SF映画は、「宇宙モノ」「地球侵略」「海底探検」「タイムマシン」などいろいろな題材があります。
どの題材も、日々進化する科学的根拠に裏付けされ、真実味のあるフィクションになってきました。
中でも、最近、進化の著しいのが「AI」(人工知能)の世界。
そのAIが実現させた人造人間が「ヒューマノイド」です。
人間に限りなく近づく機械、ヒューマノイドとは?
これまで機械やロボットと呼ばれていたのものが、頭部にはAIを搭載、姿かたちを限りなく人間に似せることで「ヒューマノイド」という存在が実現したといえます。
ヒューマノイドとは、語源的には言うまでもなくヒューマンがベースで意味としては「人間のようなもの」。
人間のような機械、ロボットのことを指しますが明確な定義はありません。
言葉で説明するより、世界の画像集積サイトPinterestに集まった「ヒューマノイド」でイメージを膨らませて下さい。
さて、今回のテーマは「ヒューマノイド映画」。
映画では、さらに現実感のあるヒューマノイドが見られます。
フィクションとは言いつつも、映画や原作となったアニメの世界観を覗いてみると近未来が透けて見えるかも。
SFはどんな未来を描き、人間とヒューマノイドはどう共存(あるいは決裂?)していくのでしょうか。
代表的なヒューマノイド映画を紹介しながら、3つのパターンを紹介していきましょう。
『アリータ: バトル・エンジェル』、人間以上のやさしさ
ひとつめは、人間的な優しさを持ちつつも、強靭なパワーで他を圧倒するヒューマノイド。
実写アニメ『アリータ:バトル・エンジェル』から、「アリータ」を紹介しましょう。
日本の漫画家、木城ゆきと氏の「銃夢(ガンム)」が原作で、『アバター』『タイタニック』のジェームズ・キャメロン監督が製作したハリウッド映画です。
いきなり目の大きい少女が出てきてビックリ!
彼女が、この映画の主人公「アリータ」(ローサ・サラザール)です。
考えれば、あのミッキーマウスだって不二家のペコちゃんだって顔の割に大きな目!
すぐ慣れるので安心して下さい。
●ローサ・サラザール(Rosa Salazar)
誕生日: 1985年7月16日 (かに座)
身長:163cm
出身:カナダ・コロンビア州
▶おすすめの代表作品
ルーツはクズ鉄の山から拾われた、頭部だけのサイボーグ
彼女のルーツは、地球が火星連邦共和国(URM)と存亡をかけた没落戦争から300年後の世界。
地球はかろうじて残ったものの、富裕層の住む空中都市ザレムと、貧困の街アイアンシティに2分されます。
貧困の街アイアンシティは、文字通り、鉄くずの街。
人々は、ザレムの富裕層が排出するゴミを糧として暮らしていました。
サイバネティクス専門の医師イド(クリストフ・ヴァルツ)もその一人。
彼がゴミ山から見つけたのは、サイボーグの頭部らしき塊。
再利用できないかと持ち帰ったイドにより、修復されたのがアリータです。
かつての闘士の記憶を持つアリータ、目覚めた彼女を狙う敵
後ほどわかるのですが、アリータは没落戦争時代の戦士。
修復したイドさえ驚くパワーを持っていたのです。
はじめて見るアイアンシティの街はすべてが新鮮で、男友達ヒューゴ(キーアン・ジョンソン)もできました。
そんなある日、夜な夜な出歩く恩人イドの後を追いかけたアリータはイドを襲う者に遭遇。
この街は、賞金首のかかった犯罪者と、賞金稼ぎである「ハンター・ウォリアー」が日々バトルを繰り広げていることを知ります。
イドを助けに向かうアリータ。
この時、はじめて彼女は自らの持つ、恐るべきパワーに気付くのでした…。
見どころは人気スポーツ、「モーターボール」でのつぶし合い!
