今回紹介する映画は、2016年に公開されたジョン・カーニー監督の『シング・ストリート 未来へのうた』です。
ジョン・カーニー監督は、アイルランド・ダブリンの出身。
かつてミュージシャンだったということもあり、音楽系の映画を中心に撮っています。
自身の経歴と重ねた、青春バンド映画のジャンルでは業界でも抜きん出ていると感じます。
今回の記事では、『ONCE ダブリンの街角で』(07)、『はじまりのうた BEGIN AGAIN』(13)に続く、映画『シング・ストリート 未来へのうた』(16)のキャスト・あらすじ・みどころを紹介します。
『シング・ストリート 未来へのうた』:作品情報
映画タイトル | 『シング・ストリート 未来へのうた』 |
原題 | Sing Street |
監督 | ジョン・カーニー |
出演 | フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボイントン、マリア・ドイル・ケネディ、エイダン・ギレン、ジャック・レイナー 他 |
公開日 | 2016年 【YouTube:予告編】 |
あらすじ:少女の気を引くため立ち上げたバンド
舞台は1985年、大不況のアイルランド・ダブリン。
主人公コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)は父親の失業により、学費の安い学校へ転校します。
コナーは、新しい学校では生徒や先生からも嫌がらせを受け、家庭では両親が喧嘩という恵まれていない環境で過ごします。
ロンドンでモデルを目指す少女、ラフィーナとの出逢い
そんな中、コナーは学校の前の建物の前に立っていた少女ラフィーナ(ルーシー・ボイントン)と偶然出会います。
聞けばラフィーナは、ロンドンでモデルを目指しているとのこと。
一目ぼれしたコナーは、ラフィーナの気を引くためにバンドをやっていると背伸びをした嘘をつきます。
そして、なんとかラフィーナをバンドのミュージックビデオに出演させるために本当にバンドを組むことを決意。
唯一の友達ダーレン(ベン・キャロラン)と共にバンドメンバー探しが始まります。
- ギターは、父がバンドマンで作曲もできるエイモン(マーク・マッケンナ)。
- ベースとドラムは、学校でホモ兄弟と罵られているギャリー(カール・ライス)とラリー(コナー・ハミルトン)。
- キーボードは、カッコよさ担当でスカウトした黒人ンギグ(パーシー・チャンブルカ)。
バンドメンバーも揃い、オリジナル曲を制作します。
バンド結成!ラフィーナとの距離も近づいたと思った矢先…
念願叶ったコナーは、ラフィーナを迎えミュージックビデオの撮影も進み、二人の距離は少しずつ近づくことに。
しかし、そこになんとラフィーナのフィアンセが登場。
ラフィーナはコナーの前から姿を消してしまいます。
一方、家庭では両親の別居が決まり、唯一の心の支えだった兄ブレンダン(ジャック・レイナー)とも喧嘩をしてしまいます。
(当時のアイルランドで離婚は違法だったそうです。)
傷心のコナーは、学校で行われるギグのリハーサルで理想のライブを妄想します。
ー妖艶なラフィーナの登場
ーラフィーナのフィアンセをこらしめる更生した兄の姿
ー仲睦まじく楽しそうにダンスをする両親
ー堅物な校長の粋なパフォーマンス
ラフィーナに一縷の望みをかけ、新たな曲作りに挑戦!
そんな落ち込むコナーに希望の光を与えたものは、曲作りでした。
明るい未来を実現させるためにエイモンと渾身の曲作りに挑戦!
いじめっ子をバンドのボディガードとして仲間に引き入れ、
喧嘩をした兄とは腹を割った話し合いをし、
そして一縷の望みにかけ、ラフィーナのポストに曲を届けます。
コナーの全てをかけた学校でのギグは果たして成功するのか、ラフィーナとの関係はどうなるのか。
どの音楽も心に残る素晴らしい青春映画です!
感想~ジョン・カーニー監督の半自伝的な物語~
女の子の気を引くためにバンドを立ち上げるなんて突拍子もないことを実行できる行動心理の裏には、荒れ果てた家庭・学校環境が影響しているのだと思います。
両親は別居寸前、学校ではいじめられ、ラフィーナに一目惚れをしたということもありますが、コナーは自分の居場所を作るためにバンドに挑戦したのでしょう。
そして、コナーの大きな支えになっていたのは、兄の存在ですね。
兄の影響でバンドミュージックに馴染みがあり、制作した楽曲にもアドバイスをくれる、そんな兄の存在がなければコナーは1曲も作れなかったことでしょう。
本作は、ジョン・カーニー監督の半自伝的な物語とも言われており、監督の青春時代も非常に気になりますね。
劇中歌は、どの曲も素晴らしい曲です。後ほどコナーの思いも含めて曲の紹介をします。
歌を聞くときはぜひそちらを見て各曲を聴いてみてください!
