世の中には同性・異性問わず、人を惹きつけるような不思議な魅力を持つ人がいます。
そんな人を目にして、目が離せなくなった経験はありませんか?
それはまるで引力のようなもので、どうしたって抗うことはできません。
そして、そんな一瞬の記憶を思い出すことができるのが、今回ご紹介していく『キャロル』という映画です。
今作が持つ魅力、そして、その魅力の素とも言える世界観を、この記事でたっぷり見ていきましょう。
映画『キャロル』:作品概要
映画『キャロル』は、2015年に公開された恋愛映画です。
監督はトッド・ヘインズ。
主演は、多くの主演作品を持つ大女優ケイト・ブランシェットと、『ドラゴン・タトゥーの女』などで知られるルーニー・マーラの2人が務めています。
同性愛をテーマにした今作ですが、ありがちな「問題提起」や「センセーショナルさ」は感じられません。
主人公2人の恋愛があくまでも自然に、葛藤を交えながらも、「あるべきこと」のように描かれているからです。
この空気感は、他の作品にはない今作の大きな特徴となっています。
●ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)
誕生日:1969年5月14日生まれ
星座:おうし座
身長:174㎝
出身:オーストラリア
▶おすすめの代表作品
※パトリシア・ハイスミス原作。セリフより、主演二人の表情が物語を進めていきます。
あらすじ:気品と優雅さ、美女キャロルとの出会い
1950年代のアメリカ。
テレーズ(ルーニー・マーラ)は写真家を目指しながら、デパートで働く女性です。
ある日仕事をしていたテレーズは、1人の気品に満ちた美しい女性から目を離せなくなってしまいます。
その女性の名前はキャロル(ケイト・ブランシェット)。
娘のためのクリスマスプレゼントを買いに来ていたのでした。
テレーズがキャロルの忘れ物を届けたことをきっかけに、2人の距離は縮まっていきました。
親密な付き合いを重ねるうちに、テレーズはキャロルが離婚や親権の問題を抱えていることを知ります。
そんな中、テレーズはキャロルから旅行に誘われ、一緒にでかけることになります。
●ルーニー・マーラ(Rooney Mara)
誕生日:1985年4月17日生まれ
星座:おひつじ座
身長:160㎝
出身:アメリカ・ニューヨーク州
▶おすすめの代表作品
※切なさがほとばしる表情が、とってもかわいい演技派女優の代表!
大女優二人が紡ぐ、繊細な恋愛物語
一目見た瞬間から目を離すことができず、じっと見つめてしまう。
その人が目の前から去った後も、何度も思い返してしまう。
おそらく多くの人が、こうした経験をしたことがあると思います。
映画『キャロル』の冒頭では、テレーズがキャロルから目を離せなくなる、というシーンが描かれています。
凛とした立ち姿に、きちんと手入れされた金色の髪。
大人の女性としての美しさに、洗練された仕草。
テレーズで無くとも、キャロルに見惚れてしまう女性は多いことでしょう。
そしてテレーズは、まだ少女の面影を残す、物静かで知的な女性です。
この2人が紡ぐ恋愛模様は、どこまでも繊細です。
少し触れたら今にも壊れてしまいそうな、ボタンの掛け違いが一つでもあれば、何もかもが台無しになってしまいそうな、そんな雰囲気を放っているのです。
2人の持つ美しさの違い。
テレーズとキャロルの関係性。
テレーズの若さと、「強い女性」に見えるキャロルの弱さ。
こうした要因が合わさることで、ガラス細工のような恋愛物語が創り上げられているのです。
『キャロル』で描かれる、50年代価値観が与える「難しさ」
今作『キャロル』は、同性愛をごく自然に描いています。
しかし同時に、キャロルは作中で50年代の価値観に苦しめられてもいます。
キャロルの弱さの原因ともなる「価値観による難しさ」を、ここで見ていきましょう。
同性愛について
キャロルは夫と子供を持ちながらも、テレーズ以前にも女性と交際したことのある同性愛者です。
キャロルは、同性愛者である自身に対し、マイナスな感情を抱いていません。
しかし50年代という時代柄、周囲の人間はキャロルに対し複雑な感情を抱いています。
夫のハージが、その代表格と言えるでしょう。
ハージは妻の一面を受け入れることができません(結婚しているから……と考えることもできますが)。
しかし、彼女を手放すこともできません。
ハージにとってキャロルは魅力的な女性であり、未練があると共に、トロフィーワイフ的な役割を期待しているからです。
だからこそ無理やりにでも、キャロルの性的指向をコントロールしようとするのでしょう。
また、ハージの両親の「同性愛が病気(意訳)」というセリフからも、当時の同性愛についての認識を知ることができます。
同性愛に強い偏見があった50年代のアメリカ。
その状態で自己を貫きとおすのは、至難の技なのです。
「母」という存在について
キャロルは「女性を愛する自分」を大切にすると同時に、自分の娘を心から愛しています。
しかし、「母」という立場はキャロルを苦しめてもいます。
作中当時の世間では、「母」が女性と恋愛をするなど、勿論ご法度。
同性愛が病気と言われるのですから、治療がうまくいかなければ親権を奪われても仕方がないのです。
それでも、キャロルは「母としての自分」と「女性としての自分」を両立させようともがきます。
その葛藤こそが、キャロルが持つ弱さなのでしょう。
《原作者の紹介》(管理人編)
●パトリシア・ハイスミス(Patricia Highsmith)
誕生日: 1921年1月19日生まれ(1995年2月4日没)
出身:アメリカ・テキサス州
▶原作タイトル:「キャロル」
▶パトリシア・ハイスミス:著書の一覧
1945年に「ヒロイン」が雑誌掲載され作家デビュー。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。サスペンスの巨匠として多くの作品を発表。生涯の大半をヨーロッパで過ごした。【引用:楽天ブックス】
まとめ~LGBTテーマ作品に触れるきっかけに~
映画『キャロル』は、シーンの一つ一つが美しい作品です。
また、キスシーンやベッドシーンなどの描写はあるものの、いやらしさや下品さなどはかけらもなく、まるで芸術作品を見ているかのような感覚に陥ります。
同性愛は、苦手な人がいることは確かでしょう。
しかし、少しでも今作に興味が湧いたならば、観賞してみてください。
むしろ、LGBTをテーマとする作品に触れるきっかけとしてもおすすめできる作品です。
《ライター:オオノギガリ》 担当記事一覧はこちらから→
洋画が大好きwebライター。王道の物語も大好きですが、少し捻った作品を偏愛しています。大好きな映画監督はクリストファー・ノーランとクリント・イーストウッド。
主に映画内容の考察を得意としており、魅力に溢れながらも「わかりにくい映画」を最後まで楽しめるお手伝いができればと考えております。
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