「女と男の曖昧な関係」が楽しめる3つの映画、結論のない微妙で曖昧な距離感が面白い!

女と男のあいまいな関係
幸せに鈍感?さみしさに敏感なだけ…

「曖昧(あいまい)」とは、「態度や物事がはっきりしないこと。また、そのさま。あやふや。」とあります。(小学館・デジタル大辞泉)

さらにインターネット検索をすすめ、「曖昧な関係」となると辞書的な意味より一気に「怪しさ」が強調されるのはどうしたものでしょう。

しかも、それは「男女の関係」を示すものが多いのは不思議なものです。

そもそも、女と男の関係は曖昧なものなのかも。

その結果として、詩を書き絵が生まれ、歌を歌い小説ができたと言ったら言い過ぎでしょうか。

もちろん、映画も然りです。

たくさんある映画の中から、女と男の微妙で曖昧な距離を描いた、3つの映画を紹介しましょう。

  • 『テイク・ディス・ワルツ』
  • 『女と男の観覧車』
  • 『あの人はまだ帰ってこない』

『テイク・ディス・ワルツ』、つかず離れずの関係?

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『テイク・ディス・ワルツ』というタイトルからして、軽やかな「ラブ・ロナンス」と言いたいたいところですが、なかなかどうして。

登場する夫婦ともう一人の男の関係は一体どうしたものでしょう。

まるで、つかず離れず、ワルツを踊るようなストーリーです。

主人公は、フリーライターのマーゴ(ミシェル・ウィリアムズ)。その夫に料理本作家のルー(セス・ローゲン)

結婚して5年目の、とても仲の良い夫婦…のはず。

愛し合い、お互いの仕事を尊重し合いながら暮らしているようです。

女と男二人の、微妙な距離感

物語は、マーゴが仕事で行った旅先で、ダニエル(ルーク・カービー)という男性と出会うところから始まります。

ダニエルが、自分になんとなく接近するのを多少意識しながらも、さほど気に留めなかったマーゴ。

しかし、旅先から帰ってみればダニエルは近所の住人だったところから、女と男二人との距離が「怪しく」なってきます。

近所に一人暮らしをするダニエルがいることに、あまりいい気のしないマーゴ。

ただ、朝出かけるダニエルと遭遇したり、窓から時折見える姿が気にならないと言えばウソになります。

幸せに鈍感?さみしさに敏感なだけ…

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ここまで書いてくると、物語の展開が読めてくるのではないでしょうか。

ある日、マーゴから「ちょっとした知り合い」程度にダニエルを紹介された夫ルーは、「今度一緒に食事でも」と誘うのですが、次第にお互いが気になる存在になります。

少しネタバレしますが、マーゴとルーの距離と、ダニエルとマーゴの距離が微妙に入れ変わっていくのが、ミシェル・ウィリアムズの絶妙な演技から伺えます。

しかし、それだけだと単なる不倫のプロセスを描いた映画にすぎません。

女と男の曖昧な関係が、徐々に表面化するのは映画の後半以降です。

終わりのない、ワルツが続くと…

この映画のテーマフレーズが、「しあわせに鈍感なんじゃない。さみしさに敏感なだけ」とあります。

マーゴとルーの結婚はしあわせそのもの、ただ、マーゴが時折感じる夫から放っておかれたようなさみしさ。

この行きつ戻りつが物語のテーマです。

さて、ルーへの遠慮もあり、ダニエルはマーゴへのプラトニックな気持ちを持ったまま引っ越すことを決めます。

しかし、これがルーには「きっと二人には何かあったに違いない。」という確信となり、夫婦の亀裂を決定的なものにしてしまう皮肉な結果へと。

ダニエルを追いかけ、激しいセックスシーンも飛び出し本当に愛する男性を見つけたかのように変わってしまうマーゴ。

しかし、映画はこれだけでは終わりません。

エンディングでは、宙ぶらりんになっていく女がいるのでした。

最近のミシェル・ウィリアムズ出演映画

『女と男の観覧車』、厚かましいのは女?男?

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『女と男の観覧車』の原題は、『Wonder Wheel』

アメリカの伝統的遊園地コニーアイランドが舞台で、そこの名物観覧車の名前が「Wonder Wheel」。

主人公のアラフォー女性ジーン(ケイト・ウィンスレット)は、遊園地内で夫と一緒に住み込みで働く従業員。

かつては、女優までやっていたジーン。

華やかだった頃を懐かしみながらも、再婚したガサツな夫と放火癖のある連れ子の面倒で、ストレスを溜め込む毎日でした。

そんなジーンに、さらに憂鬱なタネが舞い込みます。

夫の前妻の子供キャロライン(ジュノー・テンプル)が、突然、嫁ぎ先から出戻ってきたのです。

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ストレス満載のジーンに、声をかけた男

夫から一緒に住まわせてやってくれとムリムリ頼まれ、ジーンは渋々承知をすることに。

しかし、家事を手伝う気などさらさらないノーテンキなキャロライン。

彼女とは衝突ばかりで、ジーンの止めていたお酒が一気に復活してしまいます。

ますますストレスのたまるジーン…。

しかし、ある日のこと、遊園地のビーチを茫然と歩いていた彼女に声をかける若い男がいました。

よくできた邦題です。『女と男の観覧車』は、まさに少しづつ回り始めたのです。

ゆっくり回転し出した、女と男の観覧車

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声をかけた男は、ビーチで監視員の仕事をするミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)

