実話が元になった同名小説を原作に映画化された、『ペンギン・レッスン』をご紹介します。
本作の舞台は「汚い戦争」下の70年代アルゼンチン。国家からの厳しい弾圧により約3万人が殺害・行方不明になった時代です。
『ペンギン・レッスン』はそんな暗く険しい時代の中で生まれる希望を描いています。
(トップ画像:引用https://www.facebook.com/SonyClassics/)
『ペンギン・レッスン』:あらすじ

1976年、軍事政権下のアルゼンチンで英語教師として赴任した トム・ミッシェル(スティーヴ・クーガン)は、荒れた学級と理想を失った心で日々を過ごしていた。
だが、休校中のウルグアイ旅行で、重油にまみれ瀕死のペンギンを偶然救助。
唯一生き残ったそのペンギンを連れ帰り、“フアン・サルバドール”と名付けてひそかに世話を始める。
必死に世話をする中で、やがてペンギンとの不思議な絆がトム自身や生徒たちの心を変えていく──
デートしたかっただけの男、目の前に現れた異色の存在

英語教師としてアルゼンチンにやってきたものの、校長からはラグビー部の顧問を押し付けられます。(ラグビーの知識は皆無)
受け持ちクラスの生徒たちは全く言うことを聞かず、出鼻を挫かれる主人公のミッシェル。
しまいにはクーデターのせいで学校は突然1週間の休校に。
もう休みの間は女性と遊んで気分転換しよう…ということで、やってきたビーチで出会ったのはまさかの油まみれのペンギン。
そして隣にいるデート相手の手前、渋々彼(ペンギン)を助けたことで、ミッシェルや彼の周りにいる人たちの人生が変わっていくという、バタフライエフェクトならぬペンギン・エフェクトが起こっていきます。
ところで本作は暗い時代背景とは対照的に柔らかく淡い色調が印象的で、クリーム色に近いイエローや落ち着いたブルー、ブラウンが多用されています。
それだけに、白黒というコントラストの強い色のペンギンが画面でよく映えて、彼の存在の異色さが際立っているので、ぜひ色合いにも注目してみてください。
拾ったペンギンがきっかけ、周囲と打ち解け始める…

色々あってビーチで助けたペンギン”フアン”と暮らすことになったミッシェル。
初めは誰にも見つからないよう隠れてフアンの世話をするだけでしたが、次第にフアンの存在が学校の清掃員、教師仲間、そして生徒にまで知れ渡り、フアンはみんなのアイドル的存在に。
軍事政権化、校内にも漂ってくる息苦しいムードを打ち壊すかのようなフアンの愛くるしい一挙手一投足にみんなが癒されていくようで、自然と軽快なユーモアも生まれていきます。
そしてフアンを通してミッシェルも周囲の人間と少しずつ打ち解けるようになっていきますが、自身の思想や過去についてはどうも多くを語ろうとしない…
ついにやってきた、「ペンギン」になる瞬間?

(ネタバレ注意)
ある日学校の清掃員の女性ソフィが、革命的思想を理由に逮捕されてしまう事件が起こります。
ミッシェルはその場に居合わせたものの、怖気付いて助けることができません。
その後ソフィの家族らとの交流を経て、とある夜、ミッシェルはペンギンのフアンに向かって自身の過去についてポツリと語りかけます。
娘を亡くしたこと、そして亡くした娘と逮捕されたソフィを重ねて考えるようになっていること…
いつもはブルーのシャツが定番のミッシェルが、このシーンでだけは白いカットソーに黒いカーディガンを着ている(ペンギンカラーになる)のですが、この場面こそミッシェルの変身の瞬間を表しているように見えます。
ペンギンのごとく白黒付ける覚悟の決まったミッシェルのとった行動とは…⁉︎
ぜひ映画でご確認ください。
●スティーヴ・クーガン(Steve Coogan)
誕生日:1965年10月14日生まれ
星座:てんびん座
身長:179㎝
出身:イギリス・イングランド
参考記事:スティーヴ・クーガン主演、『羊飼いと屠殺者』
「人生、時にはペンギンをプールに入れてみよ」

ミッシェルがフアンを油まみれの窮地から救ったのは全くの偶然、しかも下心丸出しのきっかけであったわけです。
しかし、きっかけはなんであれ、彼が起こした行動の影響がどんどんと波及していく、それもポジティブな方向で波及していくのが本作の面白いところです。
そしてこれは実話がベースになっているというから、人生って本当に何があるかわからなくてどんな時も可能性に満ちているなと思わせられます。
「人生、時にはペンギンをプールに入れてみるのも大事」
という教訓(レッスン)も本作のラストに出てきますが、とにかく先に何かアクションを起こしてしまえば、後からどんどん人の感情や考え、環境は変わっていくのだなと希望を持てるラストになっていました。

【小説版:人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日】
まとめ:どこか『かもめ食堂』を…
何より、考えも凝り固まってきがちな中年のミッシェルがフアンとの関わりを通して変化を受け入れていく姿にグッときます。
「なんか暗そうなあらすじだな…」と避けてしまうのは勿体無い良作でした。
そんな本作ですが、テンポの良い音楽でどんどん場面転換していく感じや、いつも主人公のそばにいる憎めない仲間(フィンランド人)が出てくるのが、どこか『かもめ食堂』っぽいなと思いました。
かもめ食堂ファンにもおすすめです。
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●洋画好きの「にゅっき」です。※「すどうゆき」からライター名を変更しています。
英語が飛び交う環境で働くペーペー社会人。
映画鑑賞で英語上達を画策中。


久々の寄稿、ありがとうございました!
オリジナルのイラストもあって、なんだか穏やかになれそうな作品ですよね。
最近、こころに染みわたるようなヒューマンドラマを待っていました。
機会をみて鑑賞したいと思います。
引き続きよろしくお願い致します。