主なキャスト
コナー・”コズモ”・ロウラー役/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
フェルディア・ウォルシュ=ピーロは、2022年アカデミー3部門(作品賞、脚色賞、助演男優賞)受賞の『coda あいのうた』(Apple TV+)にも出演し、変わらず美声を披露しています。
●フェルディア・ウォルシュ=ピーロ(Ferdia Walsh-Peelo)
誕生日:1999年10月12日 生まれ
星座:てんびん座
出身:アイルランド
▶おすすめの代表作品
ラフィーナ役/ルーシー・ボイントン
ルーシー・ボイントンは、2019年アカデミー賞4部門受賞の傑作『ボヘミアン・ラプソディー』等に出演しています。
●ルーシー・ボイントン(Lucy Boynton)
誕生日:1994年1月17日
星座:やぎ座
身長:165cm
出身:アメリカ・ニューヨーク州(イギリス国籍)
▶おすすめの代表作品
※フレディ・マーキュリーの恋人役で登場、その後二人はちょっと悲しい存在に!
ブレンダン(コナー兄)役/ジャック・レイナー
ジャック・レイナーは話題のホラー映画『ミッドサマー』に出演しています。
●ジャック・レイナー(Jack Reynor)
誕生日:1992年1月23日生まれ
星座:みずがめ座
身長:183cm
出身:アイルランド
▶おすすめの代表作品
劇中歌~心を熱くする、素晴らしい青春の曲~
リドル・オブ・ザ・モデル/The Riddle of the Model
コナーが最初にエイモンと作った曲。直訳すると「モデルの謎」。
ラフィーナに一目惚れして、その謎めいた魅力をリズムに落とし込んだような曲です。
曲名を聞いて一発でリズムをつけたエイモンは天才だと感じますね(笑)。
東洋をイメージしたリフにも注目です。
アップ/Up
最初のMVの撮影を終え、天にも登るような気持ちのコナーを表したような曲。
サビの歌詞はまさに恋している男の子の日記のようですね。
まさに青春を感じさせる一曲です。
Going up(高く上るよ)
She lights me up(彼女は僕を照らす)
She breaks me up(彼女は僕を壊す)
She lifts me up(彼女が引き上げる)
ビューティフル・シー/Beautiful Sea
いつかダブリンを離れてしまうラフィーナと、それを見守るコナーを思わせる内容の曲。
MV撮影では、ラフィーナが本当に海に入るシーンが印象的です。
海に入る理由は都会でボロボロになった人魚が、友達のいる故郷に帰りたいから。
まるで次のシーンを説明しているようですね。
ドライブ・イット・ライク・ユー・ストール・イット/Drive It Like You Stole it
大不況の世の中、家庭にも学校にも居場所がないコナーが明るい未来をイメージして自由を歌った曲だと筆者は思っています。
歌詞にも「自由を取り戻すんだ」、「君の人生」、「なんでもできる」といったフレーズが多く出てきており、まさに「未来へのうた」だと思います。
ガールズ/Girls
校内ギグの1曲目。
Boys Boys Boys Boys♪
Girls Girls Girls Girls♪のリズムが耳に残る曲ですね。
何にでもなれる若者の柔軟性と異性に対する戸惑いを表現した曲だと感じます。
色を変えるように形も変える、まるで僕たちは人間アート、ダイヤの原石など、ストレートな歌詞が満載で、リズムも非常に乗りやすい素晴らしい曲ですね。
トゥ・ファインド・ユー/To Find You
ギグでバラードはない、とパーティの盛り上がりを下げたとしてもコナーが演奏したかった曲。
好きな人と彼女になりたくてもなれないもどかしい思いを歌った曲。
運命のキミを見つけることができた。でも……
こんな気持ちをストレートに表した曲を贈られたら去っていったキミも戻ってきますね!
ブラウン・シューズ/Brown Shoes
転校早々に言われた先生からの注意を皮肉った反抗期ソング!
聞いててスカッとするようなリズムと歌詞に注目ですね。
これらの曲は、アーティスト「シング・ストリート/Sing Street」としてサウンドトラックに収録されています。
どの曲も心を熱くさせるような青春の曲ですので、聴いてみてください!
まとめ
映画『シング・ストリート 未来へのうた』のあらすじ、キャスト、劇中歌の紹介をさせていただきました。
辛い状況を音楽で乗り越え、明るい未来を夢見る青春映画です。
やはり音楽には人の感情を揺さぶる力があると改めて感じさせてくれます。
これを機に、ジョン・カーニー監督の音楽映画他2作も併せて鑑賞してみてはいかがでしょう?
Sing Street / O.S.T. シング・ストリート 未来へのうた(サントラ)
《ライター:kenya》 クリックで担当記事一覧へ→
「シング・ストリート」何度も見てしまう大好きな作品です。音が重なって一つの曲になっていく過程がとても好きです。本作ではジャック・レイナー演じるお兄さんの役も印象的ですね。エンドロールの「全ての兄弟たちに捧ぐ」のメッセージにあるとおり、ジョン・カーニーのお兄さんへの思いはとても強く、前作「はじまりのうた」のダンはお兄さんがモデルだという記事を何かで読みました。アマプラオリジナルドラマの「モダン・ラブ」でもシング・ストリートのメンバーが出ているので繰り返し見ています。