何度か出会い話すうちに、ジーンを気に入ったミッキーは遊び半分でデートに誘います。

ジーンも、若い男性からの誘いに応じ、いつしか女と男の関係になっていきます。

夢中になったのはジーンの方。

もちろん夫には内緒で、憂鬱だったジーンの日々に明るさが戻ったのは言うまでもありません。

しかし、それも束の間。なんと、ライバルが身近なところから現れるのです。

ウッディアレン監督の、シャレた構成に注目

さてこの映画、前段の『テイク・ディス・ワルツ』とはまた違い、クライマックスではあやふやで頼りなげな女と男の関係が描かれていきます。

ウッディアレン監督の洒脱な構成と、ケイト・ウィンスレットの抜群の演技力に注目)

同居し始めたキャロラインですが、義母になるジーンをいつしか慕うようになります。

そして、なんとジーンにこんな相談をしたのです。

「とっても素敵な男性と巡り合った…気持ちを伝えたいのだが相談に乗ってほしい…

悲しくて、やがて面白い関係とは?

ジーンが身を乗り出し、どんな人?誰?と尋ねた時、キャロラインの答えに唖然とせざるを得ませんでした。

「ビーチの監視員?」

ミッキーはあっさりと、ジーンからキャロラインに乗り換えていたのです。

出戻りとはいえ、まだ前夫と清算できていないキャロラインのなんとも厚かましい相談!

一方、不倫を承知の火遊びのくせに、キャロラインなんかにミッキーを取られたくない一心で取ったジーンの行動!

女と男の、かくも悲しくてやがて面白い結末を、ぜひ映画で見届けて下さい。

【YouTube:予告編】

『あなたはまだ帰ってこない』、男を待ち続けた女

3つ目の傑作は、フランス映画『あなたはまだ帰ってこない』です。

フランス人小説家マルグリット・デュラスの自伝的小説「苦悩」が原作。

(映画『愛人/ラマン』の原作者としても有名)

邦題はちょっと情緒的ですが、内容はまさに「苦悩」に満ち満ちたものとなっています。

前述の2作品同様、女と男の関係を扱っていますが、趣は全然異なり、前2作が多少コミカルに描かれているのに対して、こちらはシリアスそのもの。

映画の時代背景を知れば、すぐにわかってもらえるのではないでしょうか。

ナチスドイツ占領下、フランス・パリ

舞台は第二次世界大戦末期、ドイツの占領下にあったフランス・パリ。

原作者である主人公マルグリット・デュラス(メラニー・ティエリー)は、レジスタンス(抵抗運動)の運動員だった夫ロベールが逮捕され、ドイツに移送されます。

生きて戻れないことが想像される中、レジスタンス仲間から寄せられる情報を頼りにマルグリットは夫の消息を待ち続けます。

そんな時、ゲシュタポ(ドイツ秘密警察)の手先なったフランス人ラビエが彼女の前に現れ、ロベールを逮捕したのは自分だと言うのです。

そして、ロベールに関する情報をマルグリットに小出しに流し、マルグリットとの接触を試みるのでした。

しかも不思議なことに、ラビエは作家としてのマルグリットに興味を示すのです。

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緊迫する環境、マルグリットをめぐる男たち

いったい、ラビエの目的は何?

マルグリットへの愛?単なるファン?あるいは、レジスタンスたちの情報収集?

いずれにせよ、ラビエがもたらす情報は夫の安否が確認できる唯一の手段。

用心しながらも、マルグリットはまるで恋人同士のように密会を続けていくのでした。

もちろん、レジスタンスの仲間たちはマルグリットがゲシュタポの手先と会うことに気が気でありません。

特に、マルグリットと愛人関係にある同志ディオニスは、嫉妬と疑惑が入り混じった思いで彼女の動きを監視するのでした。

マルグリットをめぐる男たち。

消息不明の夫、情報源の男、同志でもある愛人とのそれぞれの関係が、ジリジリとした緊迫の中で交錯していきます。

突然やってきた朗報?に泣き崩れる…

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そんな中、占領下のパリ市民たちを期待させる噂が届きます。

連合軍がパリを解放、ドイツの降伏も近いという情報です。

「夫が帰ってくる!」と、マルグリットは胸の高ぶりを抑えることができません。

そうなれば、不可解で執拗なラビエとも、もう会わなくて済むのです。

しかし、ある日ディオニスがもたらした、夫に関する情報に愕然とします。

重度の疫病に感染し、生死不明の状態だというのです。

待ち続けられた方が、幸せだった?

さて、少しネタバレを含みます。

毎日の日課が、夫の消息を調べることに費やしてきたマルグリットが、ついに迎える感動の再会場面は決して期待を裏切ることはありません。

しかし、それがどれだけ素晴らしい愛であったとしても、夫自体の変化はどうだったのでしょう?

「これが、あれだけ待った『あなた』なの?」、とマルグリットが感じたかどうかはわかりません。

まさか、ずっと待ち続けていた時の方が幸せだったの?

いかに女と男の関係が移ろいやすく、あやふやで曖昧なのかを問われているように思える作品でした。

まとめ~エンディングのない女と男の関係~

さて、「女と男の曖昧な関係」を描いた映画を3作紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

それぞれ、観る人により違った思いを持たれるかもしれません。

ここで、あえて映画の共通点を探してみました。

それは、「エンディングしないこと」

映画は、約2時間後には終了します。

どの映画も強い余韻をもたらしてくれますが、「女と男の関係」に明確な結論を出したわけではありません。

逆にいえば、所詮、押し付けるようなエンディングなどまったく不要なテーマなのではないでしょうか?

ぜひ、実際にご覧になって確かめて下さい。

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