「ディストピア」とは、ユートピアが「理想郷」としたのに対し「暗黒郷」と言われています。
高度に「監視」と「管理」をされた退廃する未来を、映画や小説は予見して警鐘を鳴らすかのように世に訴えてきました。
今記事では、そんな代表的なディストピア映画を紹介しましょう。
「ディストピアとは?」と、改めて本や文章を読むのが億劫な人には映画をさっさと観るのが一番。
紹介する映画は、いずれも映像の素晴らしさだけでも意味と答えを教えてくれます。
人類はおろかなのか、はたまたそこから英知が生まれたのか?
▶ディストピア・フィクション論: 悪夢の現実と対峙する想像力
『アリータ』の世界観、廃棄物まみれの「アイアンシティ」
『アリータ: バトル・エンジェル』が描いたディストピアは、廃棄物にまみれた世界でなんとか生き延びる人たちです。
現在でもゴミ山から食べ物やクズ鉄を探す、最貧困地域の映像が流れますがあれに等しい世界がモデルかもしれません。
日本の漫画家「木城ゆきと」氏による『銃夢』を原作に制作された有名な映画です。
没落戦争(ザ・フォール)と呼ばれる壮絶な宇宙戦争から300年。
地球に住む大半の人類は「アイアンシティ」(鉄クズの街)と呼ばれる地域に住むことに。
しかし、頭上には裕福な連中が空中都市「ザレム」を作り、アイアンシティを監視するという二重構造になっていました。
人々の憧れ?の空中都市「ザレム」への復讐
「アイアンシティ」の人たちが漁る廃棄物は、まさに裕福な「ザレム」から排出されるもの。
そんな中、映画が描くのは「アイアンシティ」から生まれた主人公「アリータ」(ローサ・サラザール)。
サイバネティックス(人工頭脳学)の専門医イド(クリストフ・ヴァルツ)が、クズ鉄の山から見つけたサイボーグの頭部が彼女アリータでした。
イドの腕の良い修復により、アリータは過去の記憶とともに可愛い少女として蘇ります。
しかし、その過去は宇宙戦争の最前線で戦った優秀な戦闘員だったのです。
見どころは、廃墟となったアイアンシティ。
そして、アリータの戦闘能力でディストピアを作った空中都市の支配者に挑むのでした。
参考記事:ヒューマノイドが生き残るSFサスペンス映画、ディストピア未来を読み解く!
『ブレードランナー 2049』、レプリカントを狩る人間
ディストピア映画では、次の『ブレードランナー 2049』がもっとも有名かもしれません。
(冒頭画像:https://www.facebook.com/bladerunner2049)
ひと言でいえば、「人間が人造人間(レプリカント)を狩る」というおぞましい世界を描いた映画です。
同名の前作が大ヒットして約30年が経過し、ストーリーもまさに30年後を描いた続編となります。
前作は1982年に公開され、描いた時代は2019年でした。
地球は環境汚染が進み酸性雨の降りしきるディストピアと化した中、デッカード(ハリソン・フォード)という捜査官(=ブレードランナー)がレプリカントを探し回っていました。
宇宙開発用の労働力として増産されたのですが、予期せぬことに感情を持ち始め人間に造反するものが現れたからです。
生殖能力のあるレプリカントの出現か…
今作『ブレードランナー 2049』は、タイトルが示すようにそこから30年が経過した2049年。
さらに人間の生存環境が悪化する中、全編、太陽の射さない暗い世界がありました。
主人公は「K」(ライアン・ゴズリング)というコードを持ったブレードランナーで、いまや人間世界に紛れ込んで見分けのつかなくなったレプリカントを探し出すのが彼の仕事。
今作の見どころは、「K」が発見した女型レプリカントの遺骨から、なんと妊娠の痕跡が見つかったことです。
監視され、支配される人造人間に生殖能力があることに本部は驚愕。
支配構造のバランスが崩れるのは必至とあって、「K」が特命捜査の先で出会ったのは30年後のデッカードだったのです。
かつての一流ブレードランナーから聞き出した物語は、新たな世界の出現を予感していました…。
『セブン・シスターズ』、強制的「一人っ子政策」
『セブン・シスターズ』が描いたディストピアは、現在のどこかの国を彷彿とさせる「強制的一人っ子政策」。
背景には、遺伝子組み換え食品の影響で、三つ子や五つ子が普通にできてしまう多胎児問題がありました。
加えて地球的規模の食糧危機があり、人口抑制は人類生存を賭けた絶対政策だったのです。
もし二人目以降を出産した場合は、政府「児童分配局」の管理のもと冷凍保存にし、しかるべき時代に蘇生させるという徹底ぶり。
政府の徹底した監視に、人々は従わざるを得ないという状況にありました。
そんな中、セットマン家に誕生したのはなんと「七つ子」でした。
「What Happened to Monday?」いつかはバレる?
政府の指導に従えば、6人を差し出さなければならず苦悩するセットマン家の祖父テレンス(ウィレム・デフォー)。
かわいい七つ子を前にし、テレンスは隠れて全員育てる決心をするのです。
その方法とは、政府登録は「カレン・セットマン」(ノオミ・ラパス)一人。
7人の名前は、Monday、Tuesday、Wednesday…Sunday、と順に曜日名を割り振り、外出は世間にバレないよう名前の付いた曜日のみとしたのです。
成長したカレン(たち)は、児童分配局の監視を潜り抜け毎日交代で働きに出るのでした。
当然、会社の同僚やカレンの恋人など、曜日ごとに異なる7つの個性に違和感を感じ始めるのに時間はかかりません。
ある日、「Monday」が夜になっても帰って来ませんでした。
(原題:「What Happened to Monday」(いったい、Mondayに何があったの?)
参考記事:1人7役の怪!「水曜日が消えた」は『セブン・シスターズ』がヒント?
まとめ~「ユートピア」の再建を目指して~
ディストピア映画はどうしても人類の暗い将来を描いたものばかりで、ちょっとうんざりしますよね。
そこで、最後にまとめとして『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』を紹介しておきましょう。
この映画はディストピア映画ではありません。
かつて多くの惑星の種族が平和に共存していた良き時代を取り戻そうとする救世主=ヴァレリアン少佐(デイン・デハーン)と、ローレリーヌ軍曹(カーラ・デルヴィーニュ)の活躍を描いています。
映画の最初に登場し滅亡してしまう「惑星ミール」の請託を受け、頑張るさわやかな二人に救われますよ!
実はこのミール星こそ、「ユートピア」だったのです。
ぜひ、あわせてご覧ください。
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