
お気に入りの映画を見つけた時、同じ監督の作品ばかり見漁ってしまうことはありませんか?
筆者もなは、近年ルカ・グァダニーノ作品にハマり、新作が公開される度に鑑賞してきました。
グァダニーノ作品の醍醐味の1つは、美しい情景×詩的なエロティック描写。
彼の世界観を味わうことができる作品3選の考察と、新作情報をお届けします!
(冒頭画像:引用https://variety.com/2024/film/columns/)
➊『胸騒ぎのシチリア』(15)

グァダニーノ監督の名を世界に知らしめた「欲望3部作」。
他に『ミラノ、愛に生きる』『君の名前で僕を呼んで』とある中で、今回は『胸騒ぎのシチリア』を紹介します。
世界的ロックスターのマリアン(ティルダ・スウィントン)は、シチリアのパンテッレリーア島で年下の恋人とともにバカンスを楽しんでいました。
ところがそこに、元恋人のハリー(レイフ・ファインズ)が、娘と名乗る若い女を連れて押しかけてきます。
4人の男女は互いの欲望を募らせ、やがて思いもよらぬ事件を引き起こしてしまい…。
欲望は時に美しく、そして破壊的

本作は、かの名作『太陽が知っている』のリメイク版にあたります。
後に紹介する『チャレンジャーズ』と同じく、男女の三角関係、本作の場合は「四角関係」を描いた作品。
「欲望」と聞けばドロドロしたイメージですが、グァダニーノ監督の手にかかれば、男女の駆け引きもトラブルも、1つのアートのように美しく見えてくるのです。
パンテッレリーア島の心癒される風景と陽気な音楽とは裏腹に、物語はどんどんサスペンス色を強めていく…。
緩急の付け所も小気味良く、グァダニーノ入門としてぜひ観てほしい一作です。
➋『ボーンズ・アンド・オール』(22)

売れっ子俳優ティモシー・シャラメが、人喰い役を演じる!
そんなセンセーショナルな触れ込みで話題になった本作。
物語は、人を喰べてしまう衝動を持った少女・マレン(テイラー・ラッセル)が家出するところから始まります。
孤独に彷徨い歩くマレンは、やがて同族のリー(ティモシー・シャラメ)という青年と出会い…。
2人は互いに惹かれ合い、危険な逃避行に身を投じていくのです。
大袈裟ではなく、これは「全ての人の物語」

人喰い(カニバリズム)と聞くと、何か恐ろしく、自分とは関係ない世界の存在のように思えませんか?
しかしこの作品は、今の世に生きる人々の孤独や「拠り所のなさ」といった普遍的な苦しみを描いています。
マイノリティーであるが故に孤独なマレン。
そんな彼女がリーと出会い、救われると思いきや、2人の関係は刹那的でどこまでも不安がつきまといます。
アイデンティティーと「他者と繋がりたい」という想いの対立、この孤独感に共感できる人は多いのではないでしょうか。
ホラー的な映画と食わず嫌いするのはもったいないほどの作品です。
➌『チャレンジャーズ』(24)

本作『チャレンジャーズ』は、グァダニーノ×スポーツ映画という新鮮な組み合わせ。
蓋を開けてみると、グァダニーノ作品の中でも傑作と呼ばれるほど評価される結果になりました。
物語は簡潔に言うと「男女の三角関係を描いたスポ根映画」。
大怪我により選手生命を断たれた、人気テニスプレーヤーのタシ(ゼンデイヤ)。
彼女の新たな生きがいとなったのは、自分に好意を寄せる親友同士の2人の男子テニスプレーヤーを愛することでした。
一見すると、1人の女性をめぐる恋物語。
しかしテニスゲームが進むごとに、3人の秘めた想いが明かされていき…。
意味深なラストシーン、あなたはどう考える?

テニスゲームと男女の駆け引きを重ね合わせるようにして、物語が進んでいく本作。
タシというミューズをめぐり、2人の青年パトリック(ジョシュ・オコナー)とアート(マイク・ファイスト)が競い合い、そしてテニスにおいてもライバルとして高め合っていきます。
いわばタシを「トロフィー」に見立てているのであって、不思議とテニスゲームにエロティシズムを感じるのです。
それは、テニスのラリーにベッドルームでの触れ合いや男女の口喧嘩と同じ鼓動が息づいているから。
ただのスポ根映画じゃないところが、さすがグァダニーノと言うべきなのでしょう。
やがて物語はラストシーンへと収束していくわけですが、これまた意味深な終わり方。
主演のゼンデイヤも、自身の母親とラストシーンの解釈が分かれたと語っていたほどです。
タシが発する最後のあの一言、あなたならどんな風に考えますか?
新作『Queer』:荒涼としたメキシコの地で愛に狂う

2025年5月9日(金)日本公開の、グァダニーノ最新作『Queer』。
『007』シリーズのダニエル・クレイグが主演を務めます。
本作の舞台となるのは、1950年代のメキシコ。
クレイグ演じるアメリカ人駐在員・リーは、酒や薬に溺れることで孤独な日々をやり過ごしていました。
しかしある日、若く美しくミステリアスな青年中ユージーンに一目で恋に落ち…。
愛を求めるほどに渇いていく男の姿を描いていきます。
映像面では、50年代メキシコの空気を見事に表現しているとの前評判が。
グァダニーノ監督お得意の映像美の中で、どのような物語が展開されていくのでしょう?
●ルカ・グァダニーノ監督(Luca Guadagnino)

誕生日:1971年8月10日生まれ
星座:しし座
出身:イタリア・シチリア州
▶おすすめの代表作品
まとめ
グァダニーノ監督の作品を見終わると、いつも抜け殻のようになってしまいます。
それほどまでにラストの余韻が凄まじく、ふと我に返って猛烈に作品を考察したくなるのです。
美しく詩的なグァダニーノの世界に、ぜひ足を踏み入れてみてください。
《ライター:もな》 クリックで担当記事の一覧へ→

ウェス・アンダーソン作品の世界観が大好き!ライターの「もな」です。
映画にどハマりしたのは、小学生の頃に『ロード・オブ・ザ・リング』を観てから。
それからというもの、映画は私の人生にとって欠かせないもので、大学では映画学を専攻しました。
私の書く記事が、誰かと素敵な映画との出会いの場になったら嬉しいです。
記事へのご感想・関連情報・続報コメントお待ちしています!