続編『エスター ファースト・キル』を考察、前作より怖いモンスター超えの少女の前日譚!

エスター・ファーストキル
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今回紹介する作品は、衝撃的な結末で話題を呼んだ2009年の映画『エスター』の前日譚となる物語『エスター ファースト・キル』です。

とある裕福な家庭に養子として迎え入れられた一人の少女。

愛らしい表情に秘められた恐ろしい本性が、一家に恐怖をもたらしていくという前作の衝撃的なストーリーは、大きな反響を呼びました。

本作ではエスターに成りすました少女の生い立ち、そして彼女が怪物となるまでの経緯を映画『エスター』の前日譚として描いています。

今回は本作の重要なポイントとともに、エスターという人物が取り巻く人たちとの関係から見えてくる恐ろしさの実態について考察・検証してみたいと思います。

映画『エスター ファースト・キル』:作品情報

サスペンス映画『エスター』の第二弾作品。

前作物語の前日譚として、かつて要注意人物として収容されていた精神病院から主人公リーナが脱走、裕福な家庭の一人娘エスターへと変貌を遂げるまでの経緯を描きます。

監督は『ザ・ボーイ 人形少年の館』『デビル・インサイド』『ウェア 破滅』などのホラー作品を手掛けてきたウィリアム・ブレント・ベル

キャストには前作のエスター役を演じたイザベル・ファーマンが本作でも続投します。

またエスターの実家オルブライト家の父アレン役を『逆行』、『ポゼッサー』などのロッシフ・サザーランド、母トリシア役を『ジェイソン・ボーン』『ボーン・アルティメイタム』などのジュリア・スタイルズらが務めます。

さらにエスターの正体を探ろうとするドナン刑事役を、カナダを拠点として活躍する日本人俳優ヒロ・カナガワが務めます。

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映画タイトルエスター ファースト・キル
原題Orphan: First Kill
監督ウィリアム・ブレント・ベル
出演イザベル・ファーマン、ジュリア・スタイルズ、ロッシフ・サザーランド、マシュー・アーロン・フィンランほか
公開日2023年3月31日(金)【YouTube:予告編】
公式サイトhttps://happinet-phantom.com/esther/ 

■2022年 /アメリカ映画/カラー/99分

映画『エスター ファースト・キル』:あらすじ

エスター ファーストキル
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厳重な警備で管理されていたエストニアの精神病院より、一人の少女が脱走を成功させました。

緻密な計算で脱走計画を立てたその少女の名はリーナ(イザベル・ファーマン)

彼女は下垂体機能低下症による成長ホルモン異常を原因とした発育不全のため、見かけは幼い少女ながら中身は成熟した女性。

高い知能と凶暴性を持った彼女は脱走後、精神病院で自身のカウンセリングを担当していたカウンセラーをその自宅で殺害、さらにその場でエスターという少女の失踪記録を発見します。

そしてリーナはエスターに成りすまし、エスターの実家であるオルブライト家とのコンタクトに成功し実家族との対面を果たします。

エスターファーストキル
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当時6歳だった一人娘のエスターが行方不明になってから4年の月日が流れ、毎日を悲壮感とともに過ごしていた父アレン(ロッシフ・サザーランド)

エスターが見つかったという朗報を受け、彼は大きな喜びとともに10歳に成長したエスターを迎え入れます。

一方でそんなアレンとは対照的に、母トリシア(ジュリア・スタイルズ)は喜びの表情を見せながらも、心の中では戸惑っていました。

新たに始まったオルブライト家の生活。

リーナはエスターの過去を探っては懸命に彼女に成りすまそうと悪戦苦闘しますが、その取り繕った様子にトリシアは大きな違和感を覚えます。

それはトリシアが胸の奥に抱えていた、エスターにまつわる衝撃的な秘密があったからでした…。

前作『エスター』から見える、怖さの根源とは?

とある裕福な家庭に養女として迎えられた少女。

愛らしい外見と振る舞いに幸せな家庭生活を予感した家族の思いとは裏腹に、徐々に表れる少女の本性によって家族は恐怖に陥れられるという物語、そして最後に明かされる少女の驚くべき秘密。

2009年に公開されたこの『エスター』の物語は、見るものに大きな衝撃を与えました。

その衝撃は、ある意味人間の英知を超えたモンスターなどよりよっぽど恐ろしいと思わせたことでしょう。

この「下手なモンスターより怖い」と思わせる、「人間の怖さ」を存分に引き出したことこそまさに『エスター』シリーズの真骨頂といえるポイントであります。

しかし不運な境遇に生まれた孤児リーナが、なぜ怪物エスターとなったのか?

