人生とは何か、どう生きていけばいいのか、答えの無い問いに行き詰りそうな時にも映画は私たちの心を支えてくれます。
幸せに生きること、心に正直に生きること。
磨き抜かれた老俳優たちの卓越した表現力で、人生のヒントを与えてくれる名作たち。
日々の生活に忙殺されて大切なものを見失いそうな時こそ観たい2作品をご紹介いたします。
『ストレイト・ストーリー』、倒れた兄の元へ560キロ!
主人公は、アメリカのアイオワ州ローレンスで娘と二人暮らしをしているアルヴィン・ストレイト。
年齢は73歳。
ある日、ウィスコンシン州に住む3つ上の兄ライルが倒れたという連絡が入ります。
ずっと昔に仲違いして以来交流を経っていたアルヴィンは、兄に会いに行くことを決意します。
そうは言っても車の運転もできないアルヴィン。
しかも先日家で転倒してしまい、腰が悪くて満足には歩けない状態です。
「そんな体では絶対に無理」と娘のローズは必死に引き留めますが、頑固なアルヴィンは全く聞き入れません。
ライルの住む街までの約560キロを、なんと時速8キロのトラクターで旅すると言い張るのです。
監督:「カルトの帝王」、主演:リチャード・ファーンズワース
監督は『エレファント・マン』『マルホランド・ドライブ』などのデヴィッド・リンチ。
カルトの帝王とも呼ばれる監督の、他の作品とは一線を画す知る人ぞ知る名作です。
主演はリチャード・ファーンズワース。
映画初出演はなんと1930年代!
その後西部劇などを中心に1990年代まで活躍しました。
アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたこの作品公開の翌年2000年にこの世を去り、『ストレイト・ストーリー』は彼の最後の作品となりました。
この物語は、1994年に「ニューヨーク・タイムズ」に掲載された実話が基となっています。
古びたトラクターだけ、時速8キロのまっすぐな旅路
ヒッチハイクの家出少女、青春真っ盛りの若者グループ、中年の夫婦や、同年代の共に戦争を経験した男性…。
(途中、車で鹿を轢いてしまう女性が登場しますが、この女性のエピソードはなんだかデヴィッド・リンチらしくてにやりとしてしまいます。)
アルヴィンは道中、色々な人に出会い、交流し、ときにはトラクターの故障などのトラブルに見舞われつつも、人々に助けられそして助けて、静かにシンプルに物語は進みます。
その中でぽつぽつと語られる、家族とはどういうものか、年を取るとはどういうことか、といったアルヴィンの言葉は心に染み入ります。
ライルの家に到着したアルヴィン・ストレイト
ようやく辿り着いた目的地の玄関で「ライル!」と呼びかけるアルヴィン。
さて、果たして兄ライルには会えるのでしょうか。
そして路肩には、たった一人で旅をしてきたアルヴィンの相棒のトラクターがぽつんと停められています。
そのカットが差し込まれた刹那、この古びたトラクターには感情や意思が宿っているように見えてきます。
そう、この作品のもう一人の主役はトラクターに他なりません。
きっとこの旅はアルヴィンの人生をもう一度辿り直す旅路。
そして、時速8kmでひたむきに前に向かって歩み続けたぼろぼろのトラクターは、アルヴィンの人生そのものを具現化した存在のように思えます。
旅の最後に満点の星空の下、アルヴィンの心に浮かんだのはどんな思いだったのでしょう。
リチャード・ファーンズワースのライトブルーの瞳の美しさにも心を捉えられる珠玉の名作です。
●リチャード・ファーンズワース(Richard Farnsworth)
故人:1920年9月1日~2000年10月6日(80歳没)
出身:アメリカ・カルフォルニア州
▶おすすめの代表作品
『ジーサンズ はじめての強盗』、オスカー名俳優が3人!
