今回お話しする映画『コリーニ事件』は、同名のベストセラー小説(後述)が原作です。
小説が出版されて数ヶ月後、作中で提示された"ある法律"をきっかけにドイツ連邦法務省は委員会を設置。
事務次官は、小説「コリーニ事件」について言及するなど、国家に一石を投じることとなった物語です。
映画『コリーニ事件』:あらすじ
2001年、とある大物実業家が殺された。
事件後、世間が注目する殺人事件の国選弁護人に任命された新米弁護士のカスパー・ライネン(エリアス・ムバレク)。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/collinimovie)
しかし、ライネンにとって被害者は昔からの恩人であった。
犯人のファブリツィオ・コリーニ(フランコ・ネロ)はイタリア人で、30年以上模範的な市民として働いてきたが、事件後は頑なに口を閉ざしていた。
なぜ、被害者を殺したのか?
ライネンは事件を深く調べていくうち、戦後ドイツの不都合な真実へと辿り着く。
映画に組み込まれた、注目の見どころ
リーガル・サスペンス×人間模様
本作はひとつの殺人事件の刑事訴訟に焦点を置いた法廷劇です。
【被告人+国選弁護士】VS【検察官+被害者遺族+公訴参加代理人(被害者弁護人)】の攻防が繰り広げられます。
その法廷劇をさらに面白くしている注目点が、国選弁護士、被害者遺族たちの関係性です。
国選弁護士のライネンにとって、事件の被害者は肉親ではないものの幼いころから父親同様に慕っていた恩人です。
そのため被害者側の家族や関係者とも親交があります。
映画のポスターには、ライネンを演じるエリアス・ムバレクの奥に司法の公正さを象徴するテミス像が見えます。
ライネンは家族の側につくのか、己の正義に従って家族に背くのか…そんな選択を迫る緊張感とライネンの苦悩が伝わることでしょう。
『コリーニ事件』、ならではのミステリーとは?
ミステリーの定番といえば、よくあるのが「犯人は誰か?」といったものでしょう。
今作、『コリーニ事件』では犯人はコリーニであることは明確です。
そのため、ストーリーは「なぜ殺したのか?」という動機を探ることに焦点が当たっており、黙秘を貫くコリーニ自身が難攻不落なミステリーそのものなのです。
主要キャストの紹介
カスパー・ライネン/演:エリアス・ムバレク
原作者フェルディナント・フォン・シーラッハからは、「強烈な存在感」。
監督マルコ・クロイツパイントナーからは、「勤勉で意欲的、また一緒にやりたい」と絶賛を受けています。
●エリアス・ムバレク(Elyas M’Barek)
誕生日:1982年5月29日生まれ
星座:ふたご座
身長:175cm
出身:ドイツ・ミュンヘン
▶おすすめの出演作品
ファブリツィオ・コリーニ/演:フランコ・ネロ
マカロニ・ウェスタンを代表する俳優。
アクション、クライム、ドラマ、ロマンスと幅広いジャンル・役柄での活躍が見られます。
フランコ・ネロ本人は気さくで、すぐに親しくなれたと共演者らは語っています。
●フランコ・ネロ(Franco Nero)
誕生日:1941年11月23日生まれ
星座:いて座
身長:180cm
出身:イタリア・パルマ
▶おすすめの代表作品
原作「コリーニ事件」の著者について
著者のフェルディナント・フォン・シーラッハは、ドイツ屈指の現役刑事事件弁護士であり、小説作家でもあります。
著書にはベストセラーとなったデビュー作『犯罪』をはじめ、映画化された『コリーニ事件』、そのほか短編、長編作品が刊行されています。
【著書作品一覧】
「犯罪」 | 2009年/短編集 |
「罪悪」 | 2010年/短編集 |
「コリーニ事件」 | 2011年/長編 |
「カールの降臨祭」 | 2012年/短編集 |
「禁忌」 | 2013年/長編 |
「テロ」 | 2015年/長編 |
作品たちは日本語を含め様々な言語で翻訳されており、世界各国で愛されています。
また、『コリーニ事件』然り、F・V・シーラッハの綴る物語に大きく影響しているといっても過言でないのが祖父の存在です。
彼の祖父はナチ党全国青年少年指導者のバルドゥール・ベネディクト・フォン・シーラッハです。
熱心なナチ党員として活動していた彼の祖父は、戦後ニュルンベルク裁判で「人道に反する罪」で禁固20年の刑を処されています。
戦犯の孫である彼の少年時代の苦労は容易に想像できることでしょう。
生まれたときから歴史の影と向き合い続け、法曹会の住人となった彼だからこそ描ける物語たちなのです。
さいごに:ライターコメント(by Sayao)
筆者も含めてですが、現代人がニュースや本、学校の授業からでしか知らない過去や歴史や、その時代を生きた一人一人、一つ一つに向き合うことは非常に難しいことです。
しかし、想像し、振り返ることはできると感じさせられました。
何が善悪なのか、正義なのか、この作品を通して考えることができるのではないでしょうか。
参考記事:法廷スリラー映画『モーリタニアン』、同時多発テロから20年で明らかになったこと
参考記事:法廷ドラマ『ローマンという名の男』デンゼル・ワシントン主演、正義と信念を貫く弁護士の挫折…
《ライター:サヤヲ》 クリックで担当記事一覧へ→
ミステリー小説とカレー、そして猫を愛するサヤヲといいます。
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