美少女が暗黒の世界で激しく、そして美しく戦う姿をシリアスに描いたアクション・ファンタジー映画『エンジェル ウォーズ』。
可憐な少女たちが壮絶なバトルを展開するというこの作品は、そのビジュアルイメージと難解な構成こそが魅力の物語です。
公開当時は様々な物議を醸しましたが、美しく緻密な映像表現で描かれた新たな時代潮流の変化は、現代という時代でも大きくアピールする要素を含んでいるといえます。
今回は2011年に公開されたこの作品『エンジェル ウォーズ』に描かれたその魅力の根源に迫ります。
『エンジェル ウォーズ』作品情報
とある事情で精神病院に収監された一人の少女が、自身の妄想の世界で精神病院の仲間とともに、自由を得るための戦いに挑む姿を描きます。
作品を手掛けたのは『300<スリーハンドレッド>』のザック・スナイダー監督。
広大なバトルフィールドでサムライ、悪魔などのファンタジックな要素を満載したビッグスケールの世界観が展開します。
現実と想像の世界のはざまで激しく、そして美しく戦う女性陣には、エミリー・ブラウニングら多くの美人女優が名を連ねています。
『エンジェル ウォーズ』あらすじ
1950年代。
主人公の少女は、継父の計略でレノックス精神病院に送り込まれてしまいます。
5日後にロボトミーを受けることになってしまった少女。
彼女は同じ精神病患者の仲間とともにファンタジーの世界へと飛び込みます。
異世界で「ベイビードール」と名付けられた少女。
彼女らは自身の人格破壊危機を回避するため、5つのアイテムを集める戦いへと赴き、自由への脱出を試みるのでした…。
なんといっても美女!美女!美女!の超絶バトルシーン!
精神病院に送り込まれ生命の危機に見舞われた少女が、自身の精神世界で大きな覚悟を決め、壮絶なバトルに赴く。
物語に対して単にバトルシーンだけを期待する人にとって、この難解な構成はなかなかに理解が難しい作品ですが、物語はバトルシーンの派手さだけで終わりません。
少女たちの勇気、挫折、希望といった複雑な心理が、群像劇の形でうまく組み上げられているところに、この作品が緻密な計算の元製作された痕跡が見られます。
本作が発表されたのは2011年。
近年の日本アイドルブームの火付け役となったAKB48のデビューが2005年であり、このころから徐々に「『少女』が立ち上がり、大きな声を上げる」という潮流が世に見え始めました。
これはフェミニズム文化の新たな動きとみることもできるでしょう。
この作品の大きな注目ポイントはやはり、美しいキャスト陣によるバトルシーンにあります。
全体に暗い色調で統一された作品でありますが、とにかく戦う少女たちの姿が美しい!
主人公のエミリー・ブラウニングは個性的な顔立ちである一方、本作以降の出演作には『ポンペイ』『レジェンド 狂気の美学』などのアクション/サスペンスに出演。
一方で、『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『彼女のいた日々』などのラブストーリー/ドラマ作品もあるなど、幅広い作品で主演を務めています。
『ポンペイ』では囚われの身ながら毅然とした振る舞いをする姫君の役柄を演じており、芯の強い女性のイメージを強く表すルックスであるといえるでしょう。
本作では美形ガールズ軍団のリーダーを担当。
近年の日本美少女アニメさながらの絶妙アクションを披露しています。
一方、キャスト陣にもジェナ・マローンのような生粋のアメリカ人っぽい表情の一方でヴァネッサ・ハジェンズ、ジェイミー・チャンらエキゾチックな顔立ちの美女などバラエティ溢れる美女軍団は必見であります。
エミリー・ブラウニング(Emily Jane Browning)
誕生日:1988年12月7日生まれ
星座:いて座
身長:155cm
出身:オーストラリア
▶おすすめの代表作品
『300<スリーハンドレッド>』のザック・スナイダー監督は、「女性版も…」と考え本作のアプローチを考えたといわれています。
バトルシーンに登場する女性陣には、撮影に際してのトレーニング課題として「デッドリフト(バーベルを使ったウェイトトレーニング)で95kgを持ち上げること」という目標を要求したとか。