とにかくアリータのパワーは半端ではありません。
彼女の力は悪の支配者ベクター(マハーシャラ・アリ)に知られるところとなり、我がモノにしようと狙われることに。
見どころは、街の人気スポーツ「モーターボールゲーム」でのつぶし合戦。
小柄で素手に近い彼女は、殺人兵器をフル装備した連中に猛然と挑みます。
恩人に敬意を払い、友人とも交流のできる優しいヒューマノイド・アリータ。
最終目的は、アイアンシティを支配する富裕層の空中都市ザレムであることは間違いありません。
『ゴースト・イン・ザ・シェル』、頭部に残る生体脳
アリータから思い起こす、もうひとりのヒューマノイドがいます。
それは『ゴースト・イン・ザ・シェル』の、ミラ少佐(スカーレット・ヨハンソン)です。
頭部に、「草薙素子」という女性のわずかな生体脳を残すだけで、あとはすべて義体の彼女。
アリータ同様、日本のアニメ「攻殻機動隊」(押井守監督)をベースにしたヒューマノイド・ストーリーです。
どちらにも共通しているのが、精巧かつ強靭な一方で、生身の人間同様のこころを持ったヒューマノイドが描かれているところです。
合わせて、ご覧ください。
●スカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)
誕生日:1984年11月22日生まれ(いて座)
身長:160㎝
▶おすすめの代表作品
『エクス・マキナ』、試作段階のテストをされるヒューマノイド!
「アリータ」や「ミラ少佐」は、十二分に発達したAI技術やテクノロジーに支えられているヒューマノイドですが、次に紹介するのは、まだ過渡期と言ったところです。
SFサスペンス映画『エクス・マキナ』は、試行錯誤でヒューマノイドを製作するという、現代にもっと近い時代かもしれません。
映画の中では、聞きなれない「チューリングテスト」という言葉が出てきます。
これは、ヒューマノイドの試作品を生身の人間と対面させることで完成度をみるテストのことです。
映画では、女型ヒューマノイドの試作品「エヴァ」(アリシア・ヴィキャンデル)にひとりの若い男性が向き合います。
●アリシア・ヴィキャンデル(Alicia Vikander)
誕生日:1988年10月3日(てんびん座)
身長:168cm
出身:スウェーデン
▶おすすめの代表作品
トゥームレイダー ファーストミッション(予告編:Amazon) (映画ポスター:楽天)
エクス・マキナ (予告編:Amazon) (映画ポスター:楽天)
※顔も声も、最高にかわいい「エヴァ」。ただ、体はスケルトンの機械構造が透けて見えるというヒューマノイド!
キレイな女性の顔と、スケルトン仕様のヒューマノイド!
IT企業にプログラマーとして働くケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、社長ネイサン(オスカー・アイザック)の研究テーマを手伝う助手に選ばれ、人里離れた研究所に赴くことに。
仕事は、秘密裡に開発したヒューマノイド「エヴァ」のチューリングテストでした。
秘密保持契約まで結ばされ、ケイレブが対面したのは一見、女性。
しかし、体はメッシュのようなスケルトン仕様。
見るからに、ロボット然としたヒューマノイドだったのです。
ヒューマノイドに、突如ささやかれた言葉とは?
ガラス越しだが、はじめての出会いで自己紹介しあう二人(実際には一人の人間と、ヒューマノイドが一体)。
透けて見えるスケルトン仕様のエヴァ以外は、若い男女の初対面の会話となんら変わりません。
もちろん、このやりとりはネイサンが別室からモニターで観察をしています。
次第に親しく会話しあう二人。
少し慣れてきたケイレブは、綺麗なエヴァに「女性」を意識し始めるのでした。
そんなある日、突然の停電となり二人の部屋の電気が消えます!
そしてエヴァがささやいた言葉に、ケイレブは思わず耳を疑うのでした。
「彼(社長)を信用しないで。彼が言うこと、すべて!」
上司だと信用していたネイサンは、いったい何者?
いや、それ以上に自らを設計し生み出した製作者を否定するエヴァは人間?
ケイレブの疑問は一気に膨らむとともに、ヒューマノイドであるエヴァの考えていることを知ってしまうのでした…
「こころ」をもつヒューマノイド。しかし、中身の違いが鮮明に!
ヒューマノイドがこころを持つ?
実は、アリータにもミラ少佐にも、原作者はこころを持たせていました。
人間と同じレベルの友情や協力心、悪への反発意識など、人間を味方と考える「こころ」でした。
しかし、『エクス・マキナ』のエヴァにあった「こころ」は違う種類のものだったのです。
少なくとも人間ケイレブが、ヒューマノイド・エヴァを理解し交流しようとした優しいこころではなかったのです。
もし人間以上、そして人間をもコントロールしようとするヒューマノイドだとしたら…。
映画の最後に知り、愕然とせざるを得ません。
『ブレードランナー 2049』、旧型から新型レプリカントへ!
