今回ご紹介するのは、余命わずかで引きこもり生活を送っている体重272キロの孤独な男性チャーリーが、疎遠になっていた娘との絆を取り戻そうと奮闘する映画『ザ・ホエール』です。
第95回アカデミー賞(23)で主演男優賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞の2部門を受賞した『ザ・ホエール』の感想と見どころを解説していきます。
(冒頭画像:引用https://twitter.com/thewhale_jp/)
『ザ・ホエール』:作品概要
映画タイトル | 『ザ・ホエール』 |
原題 | The Whale |
監督 | ダーレン・アロノフスキー |
出演 | ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン他 |
公開日 | 2023年(117分)【YouTube:予告編】 |
監督:ダーレン・アロノフスキー
監督を務めるのは『レスラー』(第65回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞)、『ブラック・スワン』(第83回アカデミー賞5部門ノミネート)などの作品を手掛けたダーレン・アロノフスキー。
映画『マザー!』以来、5年ぶりとなる監督作品です。
本作は脚本のサミュエル・D・ハンターが手掛けた同名戯曲に感銘を受けて、自らの手で映画化に着手した経緯があるそうです。
原案・脚本:サミュエル・D・ハンター
原作となった舞台作品の脚本を手掛けたサミュエル・D・ハンターが、引き続き映画の脚本も担当。
この作品はサミュエルの故郷アイダホが舞台になっていたり、彼自身がゲイであるなど、サミュエルの原体験も一部、影響を受けて作られています。
主演:ブレンダン・フレイザー
紀元前エジプトのミイラと戦うアクション大作『ハムナプトラ』シリーズで主人公のリック・オコーネルを演じたブレンダン・フレイザー。
『ハムナプトラ』以降は、心身のバランスを崩ししばらくの間ハリウッドの表舞台から距離を置いていました。
今作では、第95回アカデミー賞主演男優賞を受賞するなど、大々的に表舞台への復帰を果たしました。
『ハムナプトラ』のイメージが染み付いたブレンダン・フレイザーではなく、過去のイメージを払拭する演技が今後のブレンダン・フレイザーの役者としての可能性を大きく広げました。
●ブレンダン・フレイザー(Brendan Fraser)
誕生日:1968年12月3日生まれ
星座:いて座
身長:190cm
出身;アメリカ」・インディアナ州
▶おすすめの主な代表作品
※紀元前1290年。大司祭イムホテップ(アーノルド・ボスルー)は、王の愛人アナクスナムンと許されぬ恋に落ち、エジプト王家が眠る死者の都ハムナプトラで、生きたままミイラにされる極刑を受ける。時は流れて1926年。エジプト学者のエヴリン(レイチェル・ワイズ)は、元傭兵の冒険家リック・オコーネル(ブレンダン・フレイザー)の案内で、兄のジョナサン(ジョン・ハナ)と共にハムナプトラを探検に訪れる。【引用:Amazon】
主演:セイディー・シンク
Netfixドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のマックスをはじめ、町に取り憑いた呪いと対峙する『フィアー・ストリート Part2』、少年に迫る怪奇現象を描いた『イーライ』など多くの作品に出演。
注目若手俳優の一人となったセイディー・シンクです。
本作ではチャーリーの娘、悩める17歳の高校生エリーを演じます。
製作・配給:A24
※A24は、第95回アカデミー賞作品賞をはじめ、7冠に輝いた映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を製作した会社で今作の製作も行っています。
他にも『ミッドサマー』、『カモンカモン』、『ミナリ』など独特な世界観の作品を多く手掛けており、魅力を感じるファンも多い製作会社です。
■なにかと話題の※A24のこと【管理人・選】
A24 the works 【A24 スタジオ10年の歩み】SCREEN4月号増刊
※A24史上最大ヒットの話題作は、第95回アカデミー賞最有力作品と大評判!『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。ミシェル・ヨー インタビュー、映画ファンを惹きつける! A24の基礎知識、話題作と振り返るA24のあゆみ、A24に惹かれる4つの理由など【引用:Amazon】
『ザ・ホエール』:あらすじ
恋人のアランを失ったことで、現実逃避のために過食を繰り返している40代のチャーリー(ブレンダン・フレイザー)。
そんな彼は体重が272キロと歩行器を使わなければ移動ができません。
極度の肥満にもかかわらず、彼は入院することを頑なに拒否しています。
そんなチャーリーは、アランの妹であり唯一の親友である看護師リズ(ホン・チャウ)に頼り、大学のオンライン講座で生計を立てながら生活を送っています。
ある日、病状が悪化し余命が残り少ないことを知ったチャーリーは、離婚して以来長い間音信不通だった17歳の娘エリー(セイディー・シンク)と関係を修復しようと決意します。
ところが家にやってきたエリーは、学校や家庭でのトラブルに悩まされ、心が荒んでいました……。
当たり前の日常を取り戻そうと葛藤するチャーリーの人生最後の5日間に目が離せません。
『ザ・ホエール』:感想と見どころ
ブレンダン・フレイザーの復活劇
『ハムナプトラ』シリーズ以降、表舞台から退いていたブレンダン・フレイザー。
これまで筋骨隆々で、アクション俳優のイメージの強かった彼が今回は体重272キロの巨漢を演じ、見事アカデミー賞主演男優賞を獲得しました。
これまでのイメージを覆し、今後の活躍の可能性を大きく広げた裏には何があったのでしょうか?
