北欧ホラー『ハッチング – 孵化 -』異常な家族の姿!母親などのファッション演出を解説

ハッチング
北欧ホラー『ハッチング -孵化-』

オープニングからイヤな予感しかない、不穏な映画

本作が長編デビュー作となる女性監督ハンナ・ベルイホルムが、独自の感性を存分に発揮している北欧ホラー『ハッチン 孵化 -』をご紹介します。

(2022年4月公開)

あらすじとともに、この作品が放つ不穏な雰囲気作りにひと役買っている(⁈)母親、そして登場人物のファッション演出を独自に解説。

ぜひ、最後までお読み下さい。

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https://www.facebook.com/Pahanhautoja/ 【YouTube:予告編】

あー、いやだ・・・

始まってすぐ不安になって、途中でうわぁ・・・てなって、終わりでひーっ!となる。

ひと言でいえば、終始気持ちがざわざわしっぱなしにさせられる、そんな映画です。

暗くてジメッとした水分多めのホラー映画とはちょっと違う、絵本の中のような可愛さとホラーが混ざりあった世界感が90分間にぎゅっと詰まっています。

あらすじ:「完璧な家族と幸せなわたし」を見て!

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庭にはピンクのバラが咲いていて、白くて高い天井。

洒落たインテリアがセンスよく配置されているそのステキなお家には、4人の幸せそうな家族が暮らしています。

いつも笑顔で優しいパパ

いつも明るくてキレイなママ

体操選手を目指す素直でいい子な娘「ティンヤ」

怖いもの知らずで元気な息子(ティンヤの弟)。

そんな絵に書いたような幸せいっぱいの家族の笑顔が、スマホのカメラに写るところから本作は始まります。

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「完璧な家族と幸せなわたし」をみんなに見てほしくて仕方のないママは、SNSへの動画投稿に余念がありません。

随所でスマホのカメラは自分や家族に向けられ、幸せな日常を投稿しています。

いつものように動画を撮影していたある日、窓から一羽のカラスが部屋に飛び込んできます。

部屋中を飛び回り花瓶を倒し部屋は大荒れ。

やっと捕まえたカラスを手にしたママは躊躇なくボキッ・・・。

それをティンヤに手渡し、いつもと何も変わらない笑顔で「生ゴミね」と言い放つのです。

体操選手をめざす娘、「ティンヤ」に注がれる愛情

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左:テンヤ(シーリ・ソラリンナ)右:ママ(ソフィア・ヘイッキラ)https://gaga.ne.jp/hatching/

そんな残酷な一面も覗かせるママですが、娘ティンヤへは特に愛情をたっぷりと注いでいます。

ですが、その愛情はちょっと異常。

娘が自分を幸せにしてくれると思っている、いわゆる毒親と言ってもいいかもしれません。

そして、なんと自分に素直すぎて浮気もしちゃうママ!

「ママ、恋してるの!浮気相手の家に泊まりに行くわ〜」と、パパ公認。

しかも、娘ティンヤも一緒なのです。

浮気宣言をされたパパは、「ママは個性的だ」と許してしまいます。

パパがティンヤに見せた寂しそうな顔に、ちょっと心がきゅっとなった・・・

と思ったら、「あれー!帰ってくるの早かったねー!」と、浮気相手の家から帰ってきたママとティンヤを満面の笑みで迎えるパパ。

歪んだ愛情?「ティンヤ」の中に育つ黒い感情

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なんなの・・・この家族、ヘン。

そんな歪んだ愛情を受けて育ったティンヤは、すごく真面目でいい子。

ママの期待に応えたくて、友達と遊ぶこともなく体操の練習を毎日頑張ります。

でも、確実に黒い感情はティンヤの心の中に育っていくのです。

生ゴミとして処分したはずのカラスを森で見つけたティンヤは、その側にあった卵を家に持って帰ります。

最初は普通の大きさの卵でしたが、ティンヤの黒い感情を栄養にしているかのようにどんどん卵は大きくなっていきます。

「アッリ(水鳥)」と名付けた卵、内緒で育てるティンヤ

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そして、ついに卵が孵化しヒナが生まれるのですが、人間ほどの大きさでお世辞にも可愛らしいとは言い難い姿。

ですがティンヤは「アッリ(水鳥)」と名付け、家族には内緒で育てることにするのです。

そう、ヒナは育つもの。

アッリはどのような姿に成長するのでしょうか?

