英語学習でイディオム(熟語)の数が増えてくると英文や英会話の脈絡をつかみやすくなります。
イディオム単体で意味が通じるものがあるので、すべての単語がわからなくとも話しの大筋がつかめるからです。
とはいえ、イディオムをたくさんノートに書き込んで暗記しようとしても大変です。
実際に使えるようになる前に飽きてしまいそうですよね。
そんなときは、生の英語が聞ける映画を使ってイディオムを勉強してみるのがおススメです。
『ゲット・アウト』には、意味深で面白い英語表現が
今回は、ホラー映画『ゲット・アウト』を紹介します。
タイトル自体がイディオムで、意味は「出ていけ」ですが「逃げろ」とも解釈もできます。
『ゲット・アウト』には、他にも意味深で面白い英語表現が出てくるのであわせて見ていきましょう。
『ゲット・アウト』あらすじ
プロカメラマンとしてニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人のクリス・ワシントン(ダニエル・カルーヤ)。
彼には白人女性ローズ・アーミテージ(アリソン・ウィリアムズ)という恋人がいる。
ある日、クリスはローズの実家を訪ねるプランを立てていた。
恋人が黒人だと知ったらローズの両親はどう思うだろうかと不安がるクリス。
しかし、アーミテージ家に着くとクリスは熱烈に歓迎されるのだった。
ひと安心したクリスだが、使用人の黒人たちのふるまいや話しかたに違和感を感じていた。
翌日行われたパーティーでクリスは黒人の青年を見つけ気さくに話しかける。
しかし、ここでも何かがおかしい。
クリスは説明できない違和感のなかでアーミテージ家の正体を知ることになるのだった。
ぜひ聞き取ってほしい、おすすめ英語表現
Are You Ready For This?
恋人のローズが何度となくクリスに聞くセリフ。
Are you ready for this? 準備はいい?
日常英会話で普通によく使われるフレーズです。
しかし、このフレーズはクリスが体験する恐怖を予見していて映画を観終わるとセリフの意味に怖ろしいものを感じます。
Get Out
映画タイトルであり、ひとつの見せ場です。
クリスはアーミテージ家のパーティーで見かけた黒人の青年ローガン・キング(ラキース・スタンフィールド)に気さくに話しかけます。
しかし、ローガンの紳士ぶった口調はまるで歳を召した白人男性の様でした。
しばらくして、クリスは日本人のゲストから現代における黒人について聞かれ答えに困っていました。
近くにいたローガンに話をふったものの、ローガンの答えはまたもや黒人らしくない。
クリスはあきれ気味にローガンの写メを撮ろうと携帯をとり出します。
写メをとった瞬間、フラッシュをあびたローガンの様子がおかしい。
鼻血を出したローガンはクリスに叫ぶのでした。
Get out! 出ていけ!
Get outta here! Get outta here!
ここから出ていけ! 逃げるんだ!
Get outta here! は Get out of here!を省略したもので、ローガンの口調はここでは黒人らしい言い方になっています。
命令調の get out は「出ていけ」の他に「逃げろ」という意味もあります。
急な出来事にクリスはじめ周りのみんなは驚きますが、落ち着きを取り戻したローガンが戻ってきます。
しかし、ローガンの口調はふたたび上品な紳士風の話し方に戻っていました。
Well, I’ll have to let you all get on the rest of the night without
the aid of my marvelous wit.
では、みなさん わたしのウィットに満ちたお話はおあずけになりますが これにて失礼します
黒人であって黒人でない⁈
言葉のチョイスや上品な口調に気味が悪く感じられるシーンです。
Black Is In Fashion
アーミテージ家のパーティはゲストが白人ばかり。
黒人のゲストはクリスだけで、居心地の悪さは隠せません。
さらに夫婦と思われる白人の中高年男女からこんな話を聞かされます。
このシーンには in fashion「~が流行りだ」というイディオムが出てきます。
Fair skin has been in favor for, what, the past hundreds of years.
白い肌が人気だったのは そうだな 100年以上前のことだ
But, now the pendulum has swung back. Black is in fashion!
今じゃ流れは変わりブラックの時代さ!
黒人に憧れをあらわすような言葉ではありますが、クリスはウンザリしてしまいます。
Snitch vs Tattletale
アーミテージ家の使用人ジョージナ(ベティ・ガブリエル)とクリスの間でもどこかかみ合わない違和感のある会話があります。
クリスが部屋に戻るとだれかが携帯をいじった跡がありました。
ふり向くとジョージナが自分がやったと謝るのですが、クリスは言いつけたりしないから気にしないでと言います。
ここでクリスとジョージナの言い回しに妙な差があるのです。
クリス:
It’s fine. I wasn’t trying to snitch.
気にしないで。言いつけたりしないから。
ジョージナ:
Snitch?
言いつける?
クリス:
Rat you out.
告げ口だよ。
ジョージナ:
Tattletale!
密告という意味ね!
おたがい同じ意味のことを言っているのですが、クリスはスラングを使いジョージナはどちらかというと格式ばった堅い英単語を選んでいます。
また、クリスは白人ばかりで気が滅入るだろと言うと、ジョージナは「そんなことはない」と笑顔なのに大粒の涙を流しながら答えるのです。
「話していることと考えていることが逆なのでは?」と思える気味の悪さが怖い。
A Real Doggone Keeper
このシーンでは、学校で習う英語ではお目にかからない面白いフレーズを聞くことができます。
アーミテージ家の周りを散策していたクリスは薪割りをしていた使用人ウォルター(マーカス・ヘンダーソン)に挨拶します。
自己紹介するクリスにウォルターは、「キミのことは知っている」とぶっきらぼうに応えるのでした。
そして、ウォルターはすべてを見透かしたようにローズについて話しつづけます。
ウォルター:
One of a kind. Top of the line.
どこにもいない 最高の娘だろ
A real doggone keeper.
ほんと 手放せないよな
doggone とは「やっかいな」という意味。
ウォルターは、「素敵すぎて、ずっとそばにいたい」という反対の解釈で使っています。
それにしても、話しぶりや目つきにまったく別人格が現われている不気味なシーンと言えるでしょう。
まとめ
映画『ゲット・アウト』を通してタイトルの意味や、劇中に出てくるイディオム、面白い英語表現を紹介しました。
人種差別や黒人への行き過ぎた憧れを描いたブラックホラーですが、言葉のチョイスがユニークで印象に残ります。
本作を監督したジョーダン・ピールはコメディアンとして活躍してきた役者で、『ゲット・アウト』が監督デビュー作品だとか。
ホラー映画ながらグロテスクなシーンはほとんどなく、人種問題をベースに言葉の言い回しや表情を使って怖い作品に仕上げています。
また、ピール監督の最新作『NOPE /ノープ』が2022年8月開です。
因みに映画タイトル「 Nope」 とは、友だちなど近しい間柄でよく使う「 No 」を強調したスラングです。
コチラも期待できそう!
《ライター:kisaragi》
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