“隠れた名作”紹介シリーズ第4弾!
今回は“コメディ”をテーマに5本ご紹介します。
日常生活においても、“面白い”には様々な意味が込められています。
映画においても、笑いに込めたメッセージを読み解くことは、私たちに深い考察を与えてくれるものです。
“コメディ”の中でも、特に強いブラックなメッセージが込められていると感じた作品を、(映画ライターHalleの独断と偏見で)ピックアップしました。
ぜひチェックしてみて下さい。(※ネタバレなしです。)
①『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(07)
この作品では(もちろん架空ですが)カザフスタンのジャーナリスト「ボラット」がアメリカを勉強すべく、助手を連れてアメリカの各地を訪ねるというストーリー。
既にご存知の方もいるかもしれませんが、非常に下品で、“問題作”のトップに君臨するような映画です。
私が“隠れた名作”として本作品を挙げた理由は、多くの人が「思っていても、口に出したり行動したりすることはモラル上やらないこと」を、あえて体を張って撮影されたものだからです。
それは、政治的なこと、差別的なこと、文化的なこと、国際的なこと、あらゆる方面から攻めています。
実際に、主演を務めたサシャ・バロン・コーエンは2007年ゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞しました。
非常に評価されている一方で、いきすぎた過激さに対して酷評している人がいるのも事実です。
84分が長く感じること間違いなし。
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(作品情報)
2020年に作成された続編『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』と併せて、ぜひお確かめ下さい。
(注意)改めてお伝えしますが、すべて架空です。
ドキュメンタリー風に作成されているため、非常にリアルな表情も映っていますが、あくまで架空の作品です。
②『サンキュー・スモーキング』(06)
タバコの宣伝を任されている営業マン、ニック・ネイラー(アーロン・エッカート)。
誰もが知っている“タバコは体に悪い”という既成概念をもちろん知りながらも、
「本当にタバコは毒なのか?」「死因にはほかの要因もあるのでは?」
という巧みな話術を使って、タバコの箱パッケージにドクロマークを付けるのを阻止するというストーリー。
映画を使ってタバコのイメージアップをするというアイディアも浮上し、映画好きにはなじみのワードがたくさん出てきます。
本作品では記載の通り、誰もが“タバコは体に悪い”という考え方を持っている中で、どのようなPR方法をするのかに注目です。
営業マンとしてのニックはもちろん、父親としてのニックも描かれており自分の仕事に向き合う一人の男性像という点でも楽しめると思います。
なお、タバコの話でありながら、ニックを含め誰一人としてタバコを吸うシーンが無いというのも、ブラックコメディを引き立てています。
■予告編など作品情報はこちらから【管理人・選】
サンキュー・スモーキング(作品情報)
※全米2006年度“1館あたりの興収No.1”を記録した、マスコミ大絶賛&最高にシュールな笑いのエッジー・ムービー。オレ流トークで世界をダマすその男、現代の禁煙ブームを完全焼却!【引用:Amazon】
③『ディック・ロングはなぜ死んだのか』(19)
「ディック・ロングが死んでしまった」――なぜ?
いい大人が羽目を外して、やってしまったアレコレ。
隠そうとすればするほど墓穴を掘る、そんなしょうもない展開が100分つづられる本作品。
タイトルの答えにたどり着いたとき、まさか、この答えを知るために自分の人生の100分を使ったのか?と思いたくなる作品です。
でも、どこか他人事とは思えない、背筋が伸びるような後味も人生への教訓に繋がります。
監督は、現在絶賛公開中『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダニエル・シャイナート。
クセになるようなテイストと、笑えるけど笑えないまさにブラックユーモア120%の映画です。
騙されると思いますが、騙されたと思って見て欲しい作品です。
関連記事:『Everything Everywhere All At Once』、アカデミー賞が注目したマルチバースの世界観!