そしてアッリによってティンヤ一家はどうなっていくのでしょうか?

美術・デザイン・建築を学んだ監督、光る感性と演出!

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ハンナ・ベルイホルム監督 https://www.facebook.com/Pahanhautoja

ファッション解説:一貫した淡い色の洋服

さて、ここからは今作の登場人物のファッションについて解説したいと思います!

女性監督ならではでしょうか、怖さと同時にインテリアやファッションも楽しめる映画でもあります。

清潔感のあるインテリアや暖かみのある照明のなかで膨らんでいく黒い感情のアンバランス感がたまりません!

この家族の異常さはファッションにもよく表れています。

一貫してティンヤ一家は、淡い色の洋服を着用しています。

母親が完璧さを演出するために選んだんだろうと思われますが・・・

ブルー、ピンク、ホワイト、ベージュなど、知的さ、優しさ、清潔さ、親しみやすさなどを表す色を多用。

加えてフリル、レース、花柄などの上品なデザイン性も欠かしません。

あえて違和感を感じさせる?一家のファッション

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それに比べて、隣に越してきたティンヤと同年代で同じ体操選手の少女(画像右)は、イエロー、オレンジ、ブラウン、ブラックなどの洋服を着ています。

すごく現実味があって、彼女を見るとほっとするのです。

この対比が、ティンヤ一家の裕福さや幸福さを表していると同時に、その中にある異常さというか、作られた感のような妙な違和感を感じさせる演出になっています。

母親のファッション、不穏な気持ちになる一因⁈

【Instagram:pahanhautoja】 

特に母親のファッションは、キャラクター性をよく捉えていると思います。

上品で少しセクシーさもあるファッション。

でもなぜか似合っていない・・しっくりこない。

外見のイメージに似合っていると、人は「似合う」と感じます。

そう、母親の外見イメージと着ている洋服が一致していないのです。

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顔の縦幅が長く輪郭にはあまり丸みを感じません。

直線を多く感じる顔でとても大人っぽい外見をしています。

外見イメージに反して、大きなフリルのついたフェミニンなワンピースを着たり、娘のティンヤと同じかそれより短い丈のスカートを履いていることが多い印象です。

短いというのは「幼さ」に繋がるので、「大人」とは相反するものです。

でもこのアンバランスさが、いつまでも恋していたい気持ちや幸せをアピールしたいという自己顕示欲の強さと、上辺だけの完璧な家族という嘘っぽさをより感じさせられます。

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反対に、こちらのワイドパンツ姿はとても似合っていました。

ワイドパンツは大人度が高く直線の多い洋服なので、同じように直線を多く感じるお顔と馴染んでとってもよく似合っています。

ブラウスには大きなリボンがついていてドット柄でフェミニンさが強いのですが、柄が大きめで透け感のある素材とワイドパンツが相殺されてフェミニン感が程よく抑えられています。

男性は父親のファッションをぜひ参考に!

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ちょっとだけ父親のファッションも見てみましょう。

顔全体に丸みがあって口が大きめで、目に優しさを感じる父親です。

丸いメガネと淡いピンクのシャツ、編み目の大きいセーターがとても良く似合っています。

顔に曲線が多い、優しそう、若く見られることが多いなどの特徴がある場合は、洋服にも同じように柔らかさを感じるものを選ぶととても似合いますよ。

無理にスタイリッシュに大人っぽくしないことがコツです!

ハンナ監督はあえて母親だけ狙って違和感を浮き立たせるコーディネートにしたのかなぁ、なんて気になっちゃいました。

まとめ

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ホラー映画らしく、劇場内が「うわ・・・」と一体になる感じもぜひ楽しんでほしい作品です(笑)。

本当の主役はティンヤなのか、アッリなのか、母親なのか。

その答えはラストに用意されているのかもしれません。

参考記事:『ミッドサマー』は明るすぎる新感覚ホラー、好き嫌いが分かれる理由

一方で、注目してほしいのがキャストたちのファッション!

解説はいかがでしたでしょうか?

洋服にも注目して見ると、また違った視点で映画を楽しめるのではないかなと思います。

そして、1,200人のオーディションから選ばれたティンヤ役のシーリ・ソラリンナにも注目です!

繊細さと狂気の両面から見事にティンヤを演じていて、これから先が楽しみな女優さんです。

《ライター:咲里》

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