かつて、『マイ・フェア・レディ』や『プリティ・ウーマン』のように、「男性が女性を、理想的なレディに変身させる映画」が大ヒットし、ムーブメントを起こしました。
それが現在、その逆転版ともいうべき「女性が男性を、理想的な姿に変身させる映画」が多く作られています。
今回はその中から、3つの作品を紹介したいと思います。
これらの映画を観れば、世の女性がどのような男性を求めているのか、分かるかもしれません。
(冒頭画像:引用http://www.ichbindeinmensch.de/)
1.『マリー・ミー』(22)
映画『マリー・ミー』:あらすじ
超満員の観客の前に、きらびやかな衣装を身にまとった歌姫が登場します。
彼女は、何十年も第一線で活躍を続ける世界的なシンガーのカット(ジェニファー・ロペス)でした。
カットは私生活において、若手注目のシンガーであるバスティアン(マルーマ)と交際していました。
二人は愛を誓い合った『マリー・ミー』という新曲を共同で作り、それをファンに披露する結婚式ライブを開催したのです。
ついに『マリー・ミー』をファンの前で歌うため、ステージへとせり上がるカット。
そこへ、マネージャーが駆け込んできます。
マネージャーのスマホ画面を見た彼女は衝撃を受けました。
それは、バスティアンの浮気画像でした。
失意の状態でステージに上がるカット。
自暴自棄になった彼女は、驚きの行動に出ます。
客席にいた見ず知らずの男性に、突然プロポーズをしたのです。
一気に注目された教師、押し寄せるマスコミ
その男性は冴えない教師で、シングルファーザーでもあるチャーリー(オーウェン・ウィルソン)でした。
あまりの出来事に、会場は騒然とし、スタッフとファンは大混乱。
ステージに上がらされたチャーリーは、会場の雰囲気に圧されプロポーズを受け入れます。
突如として、ポップスターの結婚相手となったチャーリー。
彼のもとには、マスコミが押し寄せ、国民の注目を集めます。
カットとチャーリーの二人は、お互いを知るために結婚生活を始めます。
ところが、生活環境の違いから、二人には様々な困難が待ち受けていました。
突然、スターの結婚相手で有名人に変身!
主人公のチャーリーは、高校で数学を教える、バツイチのシングルファーザー。
彼は未だにスマホを使わずガラケーを持ち、SNSを全否定している、流行に疎い冴えない男性です。
そんな彼が、同僚に誘われて行った歌姫カットのライブで、突然結婚相手に指名されたのです。
それをきっかけに、チャーリーの、カメラに追われる生活が始まります。
カットとの結婚生活は、PRも兼ねて全世界に生配信されるのです。
さらに、カットのスタッフの指示によりスマホを持たされた彼はSNSを始め、一気に多数のフォロワーを集めます。
チャーリーは、スターを射止めた男として、「華やかな有名人」へと変身を遂げたのです。
順調に仲を深めた二人だが、前に現れた元カレ!
悩みを親身に聞くことで、カットの心の支えとなったチャーリー。
二人は順調に仲を深めていきます。
ところがそんな二人の前に、別れたはずのバスティアンが現れます。
彼は二人で作った曲「マリー・ミー」が、グラミー賞にノミネートされたことを伝えに来たのです。
これをきっかけに、カットとバスティアンは再び接近。
そんな二人を見たチャーリーは、不安に苛まれます。
バスティアンと比べて、自らの平凡さを思い知らされたからです。
その結果、カットの結婚相手としては釣り合わない、とチャーリーは思うようになり、別れを決意。
このまま二人は別れてしまうのでしょうか。
2.『ラブ・セカンド・サイト』(19)
映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』:あらすじ
高校生のラファエル(フランソワ・シヴィル)は、授業もそっちのけでSF小説を書いていました。
でも、彼の物語にはヒロインがいませんでした。
ある日の放課後、ラファエルが廊下を歩いていると、音楽室からピアノの音色が聞こえてきます。
そっと覗き込むと、同級生のオリヴィア(ジョセフィーヌ・ジャピ)がピアノを弾いていました。
彼がその姿に見惚れていると、警備員の怒鳴り声が響きました。
ラファエルはとっさに彼女の手を掴んで、外へ向かって走りました。
逃げることに成功した二人は、ベンチに座ります。
隣にいるオリヴィアの笑顔を見たラファエルは、彼女をモデルにヒロインを書くことを心に決めます。
走りつかれた二人は、寄り添ってベンチに寝そべりました。
この初恋をきっかけに、二人は仲を深めていき、結婚をします。
そして10年後、人気SF作家へと変わるラファエル
ピアニストを目指していたオリヴィアは、コンクールに受からず、ピアノ教室で働いています。
一方、ラファエルは高校時代から書いていたSF小説がベストセラーとなり、人気作家となっていました。
彼は人気作家になったことで傲慢になり、多忙を理由にオリヴィアのことを蔑ろにするようになっていました。
とある雪の日のこと。
ラファエルの態度に耐えられなくなったオリヴィアは、その想いをぶつけます。
ラファエルも怒り出し、大ゲンカとなりオリヴィアとの別れを確信しながら眠りにつきました。
目覚めたのはパラレルワールド、逆転していた立場
翌朝、ラファエルが目覚めると、隣にオリヴィアの姿はなく部屋も変わっています。
彼はパラレルワールドに迷い込んだのです。
もう一つの世界では、二人の立場は逆転していました。
ラファエルは平凡な国語の先生に、オリヴィアは有名なピアニストとなっていました。
そして、こっちの世界のオリヴィアは、ラファエルの存在すら知らないのです。
そもそも、ラファエルにはこんな過去がありました。
彼は、高校生の時に「ゾルタン」というSF小説を書いていたのですが、それを読んだ友人からは不評でした。
なぜなら、主人公と一緒に旅をするヒロインがいなかったからです。
オリヴィアと出会ったことにより、彼女をモデルにした「シャドー」という名のヒロインが生まれます。
そして、「ゾルタンとシャドー」というタイトルの小説を書き、なんとベストセラーに!