■予告と作品情報
※ジーク、アール、ディックの3人は売れないバンド仲間。ある晩、練習と称しガレージに集まりバカ騒ぎをしていたが、あることが原因でディックが突然死んでしまう。やがて殺人事件として警察の捜査が進む中、唯一真相を知っているジークとアールは彼の死因をひた隠しにし、自分たちの痕跡を揉み消そうとする。誰もが知り合いの小さな田舎町で、徐々に明らかになる驚きの“ディックの死の真相”とは…?【引用:Amazon】
④『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(18)
スウェーデン映画より。
現代美術館の次なる目玉作品「ザ・スクエア」を宣伝すべく、スタッフたちはどのようにプロモーションするか話し合うことになる。
そこで出た案は、少々過激な内容であり、実際に社会では大炎上。
美術館に努める主人公クリスティアンの、なかなか思い通りに進まない、むしろ頑張れば頑張るほどおかしな方向に進んでしまう人生に、大きく共感すること間違いなしです。
第70回(2017年)カンヌ国際映画祭にて最高賞のパルムドールに輝いた作品です。
特に後半の晩餐会のシーンでは、好奇心や冗談から恐怖に一転する印象的な展開となっており、必見のシーンです。
おまけ:現在公開中の『逆転のトライアングル』も同じくリューベン・オストルンド監督作品であり、ブラックコメディが強く利いていてオススメです。
関連記事:映画『逆転のトライアングル』を考察、ブラックユーモアがあぶり出す世界の格差社会とは?
■予告編など作品情報
※有名美術館のキュレーターが巻き起こした大騒動を通じ、現代社会が抱える格差や差別といった問題を抉り出し、本当の正義や人間の本質を痛烈な笑いたっぷりに描く。【引用:Amazon】
⑤『ブラック・クランズマン』(19)
1970年代アメリカ。
まだまだ黒人差別が横行しており、白人至上主義を掲げる※クー・クラックス・クラン(通称:KKK)が全米に支部を持っていた時代。
KKKの過激な攻撃や考え方に警察も調査を進めていた中で、黒人警官ロンと白人警官フリップが2人で1人を演じ、KKKに潜入捜査を行います。
突拍子もない方法ですが、実話ベースという驚きの物語。
差別問題にメスを入れ続ける、スパイク・リー監督作品。
一方で、本作品は堅苦しくなく、白人訛りを使いこなす黒人警官ロンに思わず笑ってしまうシーンもあれば、相方の白人警官フリップがKKKでふるまう姿など、面白さをしっかりと見せながら“差別”という大きなテーマがしっかりと伝わってくる傑作です。
■作品情報と原作本の紹介【管理人・選】
※黒人刑事がKKK〈白人至上主義団体〉に潜入捜査する大胆不敵な実話!!黒人刑事〈電話対応〉と白人刑事〈対面潜入〉が二人で挑むのは、史上最も不可能な潜入捜査…過激派組織“KKK”に潜入し、悪事を暴け!!【引用・Amazon】
※19世紀半ば、南北戦争直後にアメリカ南部で組織された、白人至上主義結社クー・クラックス・クラン。1920年代、会員数は数百万人に達したといわれ、現在でも、全米で5000人が「クラン」と名のつく組織に所属しているといわれる。なぜ、クランの火種は燻りつづけるのか。世界的に排外主義の潮流が強まるなか、KKK盛衰の背景とメカニズムを考察する。【引用:Amazon】
まとめ
いかがだったでしょうか。
これまで観てきた映画の中でもかなり濃いブラックコメディをピックアップしました。
後味は苦いですが、自分の生活や周りで起きていることを考え直すきっかけになりそうなものばかりです。
観たことがない作品があれば、ぜひチェックしてみて下さい。
次回のテーマ:音楽
隠れた名作シリーズ最終回のテーマは「音楽」
お楽しみに!
《ライター:Halle》
暇さえあれば、映画観る!がモットー。
映画が好きになったきっかけは、時間を持て余していた大学時代。
うかつにも数々のシリーズ映画に手を出してしまったのです。
Marvel、DC、スター・ウォーズ、トランスフォーマー、パイレーツ…
今ではすっかり映画が生活の一部になってしまいました。
Twitterでも、気ままに映画・海外ドラマネタでつぶやいています。
良かったら覗いてみて下さい(^^)//
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