『ボヴァリー夫人』と聞けば、誰もが思い出すのは、フランスの小説家ギュスターヴ・フローベール原作「ボヴァリー夫人」。
19世紀フランス文学の名作と言われた官能小説で、何度か映画化もされています。
しかし、残念ながら今回紹介する『ボヴァリー夫人とパン屋』はそれとよく似ているのですが、ちょっと事情が違っていました。
今作は、しゃれっ気タップリに「ボヴァリー夫人」をなぞって作られた映画だったのです。
もちろん、一時は風紀紊乱(びんらん)な小説とまで言われたあの官能性はそのままでした。
監督は、『ココ・アヴァン・シャネル』や『白雪姫〜あなたが知らないグリム童話〜』などの話題作を手掛けた女性監督のアンヌ・フォンテーヌ監督です。
●アンヌ・フォンテーヌ監督(Anne Fontaine)
誕生日:1959年7月15日生まれ
星座:かに座
出身:ルクセンブルク
▶おすすめの代表作品
※爽やかな風景とパンの香りをバックに、新鮮な官能を味わえます。
官能的なイギリス夫人に、ジェマ・アータートン
原作を「なぞる」とは、どういうことでしょう。
この映画のポイントは、官能的なイギリス夫人、ジェマ・ボヴァリー(ジェマ・アータートン)を追いかける、もう一人の主人公マルタン(ファブリス・ルキーニ)の秘密にあります。
パン屋を営むマルタンは本好きで、なんと彼の愛読書が前述の「ボヴァリー夫人」!
彼は、その官能小説のストーリーを現実に被せて妄想化させるのですが、最後にはとんでもない結末を迎えるという構成なのです。
いわば、ギュスターヴ・フローベール原作のストーリーを拝借し、抒情的かつコミカルに仕上げた面白い映画です。
●ジェマ・アータートン(Gemma Arterton)
誕生日:1986年2月2日生まれ
星座:みずがめ座
身長:170㎝
出身:イギリス
▶おすすめの代表作品
※ジェマ・アータートンのアクションはなかなか見ごたえがありますよ!
※爽やかな風景とパンの香りをバックに、新鮮な官能を味わえます。
あらすじ:ノルマンディーの田舎町に、美人の引越者が
舞台は、フランス・ノルマンディー地方の、緑豊かな田舎町。
そこでパン屋を営む中年男性マルタンの近所に引っ越してきたのは、ボヴァリー夫人とその夫。
紹介されたマルタンは、夫婦の名前が今まさに読んでいた本「ボヴァリー夫人」と同じ名前だったことで一気に気になる存在へと。
しかも、夫人は、色香の漂う美人だったのでなおさらです。
マルタンは、挨拶の後、ぜひ自分の店に来てくれるように誘います。
来店のボヴァリー夫人、喜ぶパン屋のマルタン
近所に突然あらわれた美人に気を取られ、いつも遠目に眺めて過ごしていたマルタン。
そんなある日、憧れのボヴァリー夫人が夫婦一緒に自分のお店を訪問してくれたのです。
ここぞとばかりに、自慢のパン作りについて蘊蓄(うんちく)を語るマルタン。
彼の話にジッと耳を傾けていたボヴァリー夫人は、聞き終わるとマルタンの作り立てのパンを一切れそっと口にします。
このシーンは、映像でありながら、本当にパンの香しさが漂ってきそうですよ。
●ファブリス・ルキーニ(Fabrice Luchini)
誕生日:1951年11月1日生まれ
星座:さそり座
身長:173cm
出身:フランス・パリ
▶おすすめの代表作品アムール、愛の法廷(予告編)
※とにかく、ファブリス・ルキーニの表情筋をたくみに使った顔演技はセリフが一切なくてもすべてを語ってくれます。
パン生地と一緒に膨らむ、マルタンの妄想
何度かマルタンの店を訪問するうちに、すっかり馴染み客となったボヴァリー夫人。
パン作りに興味をもったボヴァリー夫人に、マルタンは作り方のコツを手を取りながら教えます。
ピッタリと寄り添いながらパン生地のこね方を教えるマルタン、彼の心臓から鼓動が聞こえてきそうです。
同時に、官能的な妄想が彼の中で膨らんでいきます。
まさに愛読書、「ボヴァリー夫人」をなぞっているマルタンの自分勝手な妄想だったのです。
そして、小さな町のこと、なにかと夫人の行動が目に付きます。
ボヴァリー夫人の、不倫現場をついに発見
ある日のこと、マルタンはボヴァリー夫人がイケメン青年と密会している現場を見つけてしまいます。
ボヴァリー夫人の旦那がしばらく不在なのが気がかりだった矢先のこと。
これって、今で言えばある意味、ストーカーかもしれませんね。
青年は学生で、長らく留守であった近所の大きな屋敷に受験勉強で戻ってきていたようです。
余計なことと思いつつ、なんとマルタンは不倫の二人に干渉し始めます。
なぜなら、「ボヴァリー夫人」は小説の中で不倫の果てに自殺をすることになっていたので気が気でなかったのです。
落ち着かない日々、さらに元カレの登場
ボヴァリー夫人の不倫現場を見てしまい、ただでさえ落ち着かないマルタン。
ある日、さらに彼を動揺させる出来事に出会います。
注文のパンを家に届けた時に見つけたのは、夫人の家にしつこくやってくる男で元カレのようでした。
そして、とんでもない事件が起こります!
この日も、元カレが夫人の家を訪問した時、玄関先にはマルタンの作ったパンがおいてありました。
事件とは、元カレがそのパンを夫人に渡し、彼女がパンを食べた直後に起こったのです!
まとめ~映画は謎解きミステリーへ~
さて、ここでの映画のネタバレはありません。
最後のエンディングまで、謎解きミステリーを楽しんで下さい。
今作は最初から夫人の色気をコミカルなタッチで描いていくのですが、後半にかけ夫人の行動が怪しくなります。
気になるのはやはり、マルタンが愛読書と被らせたボヴァリー夫人の生死のこと。
ヒントは、不倫現場で「男と女が愛し合っていた」という目撃証言。
しかし、二人は何かのトラブルがあったために「もみあっていた」としたらどうでしょう?
最後まで楽しませてくれる、なかなか面白いミステリー映画ですよ!
フランス映画らしい上質な作品でしたよね。主人公の妄想もここまでくると変態の域かも?と思いながら見ていました(笑)この作品の中でジェマ・アータートンが着ていたワンピースがとても素敵で、真似したい!とも思っていました。セクシーなのに品格を兼ね備えた女優さんですが、そこまで有名でないのが惜しいですね。ジェマ・アータートンといえばライアン・レイノルズと共演した「ハッピーボイス・キラー」というB級ホラー映画がなぜか結構印象に残っています。
「ジェマ・アータートンが着ていたワンピースがとても素敵で、真似したい!・・・」、さすが目の付け所が素敵ですね。ジェマ・アータートンは好きな女優のひとりです。そして、今作で変態チックな役どころに徹した、ファブリス・ルキーニの演技ですっかりファンになりました。パンの香りと、ノルマンディ地方の自然がミックスした素敵な映画です。