実話ベースの法廷サスペンス映画『羊飼いと屠殺者』、南アフリカの死刑制度にメスが!

スティーヴ・クーガン,羊飼いと
『羊飼いと屠殺者』

今回ご紹介する映画は、『羊飼いと屠殺者』(2016年)。

(原題:Shepherds and Butchers 。NETFLIXで配信中)

1980年代の南アフリカで実際に起きた事件をもとに製作された法廷サスペンス映画です。

本作品では、ある殺人事件の裁判から始まりますが、徐々に「死刑制度(death penalty)」に焦点が向けられていきます。

死刑制度がある限り執行人という仕事もあり、そのような人たちの環境について考えるきっかけになるかもしれません。

目を背けたくなるようなテーマですが実話ベースでもあり、映画としては非常に見応えのある内容となっています。

(※グロ系が苦手な方は要注意なシーンもあります。)

本作品をレビューに取り上げた理由

・Netflixにて視聴可能 (2022年6月現在)

・南アフリカ製作であり、南アフリカの歴史を勉強するきっかけとなった。

・世界には死刑制度を持つ国と持たない国があり、持つ国から持たない国と変化を遂げた南アフリカの司法背景を知る一助となった。

・日本は死刑制度のある国であり(2022年6月現在)、今なおその在り方について議論となっている。

『羊飼いと屠殺者』1分で読める:あらすじ紹介

シィファード&ブッチャー
左:弁護士ジョン・ウェーバー 右:検察官キャスリーン・マレー 中:被告人レオンhttps://www.facebook.com/ShepherdsAndButchersFilm/ 【YouTube:予告編】

1987年、南アフリカ。

大雨の中、ある青年がミニバスに乗った7人を射殺するという事件が発生。

その青年の名前は、レオン

死刑判決は逃れられないと弁護士たちも考えていました。

しかし、被告人レオンが「絞首刑の立会人」であることが分かり、弁護士たちは彼の精神状態について調べていきます。

検察側が殺人の事実を発言するのに対し、弁護士たちは彼が罪を犯すきっかけや背景に迫ります。

異常なまでに人の死を見すぎた彼が抱えていたものとは…

そして、この事件が南アフリカの死刑制度を大きく変えるきっかけとなります。

「羊飼い」と「屠殺者」とは

残酷すぎるメタファー

シィファードアンドブッチャー
https://www.facebook.com/ShepherdsAndButchersFilm/

「羊飼い」(Shepherds)とは、文字通り「羊を飼う者」。

(ちなみに、「善き羊飼い」はイエス・キリストを象徴している言葉で、聖書になぞらえているのかもしれません。)

一方で「屠殺者」(Butchers)とは「家畜などを殺す者」。

タイトルの『羊飼いと屠殺者』とは、180度異なる存在であることを示しています。

当時の南アフリカでは、看守が死刑囚の世話をするというシステムだったそうです。

つまり、レオンが囚人の世話をしていたという意味で「羊飼い」であり、同時に死刑を執行する役目という意味の「屠殺者」でもあったことがメタファーとなっています。

彼の精神を蝕む仕事環境

裁判では「7人の射殺」という真実から、「なぜ彼が射殺という行動をとったのか」という原因に焦点が移っていきます。

レオンが看守となった理由には、兵役を免除されるからという理由があります。

(おそらく、当時勃発していたアンゴラ内戦を指すと考えられます。)

しかし、職に就いた時点では詳しい業務内容を知らず、翌日から見様見真似で執行に立ち会うよう上司から指示されます。

レオンが徐々に法廷で証言していきますが、証言とともに当時の業務の描写が添えられます。

非常に過酷で、一度観たら忘れることのできない映像となっています。

法廷で手すりを握りしめるレオンの姿が、そのまま執行場で手すりを握りしめる姿に重ねる描写が印象的でした。

問われる「死刑制度」意見の分かれどころ

射殺は事実だが、責任は無いのか

シィファードアンドブッチャー
https://www.facebook.com/ShepherdsAndButchersFilm/

射殺は事実。それを無かったことにすることはできません。

しかし、彼の過酷な業務内容が明らかになるにつれて、考え直さざるを得ません。

後半に弁護側が原因(と思われること)を見つけ出すシーンがあります。

これまでの内容が全てここに集約されており、決定打だと思いました。

これが何を意味するのか、ぜひ本編で確かめてみて下さい。

死刑制度はあるべきか

そもそも死刑制度がなければ、レオンが行っていたような仕事は存在せず、このような事件も発生しなかったかもしれません。

死刑制度の存続に関しては、囚人や罪に対してだけではなく、執行人に対する重圧も考えなければならないと、気付かされました。

なお、南アフリカの死刑制度は、マンデラ大統領時代の1995年に完全廃止となりました。

もっと映画が好きになるプチ情報

① 冷静な弁護士を演じたスティーヴ・クーガン

本作品で主演を務めたのは『ナイト・ミュージアム』シリーズで小さい兵士オクタヴィウスとして有名(?)な、コメディ俳優のスティーヴ・クーガン

(『ナイト・ミュージアム』も筆者の大好きな映画です。)

今回の役はコメディとは対極の役ですが、弁護士として死刑反対論者として凛々しい人間を演じていました。

スティーヴ・クーガン,羊飼いと
スティーヴ・クーガン https://www.facebook.com/ShepherdsAndButchersFilm/

② 検察役を演じたアンドレア・ライズボロー

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https://www.microsoft.com/en-nz/store/b/sale

本作品でのアンドレア・ライズボローの出演シーンは多くありませんでしたが、素敵な女優さんです。

個人的に一番の印象は『オブリビオン』ですね。

謎のオーラが漂う姿は必見です。

③ 法廷サスペンス映画の魅力

映画のジャンルの一つともいえる、法廷サスペンス。

「真実は何なのか」という点が最大の見どころとなります。

真実にたどり着くまでに様々なドラマを盛り込むことができるので、

大きなジャンルとして確立したのかもしれません。

今後もたくさんの法廷サスペンス映画をチェックしていきたいと思います。

【サイト内:法廷サスペンス記事】

ジャック・オコンネル,炎の裁き
『Trial By Fire/炎の裁き』https://www.facebook.com/TrialByFireTheFilm/

●実話を元にした『Trial By Fire/炎の裁き』。冤罪がテーマの社会派映画をご紹介!

《ライター:Halle》 クリックで担当記事一覧へ→

プロフィール,Halle
🌰Halle

暇さえあれば、映画観る!がモットー。
映画が好きになったきっかけは、時間を持て余していた大学時代。
うかつにも数々のシリーズ映画に手を出してしまったのです。
Marvel、DC、スター・ウォーズ、トランスフォーマー、パイレーツ…
今ではすっかり映画が生活の一部になってしまいました。

Twitterでも、気ままに映画・海外ドラマネタでつぶやいています。
良かったら覗いてみて下さい(^^)//

 

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