
原題は、『The Aeronauts』。
「気球乗り」といったところでしょうか。
時は1862年、日本では明治維新の直前あたりで、「気象学」という学問が地上や海上での実測に頼っていた頃。
イギリスの気象学者ジェームズ・グレーシャー(実在)と、女性の気球乗りアメリア・レンが初めて10,000mの上空まで上り詰めた話です。
邦題は、『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』とかなり情緒的ですが、それには意味が。
生身の体でガス気球に乗り、雲の上以上を突破するという冒険記として楽しめる一方、学問的にひとつのエポックとなった事実を知ることもできるおススメ映画です。
ショー・ビジネスの女性気球乗りと、気象学者の出会い
ジェームズ・グレーシャー(エディ・レッドメイン)は、気象学者として高空の大気温度と湿度測定が課題でした。
高空での測定を実現するためにはどうしても気球が必要だったので、ジェームズは女性の気球乗りで実績のあるアメリア・レン(フェリシティ・ジョーンズ)という存在を知り、操縦士として同乗を依頼します。
(アメリア・レンは、女性初の進歩的な気球乗りだった、フランス人の「ソフィー・ブランシャール」がモデルだと言われています。)
アメリアは、もともとはショー・ビジネスとしての気球乗りでした。
彼女は、一旦、ジェームズの依頼を断るのですが、ジェームズの仲間から彼の研究が未来を変える一歩になると説得され引き受けることに。
そこから、二人の命をかけた冒険飛行、いや、研究飛行が始まるのでした。
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感想(3件) |
目指すは初の体験、上空8000m越え!



気球乗りのベテラン、アメリアの操縦は頼もしく気球はゆっくりと高みへと上昇。
下界には、二人の壮大なチャレンジをお祭りを見るように見上げる観客たちがいます。
映画ならではの特撮とはいえ、空の冒険飛行は本当に素晴らしい!の一言です
しかし、途中、想定外の積乱雲に突入する場面では風雨にさらされるなど、厳しい自然が気球を襲ってきます。
筆者もそうですが、特に高いところが苦手な人には緊張の連続かもしれません!



「もっと高く!」高ぶる気持ちで昇った天空…
嵐の真っただ中をさらに上空へと抜け切ると、そこは雲上の世界!
その後も順調に高度を上げ、ついに目標であった8000mを初めて突破、二人は喜びを噛みしめます。
ジェームズの念願の研究課題である、上空で温度や湿度の実測も現実となりました。
ただ、アメリアは予測していたとはいえ上空では気温がどんどん低下し出し、また、気球自体にも負担がかかり始めているのを感じ取っていました。
さあ、今作の見どころはここからです。
降下するためには、少しづつ気球のガスを抜き始めなければなりません。
操作に入ろうとするアメリアだったのですが、なんと想定もしなかったことが起こるのです!
(ネタバレなし)
『博士と彼女のセオリー』以来の名コンビ



今作の見どころのひとつに、主演フェリシティ・ジョーンズと、エディ・レッドメンの共演があります。
二人のコンビネーションは、2014年の『博士と彼女のセオリー』でアカデミー賞5部門のノミネートで実証済です。
出演者は、気球に乗った後は「二人だけ」。
上昇のウキウキ感から上空トップでの高揚感、そして降下に至るまでのギリギリの緊張感を伝えてくれる二人の演技力。
じっくりご覧ください。
そしてもうひとつの見どころは、映画の副題にもある「未来を変える」というキーワード!
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フェリシティ・ジョーンズ主演作、共通テーマ!
フェリシティ・ジョーンズの代表作はいくつもありますが、思いつくのはやはり強い女性を描いたもの。
「ひたむきさ」や「誠実さ」で、常に未来を見つめて真っすぐに行動する芯の強い女性を描いたものが多くあります。
前述の『博士と彼女のセオリー』は、有名な物理学者スティーヴン・ホーキングの生涯の話ですが、ALS障害で車いす生活を送る彼を献身的に支えた元妻の役です。
『ビリーブ 未来への大逆転』は、かつて男女平等裁判に尽力し今も法曹界で活躍するルース・ベイダー・ギンズバーグ氏を演じています。
そして、この映画。
周囲の大反対をよそに気球に乗り、自分が納得できるまで挑戦し続けた女性の姿を見せてくれます。
参考記事:『ビリーブ 未来への大逆転』
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