるフィリップの背徳的な恋愛は、覗き見しているような興奮を感じるられるかもしれません。

そして、オーディエンスもフィリップのように“言葉の快感”を得ることができる作品でしょう。

レア・セドゥのいつわり
https://www.amazon.co.jp/

レア・セドゥのいつわり(作品情報)

両作に出演!今や引っ張りだこ、名女優レア・セドゥ

レア・セドゥ
『ダブル・サスペクツ』https://le-pacte.com/france/film/roubaix-une-lumiere
レア・セドゥのいつわり
『レア・セドゥのいつわり』https://le-pacte.com/france/film/tromperie

『ダブル・サスペクツ』におけるレア・セドゥ演じるクロードは地の美しさがありながらも化粧気はなく、タバコを吸って溜息を吐き、疲れている様子の女性です。

服装は古着の男性服のようなジャージや、トレンド感のない適当なスタイルが見られます。

対して、『レア・セドゥのいつわり』におけるレア・セドゥは非常に魅力的な女性です。

知的でセクシー、堂々とした凛々しさと危うさを併せ持っていて、服装はシーンごとに目新しさがあるものの着回し術が見られます。

また、季節感のある服装でフィリップと共に過ごした期間も見て取ることができます。

●レア・セドゥ(Léa Seydoux)

 

誕生日: 1985年7月1日生まれ

星座:かに座

身長:168㎝

出身:フランス・パリ

CMブランド:ルイ・ヴィトン(バッグ、フレグランス等)

▶レア・セドゥの出演映画一覧

▶レア・セドゥのおすすめ代表作


007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(作品情報)

007 スペクター (予告編:Amazon)(映画ポスター:楽天)

※2作連続でボンド・ウーマンで登場は快挙!


美女と野獣(予告編) 

■サイト内:「レア・セドゥ」

さいごに:ライターコメント(by サヤヲ)

レア・セドゥのいつわり
『レア・セドゥのいつわり』https://le-pacte.com/france/film/tromperie

今回はアルノー・デプレシャンの新作を2つ紹介しましたが、前作の『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』(15)、『クリスマス・ストーリー』(10)など素晴らしい作品ばかりです。

私は毎度彼の映画の登場人物たちを好きになってしまいます。

アルノー・デプレシャンの作品からフランス映画らしさというものを感じられるのではないでしょうか。

●アルノー・デプルシャン(Arnaud Desplechin)

アルノー・デプレシャン
https://japan.unifrance.org/

誕生日:1960年10月31日生まれ

星座:さそり座

出身:フランス

▶アルノー・デプルシャンの監督作品一覧

▶おすすめの代表作品


ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して(DVD)


クリスマス・ストーリー(作品情報)

《ライター:サヤヲ》 クリックで担当記事一覧へ→

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ミステリー小説とカレー、そして猫を愛するサヤヲといいます。
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