ひとつは、※特殊メイクによる強烈な見た目でしょう。
約40日弱の撮影時、20キロ〜130キロのファットスーツを着用し、約4時間かけて準備をして、取り外す際も3時間ほどかかっていたそうです。
思わず本当に増量したのではないかと勘違いするほどのクオリティの裏には、並々ならぬ労力がかけられていました。
その甲斐もあり、第95回アカデミー賞では、メイクアップ&ヘアスタイリング賞も受賞しています。
■※ハリウッド・特殊メイクの世界【管理人・選】
メイクアップ・エフェクツ 世界の特殊メイク&メイキングブック
※世界の特殊メイクアップ・ アーティストと、映画やテレビの世界で高く評価されているメイクアップ・エフェクツを一冊に集約した保存版ビジュアルブック!(中略)帯にはアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を2度受賞した世界トップの特殊メイクアーティスト、Kazu Hiro氏のコメントを掲載!【引用:Amazon】
そして、もうひとつはなんといっても演技でしょう。
遠くのものを取る、シャワーを浴びる、寝室に移動する、など当たり前のことがうまくできない肥満症の苦しみや辛さ。
それが、ブレンダン・フレイザーの演技によってリアルに表現されています。
ちょっと手を伸ばすだけでも息切れをする、移動の時の重心移動など、実際に重たいファットスーツを着ているということもありますが、ひとつひとつの動きにとても繊細なリアルを感じるのです。
ブレンダン・フレイザーは多くのドラマ、コメディ、ドキュメンタリー、リアリティ番組を見て、肥満症に悩む人々の研究をされたそうです。
外見的な動きもそうですが、内面的な表現についてもブレンダン・フレイザーの演技は光っていました。
わずかな余命の中で、娘との絆を取り戻そうと必死にもがこうとするシーンはセリフ以上の想いが観てる側に伝わってきます。
数少ない登場人物の中で巻き起こる人間関係の変化に対して、揺れ動くチャーリーの心境を見事に演じていました。
ワンシチュエーションの室内劇
場面転換が少なく、セリフが多い、舞台脚本が原作ということで、室内で巻き起こる人間ドラマが非常に見応えがありました。
舞台脚本ならではの登場人物の入退室によって変化する展開が狭い室内をよりドラマチックにしていました。
人がいなくなったら寂しさを感じ、人が入ってきたらまた新しい物語が始まる。
当たり前のようですが、それを観る私たちもいつの間にか次の人物の登場を心待ちにしているのです。
それが舞台原作ならではの良さだと筆者は感じます。
娘との失われた絆
本作で一番見どころは、なんといっても娘との対話です。
思春期の反抗では済まされないような悪事も働いてしまうような17歳の娘エリー。
その原因になっているのは幼少期に父が同性パートナーと一緒になるために家を出て行ったことでした。
過去の因縁から父を許せない、素直に甘えられないエリーと、罪悪感を感じながら頑張って娘に近づいていこうとうする2人の駆け引きに目が離せません。
関連記事(父娘映画):映画『aftersun/アフターサン』あらすじ&キャスト、父娘のひと夏を描いた青春映画!
まとめ
本作は父チャーリー(ブレンダン・フレイザー)と娘エリー(セイディー・シンク)の関係性が一番の見どころです。
それ以外にもチャーリーの世話をしている看護師のリズ、宣教師トーマスとのやりとりなど面白い物語が多いのでぜひ、劇場でご覧ください!
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