闇深い豪華絢爛な世界に彷徨うと、一度見たら忘れることが出来ない容姿のクリーチャーたちが登場するダークファンタジー。
今回ご紹介する『パンズ・ラビリンス』は、後にも先にもここまで素晴らしいダークファンタジーの傑作に出逢うことはないと断言したくなるくらい感銘を受けた作品です。
特撮の神様と呼ばれる円谷英二や、スタジオジブリを敬愛するアカデミー賞受賞監督ギレルモ・デル・トロにしか生み出すことのできない、独特の世界観は鑑賞してから十数年経っても色濃く記憶に残ります。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/ElLaberintoDelFaunoMex/)
ある意味、舞台や本では体験することできない、映画にしか生み出すことが出来ない夢幻的な空間。
日本での再上映を観る前に本作について振り返ってみたいと思います。
『パンズ・ラビリンス』:あらすじと概略
スペイン内戦後、1944年。
父を亡くし、独裁主義の恐ろしい大尉と再婚してしまった母と暮らすオフェリアは、この恐ろしい義父から逃れたいと願うばかりに自分の中に新しい世界を創り出していきます。
屋敷の近くに迷宮を見つけ出したオフェリアが足を踏み入れると、迷宮の番人パンが現われる。
そして、彼女に危険な試練を3つ与えるのでした……。
登場人物の紹介
■主人公のオフェリア
仕立て屋の父親を亡くした少女。
■迷宮の番人のパン
地底の王国の入り口へ導き、3つの試練を与えるクリーチャー。
■政府軍の将校のヴィダル大尉
オフェリアの母親の再婚相手。レジスタンス掃討を指揮する冷酷で残忍な男。
タイトルに隠された、ギリシャ神話の神
原題『El laberinto del fauno』には、「laberinto=迷宮」「fauno=ファウヌス」というワードが入っています。
ファウヌスとは、古代ローマの森の神であり、ギリシャ神話の山羊の特徴をもつ半人半獣神「パン」と同一視されています。
神といえどもパンの面貌には羊の角が付いていることもあり、タロットカードで有名な悪魔 バフォメットの容姿をも彷彿とさせます。
パンの存在は神なのか、悪魔なのか、人によって解釈が変わってくるのではないでしょうか。
舞台背景、1944年のスペインについて知る
1936-1939年にスペインで起きた内戦後の、1944年が舞台。
スペイン内線では、簡単に説明するとファシズム(結束主義)と反ファシズム(民主主義)の間での戦争が起きていました。
オフェリアの父は内戦で命を落とし、彼女の母親は生活の困窮を打開するためにファシスト政権のヴィダル大尉と再婚をしたのです。
つまり、ファンタジーの裏には戦争によって人生を翻弄された少女の物語が描かれているです。
ただの空想の物語ではなく、戦争の凄惨さを訴えかけている作品でもあります。
■「スペイン内戦」のこと【管理人・選】
※スペイン内戦とはどのような戦いだったのか。 1936年2月に実施された国会選挙で勝利したのは「人民戦線」と呼ばれる、反ファシズムを標榜する左派の統一勢力だったが、選挙結果に危機感を覚えたスペイン国内の貴族や軍人、僧侶、地主らはファシスト勢力を支援して、人民戦線政府への大規模な反抗を開始するようになる…。【引用:Amazon】
ギレルモ・デル・トロ監督、知って欲しい3つのこと
①オタク気質、監督のこだわり!
