今回ご紹介する映画は『セイント・フランシス』(19)です。
「グレタ・ガーウィグに続く才能」と絶賛されるケリー・オサリヴァンによる脚本の本作は、アラサー女性を主人公にしており、オトナの女性版『レディ・バード』ともいうべき作品。
でもジャケット写真はちょっとソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』っぽさもあり、どんな映画なのか気になります。
今回はそんな『セイント・フランシス』の魅力に迫ります!
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/saintfrancesmovie/)
映画『セイント・フランシス』:あらすじ
主人公の女性ブリジットは34歳独身。
周りが結婚生活やキャリアを築く中、ブリジットは大学を中退し、仕事はレストランのスタッフをしている。
自分ではひたむきに生きているつもりだが、両親や周囲の人間からは「まともな」生活ができていなない自分に対するジャッジメンタルな視線を感じる。
色々なことがままならなくても何とかサバイブする、ブリジットのひと夏の出来事…。
成人女性にのしかかる、社会的プレッシャーを描く
女性の悩みは尽きない。
生まれてから、女友達との付き合い、母親との関係、結婚、出産、なんと生涯で7年近くも付き合うことになるらしい生理…その他いろいろ。
本作の主人公ブリジッドも悩みながら生きる女性の一人であり、「30代 なにをするべきか わからない」と検索窓に打ち込むことも。
初の脚本を務めた俳優ケリー・オサリヴァンは、グレタ・ガーウィグの『レディ・バード』(17)の女性の描き方にインスパイアされ、自身の中絶経験など自伝的要素を織り込んだ脚本を書こうと決意したそうです。
こうして出来上がった本作は、なかなかスポットライトの当たりづらい、女性の抱える諸問題について、地に足のついた視点で描いています。
ナニーとして過ごす、主人公のひと夏
夏の間、短期の仕事として何とかナニー(子守)にありつくことができたブリジット。
ナニー先はレズビアンカップルの両親の元で育つ、6歳の少女フランシス。
最初はぎこちなかったブリジットとフランシスも、ある出来事をきっかけに距離を縮めます。
またフランシスをはじめとする周囲の人々との出会いを通じて、ブリジットの世界の見え方にも変化が。
しんどさを抱えるのは、「まともそう」なあの人も…
ブリジットがナニーとして働く中で気づいたこと。
それは、一見「完璧で申し分ない」ように見える人も、不安や生きづらさを抱えているということ。
ナニー先のレズビアンカップルも、公園にいるママ友もそう。
6歳のフランシスだって彼女なりに悩みながら生きている。
ちらりと画面に映る、道端の「ブラック ライブス マター」と書かれた看板は、黒人であるフランシスがやがて抱えるであろう苦悩を暗示しているよう。
それでも、各々にはそれぞれの輝きがあると気付くブリジットの姿から、エールを貰える方もいると思います。
色使いにも注目!この色は何をイメージなのか…
『セイント・フランシス』鑑賞の際、ぜひ注目してほしいのが色使いです!
繊細に作られている本作は、色使いでも観客に訴えかけるのが上手。
例えば、ブリジットに意地悪な態度を取るかつてのクラスメイトの家は、無彩色のインテリアで冷たい感じがひしひし伝わってきます。
ブリジットとフランシスが急接近していくシーンは、ポップでカラフルな色使いが。
そして、赤の印象的な使い方もポイント。
作中でブリジットが度々流す血液、マットやガーデニングチェアの赤い布。
本作における赤は何かしらのエネルギーを象徴する色なのか、はたまた女性の逃れられない生理の色なのか…どんなイメージがある色なのかと考えてみるのも楽しいと思います。
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まとめ
ソフィア・コッポラ『SOMEWHERE』のように、決して大きな出来事が起こるわけではないけれど、確かに観る者の心に静かに触れる作品です。
ブリジットのように、もがきながらもひたむきに生きる女性と言えば、詩人の茨木のり子さんが浮かびます。
環境に言い訳にして立ち止まりそうになった時、そばに置いて何度も眺めたい詩がたくさん詰まっています。
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《ライター:すどうゆき》 担当記事一覧はこちらへ→
●洋画好きのすどうです。英語が飛び交う環境で働くペーペー社会人。
映画鑑賞で英語上達を画策中。
※青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の、くやしさと、それゆえの、未来への夢。スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる、主張のある詩、論理の詩。ときには初々しく震え、またときには凛として顔を上げる。素直な表現で、人を励まし奮い立たせてくれる、「現代詩の長女」茨木のり子のエッセンス。(対談=大岡信、解説=小池昌代)【引用:Amazon】
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