言ってみればラファエルが人気作家に変身できたのは、オリヴィアのおかげもあったのです……。
オリヴィアをもう一度振り向かせたい!奮闘するラファエル
人気作家として地位と名声を手に入れたラファエルは「嫌な男」になり下がったのです。
パラレルワールドでのラファエルは平凡な先生。
一方のオリヴィアは、ピアニストとして成功をおさめていました。
妻だったはずの彼女は、いまやラファエルのことも知らない他人であり、手の届かない存在となってしまったのです。
自分を見つめ直したことにより、オリヴィアへの愛に気づいたラファエル。
今までの彼女への態度を反省し、もう一度振り向かせようと思い立ちます。
果たして、ラファエルとオリヴィアは、かつてのように再び結ばれることができるのでしょうか?
3.『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』(21)
『アイム・ユア・マン』:あらすじ
博物館で学者をしているアルマ(マレン・エッゲルト)は、とあるバーにいました。
そこでは、何組もの男女が楽しそうに飲んでいました。
ステージでは演奏に合わせ、カップルが踊っています。
戸惑っている彼女のもとに、長身で青い瞳をしたイケメンのトム(ダン・スティーヴンス)が「一緒に踊ろう」と声をかけてきました。
笑顔でリードするトムに、身を任せるアルマ。
ところが踊りの途中、トムの様子がおかしくなります。
機械がショートしたかのように首を振り、同じセリフを繰り返すのです。
慌てて出てきたスタッフにトムは連れていかれます。
彼はアンドロイドだったのです。
そして、客と思われたカップルたちは、実際には存在しないホログラムでした。
アルマは研究資金を稼ぐために、とある企業の実験に参加していたのです。
それは、「アンドロイドと恋愛をする」というものでした。
あらゆる恋愛データをプログラムされ、「女性を幸せにする」というミッションを課されたトムと、アルマは同居生活を始めます。
抜群のルックスと献身的な優しさ、鮮やかな恋愛テクニックで、彼はアルマにアプローチをします。
ところが、彼女はそれを拒絶します。
アルマは過去のトラウマから、恋愛を遠ざけていたのです。
果たして、トムは彼女の心を開かせることが出来るのでしょうか。
恋愛データをプログラミング、理想の男性に!
この映画の主人公は、人間ではなく恋愛データをプログラミングされたアンドロイドです。
人工知能がプログラムによって、理想の男性へと変身を遂げます。
そんなトムは、アルマと同居することになります。
そこで、彼女に好かれるために様々なアプローチをします。
優しさをアピールするために、散らかっていた部屋を片付け、コーヒーや料理などを彼女のために作ります。
彼女をロマンティックな気分にさせるため、風呂場の照明をキャンドルの明かりに変え、さらに湯舟にバラの花を浮かべ「一緒に入ろう」と誘います。
ところがこれらの行為によって、アルマから好かれるどころか、むしろ嫌がられます。
全ての行動がマニュアルに沿いすぎていて、不自然だったのです。
あまりにも完璧すぎる男性を、女性は怖いと思うのかもしれません。
アルマとの同居生活で、より人間的に変化するトム
最初こそぎこちなく、人間の生活に馴染めなかったトムですが、同居生活を続けるうちに変化をしていきます。
アルマの仕事仲間や、実家に住む家族との触れ合いなどを経て、より人間を理解していくのです。
そんなトムにアルマも好意を寄せはじめ、過去の傷のことを話すまでになります。
仲を深めることに成功したトムですが、アンドロイドである自分が、アルマを幸せにできるのか悩みます。
果たして、人間とアンドロイドは理想のパートナーたり得るのか、その結末は本編をご覧ください。
●マリア・シュラーダー(Maria Schrader)
誕生日: 1965年9月27日生まれ
星座:てんびん座
出身:ドイツ
▶マリア・シュラーダーの監督作品一覧
▶おすすめの監督作品(管理人選)
まとめ
今回紹介した3つの作品に共通しているのは、理想的な姿に変身を果たした男性の恋愛が、どれも「あまり上手くいっていない」という点です。
男性側が無理やりに自分を変えて成功者になったり、女性に媚びるようなかたちで合わせると、結局はお互いの気持ちが離れてしまうのです。
こうならないためには、男性が現在の自分に自信を持つことが必要なのではないでしょうか。
いずれの主人公男性も、自分の内面を見つめ直します。
現在のライフスタイルを尊重して、自分が魅力的であると肯定するのです。
そうすれば、自然と女性にも好かれるはずです。
「自分を大切にしている男性」こそが、「女性の求める理想の男性」なのかもしれません。
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こんにちは!ライターの「げん」と申します。
映像が好きで、テレビドラマのプロットなどを書いていました。また、恋愛小説をファッション誌で連載したこともあります。これらの経験をもとに、映画を通して恋愛を学ぶ記事を書いています。
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