2019年11月、酸性雨の降りしきるロサンゼルス。
元ブレードランナー、リック・デッカード(ハリソン・フォード)は、人間に反乱する「レプリカント」と呼ばれるヒューマノイドを追跡するため、再び市警に呼び戻されていた…。
日付を見てびっくり!
これは1982年に公開された映画『ブレードランナー』の出だしで、描かれた世界は30年後の2019年だったのです。
今、環境汚染が映画ほど進んでいないことにちょっとひと安心する一方で、レイチェルのようなヒューマノイドも存在していない(はず)です。
さて、続編となるこの映画『ブレードランナー 2049』。
2019年からさらに30年後、2049年を描いた映画です。
●ハリソン・フォード(Harrison Ford)
誕生日:1942年7月13日(かに座)
身長:185cm
出身:アメリカ・イリノイ州
▶おすすめの代表作品
人間がヒューマノイドを増産する理由とは?
今作に登場する「レプリカント」と呼ばれるヒューマノイドは、宇宙開拓が盛んになった結果、最前線の労働力や戦闘兵力を確保するため増産されていました。
これが旧型レプリカントなのですが、人間の奴隷のような仕事や兵役から逃れたい思い始めた彼らは、いつしか人間社会の中に紛れ込んでしまおうと画策し出します。
少なくとも外見から「レプリカント=ヒューマノイド」を見つけるのは不可能でした。
そんな連中を見つけ出す専門捜査員が「ブレードランナー」で、前作ではデッカードであり、今作では主人公K(ライアン・ゴズリング)です。
新型レプリカント、ネクサス9型のミッションは?
Kの任務は、K自身が新型のネクサス9型レプリカントとして、旧タイプのレプリカントを一掃してしまうことでした。
新型はより任務に忠実で、寡黙ではあるが本部の指示通りに仕事をこなしていきます。
ところが、ある日の任務で抹殺した旧レプリカントの家の枯木の下から、意外なものを発見。
それは、人間?の遺骨でした。
本部に持ち帰り精検した結果、製造番号の刻まれた旧レプリカントであることが判明。
名前は、女型ヒューマノイド「レイチェル」で、妊娠後に出産するも死亡していたことまでわかってしまったのです。
ヒューマノイドが、人間社会に同化していく未来?
本部は事の重大さに、色めき立ちます。
ヒューマノイドがまさか、出産をしたというのは事実なのか?
事実とすれば、今、その子供は?
なにより、ヒューマノイドを人間に似せ過ぎた製造物とはいえ、出産するとは到底考えられない。
それは、今ある人間とレプリカントを区別する現体制を全否定することになるのです。
本部より、事実解明の特命を受けたKは、いったい30年前に何があったのかを探ることに。
すると、ここでつながってくるのが前作との関連です。
Kが行き着いた先にあったのは、なんと30年前の捜査官デッカードだったのです。
前作では、デッカードはレプリカントであるレイチェルを処分することになっていたのですが、こともあろうかレイチェルに好意を寄せた後、一緒に逃避行してしまっていたのです。
映画では、ヒューマノイドの出産の真実が明かされます。
【追記】
なんと『ブレードランナー2099』のクランクイン・ニュースが現実味を帯びています。
年数からわかるように、さらに半世紀後。主演にミシェル・ヨーとハンター・シェイファーの名前が出ています!
まとめ
映画に出てくるようなヒューマノイドは、まだまだ先?
でも、『エクス・マキナ』のようなチューリングテストをどこかで誰かがやっているかもしれません。
また、失敗とわかった試作品を廃棄処分にしているかもしれません。
ヒューマノイド映画を観るといくつかの特徴的なことがわかります。
共通点は「ディストピア」。
少なくともユートピアではない、退廃している未来、あるいは退廃しつつある未来の中で描かれています。
ぜひ、映画でお確かめください。
《推論》
1.ヒューマノイドの方が、生身の人間より「人間らしい」
2.「人間らしい」ヒューマノイドは、いつしか人間を超えようとしている
3.人間とヒューマノイドを区分するのは、「脳」もしくは脳に残った電子記号としての「記憶」
4.ヒューマノイドの英雄は「女子型」が多い
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