次に紹介するのは、安心して充実した老後を取り戻すために銀行強盗に乗りだす老人3人組を描いたクライム・コメディ作品。
主演はモーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン。
なんと3人全員がオスカー俳優というなんとも贅沢なキャスティングです。
モーガン・フリーマン
●モーガン・フリーマン(Morgan Freeman)
誕生日:1937年6月1日生まれ
星座:ふたご座
身長:188㎝
出身:アメリカ・テネシー州
▶おすすめの代表作品
※名作中の名作。人生テーマの最高傑作です。その他『セブン』『ミリオンダラー・ベイビー』などがおすすめです。
マイケル・ケイン
●マイケル・ケイン(Michael Caine)
誕生日:1933年3月14日生まれ
星座:うお座
身長:188cm
出身:イギリス・イングランド
▶おすすめの代表作品
その他、『プレステージ』『ダークナイト』シリーズなどがおすすめです。
アラン・アーキン
●アラン・アーキン(Alan Arkin)
誕生日:1934年3月26日生まれ
星座:おひつじ座
身長:175cm
出身:アメリカ・ニューヨーク州
▶おすすめの代表作品
その他、『アルゴ』『クーパー家の晩餐会』などがおすすめです。
善良な老人が、ある日突然銀行強盗を計画!
1979年のマーティン・ブレスト監督による「お達者コメディ シルバー・ギャング」を、「WISH I WAS HERE 僕らのいる場所」のザック・ブラフ監督がリメイクした今作。
平凡な老後生活を送っていたウィリー、ジョー、アルの3人はある日、長年勤めていた会社が買収されたことで、突如経済的な窮地に立たされてしまいます。
積み立てていた年金は打ち切られ、銀行から借り入れすることもできません。
どうにもならなくなった彼らは、自分たちと家族の幸せのため老後の資金を取り戻すべく、銀行強盗という思い切った計画を決意します。
原題は『Going in style』、かっこよく行こうぜ!
邦題がなんとも残念なこちらの作品。
原題は『Going in style』で、「スタイルで行く」、つまり「かっこよく行こうぜ!」みたいな意味なのです。
それがジーサンズ、しかもはじめてのおつかいならぬはじめての強盗…。
でもぜひタイトルで敬遠せずに観て頂きたい作品です。
ひと味違う、クライム・コメディ
銀行強盗という犯罪をテーマにしながら主人公たちを応援してしまうのは、一つは真面目にこつこつと働いて積み立ててきた年金を一方的に打ち切られてしまうという理不尽さに誰もが共感するから。
そしてもう一つはこの3人の強盗計画がつっこみどころ満載だからです。
とにかく今まで悪いことなんてしたことがないものですから、知人のツテでちょいワルな若者を紹介してもらい、犯罪のイロハをレクチャーしてもらったり。
そして、予行練習として近所のスーパーで万引きしてみたりと、観ている方が「大丈夫…?」と心配になってしまうような頼りなさぶりをあの大物俳優たちが大真面目に演じているのが最高に面白いのです。
クールで熱くて渋くてキュートな3人の老紳士を愛さずにいられません。
エピローグまで目が離せない!
事件解決からしばらく経った後のエピローグも必見で、小さなどんでん返しでますますハッピーな気持ちになれます。
クライム・コメディというジャンルではあるものの、これまで真面目に生きてきたおじいさんたちが突然銀行強盗に走るなんていう設定があまりに突飛で、作戦や展開も穴だらけ。
でもそこがいいのです。
年金や老後の生き方といった誰にでも関係のある、どちらかといえば楽観視できない社会問題がテーマでありながら、ファンタジーのような突飛な発想で軽やかに笑わせてくれる絶妙なバランス感覚。
そして家族愛や友情、人と人との間で生まれる温かな絆にしんみりとさせてくれる作品です。
まとめ:人生を応援してくれる2作品
多くの人生経験を積んできた老俳優だからこそ表現できる深みを存分に堪能するのは映画の醍醐味の一つ。
人にはなかなか相談できない人生の根源的な悩みにふと立ち止まったとき、心の拠り所となるような2作品をぜひご堪能ください。
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