妖艶なクリーチャーを生み出すギレルモ・デル・トロ。
彼は小さい頃からホラー系の漫画や映画を好み、『エクソシスト』(73)のメイク・アップ・アーティストのディック・スミスに師事。
映画系の大学を卒業後、メキシコに自ら特殊メイクの会社ネクロピアを立ち上げています。
本作で溢れる才能を発揮して注目を集めるようになりました。
彼が生み出す迷宮やクリーチャーには美のセンスを感じ、ホラー映画というジャンルを芸術作品へと昇華させているのように思いました。
また、脚本でもギレルモ・デル・トロの多彩さを伺えます。
一人の少女が異世界に彷徨う姿は、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」や、「オズの魔法使い」と言った普及の名作が思い浮か美ます。
おとぎ話は、ディズニーやミュージカル映画として描かれることも多く、明るくて可愛いらしいイメージを抱きがちですが、原作を読むと実は怖い要素がたくさんあったりします。
暗い影を落とすおとぎ話とも言える本作には、大人への教訓が含まれているのではないでしょうか。
②おすすめしたい、話題の過去作を紹介
『シェイブ・オブ・ウォーター』(17)では、第90回アカデミー賞で作品賞をはじめ、監督、作曲、美術賞などを受賞。
日本ではR15+にもなる描写も含む衝撃作でしたが、見た目も言語も違う異生物に寄り添い、心を通わしていく物語は斬新で秀作でした。
個人的には19世紀イギリスのゴシック調の『クリムゾン・ピーク』(15)も大好きで、未だに映画館で観た時の高揚感が忘れられません。
他には『ナイトメア・アリー』(21)も見世物小屋から始まる残酷な物語でインパクトがあり、期待を裏切らない映画でした。
■鬼才ギレルモ・デル・トロの世界観:参考本【管理人・選】
ギレルモ・デル・トロ モンスターと結ばれた男(イアン・ネイサン (著))
※「僕はずっと信じてきた。アイデアと映像の創作によって、ファンタジーたる何かを真実にすることができるんだってね」。現代映画界で異彩を放ち続ける鬼才ギレルモ・デル・トロ。最新作『ナイトメア・アリー』『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』に至るまでの、人生と(未完の映画を含む)全ての作品を解き明かす決定的評伝!【引用。Amazon】
ギレルモ・デル・トロ 創作ノート 驚異の部屋(ギレルモ・デル・トロ (著))
※文学・絵画・映画・コミックまで、多岐にわたるジャンルにみるそのインスピレーション源とは。デビュー作『クロノス』から今なお熱狂的なファンを誇る『パシフィック・リム』まで、そして、デル・トロが映像化を夢見る未完の作品まで取り上げた、超貴重な創作に至る緻密な“メモ”の数々!【引用:Amazon】
③『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』、アカデミー賞にノミネート!
第95回アカデミー賞では、ストップモーションアニメが長編アニメーション賞にノミネートされています。
アニメーションに影響を受けたギレルモ・デル・トロは、物心がついたころからピノッキオの映画を作りたいと強く思っていたのだとか。
Netflix会員の方は、15年もの歳月をかけて製作した芸術作品を是非観てみてください。
●ギレルモ・デル・トロ(Guillermo del Toro)
誕生日:1964年10月9日生まれ
星座:てんびん座
出身:メキシコ
▶おすすめの代表作品
※アカデミー賞作品賞、監督賞に輝いた名作。不思議な世界観が待っています。
まとめ
スペイン語作品にも関わらず、第79回アカデミー賞で撮影、美術、メイクアップ賞を受賞した『パンズ・ラビリンス』。
学生の頃に本作を観てからギレルモ・デル・トロ監督のファンになり、今では新作が出る度に新たな高揚感を齎せてくれることを期待しながら映画館に足を運びます。
彼の生み出す作品は、何年経っても忘れることができない異世界へと導いてくれます。
日本国内の上映権利が 2023年9月で終了するのに伴い、2023年3月10日(金)より1週間限定で全国公開されます。
是非後悔しないようにこの機会を逃さないようにしてください!
《ライター:anzu》
大学生時代にフランス文学を専攻していたこともあり、ヨーロッパ映画に惹かれる傾向にあります。
映像や台詞、音楽のときめき、ホラーやサスペンスのような怖さの驚き等、ドキドキする作品がたまらなく好きです。
今まで観てきた映画の数は1400本を越え、今も更新中です。
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