その過酷なトレーニングを経ての映画出演だけに、どのキャストも筋金入りのバトルを披露しています。
そしてこの激熱シーンと対照的なのが、ムーランルージュを彷彿するショーの裏舞台、そして精神病院の院内に蔓延する欝々とした世界。
この世界観が少女たちの意思を通してどのようにつながるのか、そこに本作の真意が描かれています。
『AKIBA系』、『KAWAII』的表現から見える「時代的潮流の変化」
少女らのコスチュームには、誰もが思わず目を止めてしまうことでしょう。
セーラー服デザインを基調とした主人公・ベイビードールの衣装、そして彼女を取り巻く少女たちの衣装も、レザーを基調としたスタイリッシュなデザイン。
こうしたスタイルで壮絶なバトルを展開する姿は、例えば世界的な人気を誇るヘヴィメタルプロジェクト「BABYMETAL」を彷彿するという方もおられるのではないでしょうか。
またこの姿で彼女らが戦う世界にも独特の世界観があります。
第二次大戦下を思わせる戦場のシーンから、近未来を感じさせるシーン。
そして画像に注目していただきたいのですが、つい目の止まるパワードスーツも登場します。
参考記事:アクション映画女優の決めポーズ集、『ブラック・ウィドウ』から『マトリックス』まで
このデザインは大ヒットアニメ『装甲騎兵ボトムズ』に登場するロボット「アーマードトルーパー」あるいはマニアックなファンを持つホビー連載『Ma.k(マシーネンクリーガー)』に登場するパワードスーツのデザインを彷彿させます。
これらのデザインからはまさに日本の「AKIBA系」文化も強く感じられます。
さらにスチームパンクな世界観と相まって絶妙な世界観を描き出しており、マーベル/DCとは全く異なる「ヒーロー/ヒロイン」的なイメージを独自の感性で描いています。
日本のアイドル文化、「KAWAII」文化やAKIBA系といったムーブメントは、賛否はありながら世界的にも大きな影響を与えてきています。
本作ではこういった視点からも、当時の時代的に新たな思想を提唱すべくこの要素を盛り込んだものと見えるでしょう。
まとめ
映画公開当時は映画批評サイトRotten Tomatoesなどの評価サイトではかなり、残念な評価付けがされました。
作品としては「カッコいい」とみられるバトルシーン、美しさと惨めさが同居するショー舞台のシーン、そして精神病院といういたたまれない雰囲気のシーン、と全く異なる三つの世界が交差します。
当時としては複雑な構成をとったことが、作品を理解することに対して壁となったのではないかと思われます。
例えば80年代のハリウッド作品が、単一的な視点でどちらかというとポジティブなエンディングに向かいがちでした。
これに比べると、本作のように一見複雑そうに見えてしっかりと物事の真理を描き切ろうとする作品は、近年当たり前のように描かれ、作品を見た人に様々な思いを想起させる作品が多く作られるようになりました。
本作が作られた時期は、時代的には大きな不況の元凶となったリーマンショックが起こった2008年以降にあたります。
この時点から世界はモノの見方も大きく変わっていきます。
2011年に公開された本作もある意味こうした流れを踏襲して作られたと見えるところもあり、当時酷評に終わったことについてはある意味まだ時代が作品に追いついていなかったと見ることもできます。
作品としての見栄えも楽しめながら、エンディングも必ずしもポジティブには向かわない中で「自由を得ること」への様々な思いが育まれる作品といえるでしょう。
《ライター:黒野でみを》
40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきた、マルチジャンルに挑戦し続ける「戦う」執筆家。「数字」「ランク付け」といった形式評価より、様々な角度から「よさ」「面白さ」を見つめ、追究したいと思います。
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