エスター ファーストキル
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前作では最後に明かされた女性リーナの生い立ちを孤児院からの情報として伝えられるにとどまってしました。

その意味では実像から養子として迎えられた家族自体を支配し、恐怖をもたらすに至るようなルーツははっきりと描かれていません。

実際本作の冒頭では、リーナには人を簡単に殺めてしまうほどの凶暴性を持ちながらも、どちらかといえば自分が生き延びるための道を優先するような、打算的で人間的な表情が垣間見られます。

そんな彼女がエスターとなったとき、そしてエスターとなったことで遭遇する恐怖が本作では描かれます。

ラストシーンで見せる、どこか凛としながらも寂しささえ感じられるような怪物の表情。

この物語ではまさに彼女が怪物と化したその要因が描かれているわけです。

エスターの視点から垣間見た、「人間の恐ろしさ」

序盤こそリーナを見る他人の視点で展開していく本作ですが、彼女が精神病院を脱走し自分のカウンセラーを殺害して以降、物語はリーナの視点で描かれていきます。

この視点こそが本作の注目すべきポイントといえるでしょう。

前作ではリーナが成り切ったエスターという少女が平静を装いながら、徐々に恐ろしい存在へと変貌していく様子が描かれましたが、彼女の真意は最後まで見えてきません。

先述の通り本作で見えてくるリーナの本性は、序盤では時に残虐性、サイコパス的な精神状態を見せながら、その奥底では自分が生き延びることだけを優先していました。

しかし彼女がエスターとしてオルブライド家に入ると、彼女の気持ちはエスターを溺愛する父、そして秘密を抱える母の間で揺らいでいきます。

エスターファーストキル
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物語中盤ではこの母トリシアが抱える衝撃的な秘密が明かされ、リーナ自身が大きな危機にさらされることになります。

そしてこのタイミングこそが、深い愛情を注ぐ父の振る舞いとあいまってリーナ自身を揺さぶり、大きな変化をもたらすわけです。

リーナの生い立ちはそれまで恵まれなかった、不遇の時を過ごしたという一時的な方向性の事実から彼女の性格に影響を与えていました。

トリシアが明らかにした事実は、そんな過去とは異なる衝撃性からリーナに新たな影響を与え、彼女の怪物性を徐々に引き出していきます。

また本作で明かされるその事実はさらに、不遇だから人間は歪んでいくいくという固定観念を崩し、人間が生み出す恐怖性の要因をさらけ出し、物語の怖さをさらに奥深いものとしています。

■コラム:参考ホラー映画本【管理人・選】

【大解剖ベスト】 懐かしの 名作 恐怖映画 大解剖

※本作は1970年~2020年までに公開された死ぬまでに観ておきたい50年間の名作ホラー49作品を一挙紹介!50年間の恐怖映画の歴史とともに恐怖の名場面を振り返ることで当時の恐怖と思い出が再び蘇ってくる…。【引用:Amazon】

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適役のイザベル・ファーマン、その成長も感じられる作品

エスターファーストキル
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キャストとしてやはり注目すべきは、主演を務めたイザベル・ファーマン

2012年に出演した『ハンガー・ゲーム』では「残忍な性格で、殺人の行為自体を楽しむ」人物を好演しました。

さらに2016年に出演したセルでは、精神的に追い込まれたあげくに自身の母親を殺してしまうという少女を担当しており、少し精神的にも大きな振れ幅を持つ人物役で才能を発揮する役者であるという印象もあります。

ファーマンは、前作では12歳でこの役を演じました

全編をほぼ9歳の少女として演じながら、時に33歳の女性の表情を見せていた前作からすれば、25歳で挑戦した本作はどちらかというと年齢に沿ったナチュラルな演技を感じ取れることでしょう。

エスターという人物像は、どちらかというと表情に心理的な表情をあまり見せないため、余計に自身の本意を映像として見せるのも難しいため、ある意味役者としての技量を試される作品であるといえるでしょう。

『エスター』『エスター ファースト・キル』は、個性派として非凡な才能を持つファーマンの女優としての技量、成長を感じ取ることができる興味深い作品でもあります。

関連記事:永瀬花帆が選ぶホラー映画3選!かほちゃんシネマは、「人間が怖い!」ジャンルが大好き!

エスター(作品情報)

●イザベル・ファーマン(Isabelle Fuhrman)

誕生日: 1997年2月25日生まれ

星座:うお座

出身:アメリカ

イザベラ・ファーマン
https://www.facebook.com/isabellefuhrman/

▶イザベル・ファーマンの出演作品一覧

▶おすすめの代表作品

ハンガー・ゲーム(作品情報)

※小説家スーザン・コリンズの人気小説を映像化した作品。文化が崩壊したアメリカを舞台に、殺し合いのゲームにいきなり参加させられる女の姿を追います。主演はジェニファー・ローレンス

セル(作品情報)

スティーブン・キング作のホラー小説を映像化。ファーマンのほかにジョン・キューザックサミュエル・L・ジャクソンら錚々たる面子も出演しています。

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《ライター:黒野でみを》 クリックで担当記事一覧へ→

黒野でみを,プロフィール40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきた、マルチジャンルに挑戦し続ける「戦う」執筆家。映画作品に対して「数字」「ランク付け」といった形式評価より、さまざまな角度からそれぞれの「よさ」「面白さ」を見つめ、追究したいと思います。

nandemonews20201225@gmail.com

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