2023年公開の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』。
※ロアルド・ダールの小説「チョコレート工場の秘密」の前日譚を描いたオリジナル・ストーリーです。
監督は、『パディントン』シリーズで心温まる物語を世に送り出してきたポール・キング。
クリスマス・シーズンにぴったりのハートウォーミングな作品になりそうです。
【『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』YouTube:予告編】
さて今回は、「チョコレート工場の秘密」の過去の映画化作品である、ジーン・ワイルダー主演の『夢のチョコレート工場』(71)、そしてジョニー・デップ主演の『チャーリーとチョコレート工場』(05)を比較紹介します!
同じ原作でも、ビジュアルや設定にかなりの違いがあり、観れば『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』がもっと楽しめること間違いなしです!
▶ロアルド・ダールの原作本
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/WonkaMovie/)
ポイント①:主人公「ウィリー・ウォンカ」の性格比較
「チョコレート工場の秘密」の映画化と言えば、今でこそティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の方を思い浮かべる方のほうが多いのではないでしょうか。
しかし、同作の映画化が初めてされたのはは1971年でした。
監督はメル・スチュアート。当時、コメディ映画の監督として知られていました。
ウィリー・ウォンカ役は、名作『俺たちに明日はない』や『プロデューサーズ』に出演していたジーン・ワイルダーです。
ジョニー・デップ版は大人になりきれない影のあるカリスマ的なキャラクターでしたが、ジーン・ワイルダーはもっと成熟しているイメージです。
カリスマちっくな部分は原作通りに、チャーリーをに道徳的なテストを課す父親のような側面がありました。
ポイント②:登場する「部屋」が違う!
大筋は2本ともおおよそ、原作の児童書と同じです。
貧乏な少年のチャーリーが巨大なチョコレート工場に行けるチケットを手にし、おじいちゃんと一緒に見学へ行きます。
工場の中の様子は、1971年では映像化できなかった箇所もあり、いくつかは他のアイデアに置き換えられました。
例えば、ジョニー・デップ版ではアニマトロニクスやCGで再現されていた「ナッツを選定し殻を割るリスの部屋」は、「金の卵を産むガチョウの部屋」になっています。
他にも、終盤に出てくる炭酸飲料を燃料にした車「ワンカ・モービル」などは、71年版オリジナルの要素です。
ポイント③:「マイク・ティービー」が夢中になったもの
5人の子供たちもほとんど同じキャラクターづけですが、終盤まで工場に残った少年マイク・ティービーだけは面白い違いがあります。
ジョニー・デップ版では、マイク少年は「テレビゲーム中毒」で、その悪い影響で人の命を軽く考えている、かなり冷めた子供というキャラクターでした。
原作およびワイルダー版では、マイクは「ティービー」という名前の通り「テレビ中毒」という設定なんです。
それも、60年代から70年代にかけてテレビでよく放送されていた西部劇。
テレビゲームに夢中になって銃をバンバン鳴らしているように、銃声が鳴り響く西部劇から悪い影響を受けているということなんですね。
2000年代ではテレビ放送の西部劇は見かけなくなったからか、時代に即した改変だったようです。
ポイント④:「ウンパ・ルンパ」たちの風貌にも注目!
チョコレート工場のマスコットのような存在でもある、従業員のウンパ・ルンパたち。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の予告編では、ヒュー・グラントがオレンジ色の肌に緑色の髪という風貌で登場しましたが、これは71年版のオリジナルです。
ウンパ・ルンパたちは見学にやってきた子供達が問題を起こすたびに歌と踊りを披露しますが、ワイルダー版は原作の詩とはかなり違う、わらべ歌調のものになっています。
一方、ジョニー・デップ版のウンパ・ルンパは、みんな同じ顔、同じ背格好をしていますよね。
バートン映画作品の常連でもあるディープ・ロイの何十通りもの演技が合成された、ティム・バートンならではの演出でした。
ウンパ・ルンパたちの歌は、お馴染みのダニー・エルフマンが担当。
それぞれを違った音楽ジャンルに仕立てたかなり個性的なアレンジでしたが、意外とこちらは原作の詩を数箇所丸ごと抜き出したものだったりします。
ウンパ・ルンパ「オレンジ色の肌に緑色の髪」の理由
実は、ウンパ・ルンパたちをどんな見た目にするかというのは、原作刊行当時からあった一つの問題でした。
刊行当時のウンパ・ルンパたちは、ジャングルに住んでいる「ブラック・ピグミーの一族」と描写されていたそうです。
これが人種差別的だと批判された歴史があり、71年のワイルダー版の「オレンジ色の肌に緑色の髪」という風貌は、特定の人種を連想させないためのアレンジと考えられるでしょう。
バートン版ではケニア系の俳優であるディープ・ロイが演じたので、これが「改悪」だという批判もあったようです。
新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ではワイルダー版のウンパ・ルンパが登場しますが、筆者としては、71年当時のウンパ・ルンパよりもかなり小さな瓶に入っているというのが気になるところです。
元々あの小ささなのか、それとも何かの魔法で小さくされてしまったのか……。
ポイント⑤:チャーリーの「両親」の存在
また、チャーリーの「両親」という存在も、この作品にとっては大きな鍵の一つです。
ジーン・ワイルダー版ではウィリーの家族関係については特に描写がありませんでした。
しかし、チャーリーのお母さんであるバケット夫人は、ミュージカルナンバーを一曲任されていたりとそこそこの扱いを受けています。
その代わり、お父さんのバケット氏は亡くなっていて登場しません。
ジョニー・デップ版では、チャーリーの両親はどちらも登場します。
というのも、この映画では後半のストーリーラインがまるまるウィリーと彼の父親との確執に当てられているからです。
ウィリーの父親は歯科医、バケット氏は歯磨き粉の工場員と、どちらもチョコレートに対応するような職業ですが、息子への態度は真逆です。
対比させる意味合いもあるのでしょう。
ウィリーの父親はジョニー・デップ版オリジナルのもので、同じティム・バートン監督の『ビッグ・フィッシュ』などの脚本で父子の関係を描いてきたジョン・オーガストの作風も影響しているかもしれません。
新作『ウォンカ』は、70年代版の要素が強い!?
さて、新しく公開される『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ですが、ウィリー・ウォンカの若き日の物語に原作は特にありません。
特に日本語版のタイトルのフォントの雰囲気からはジョニー・デップ版の前日譚のように見えますが、予告編などを見る限り、どちらかというとこのジーン・ワイルダー版の要素が強いと言えるでしょう。
ウィリー・ウォンカが歌って踊るミュージカル調の作品であるらしいところや、ヒュー・グラントのウンパ・ルンパの見た目は、ジーン・ワイルダー版にある要素です。
そのほかにもたくさんのイースターエッグがあるかもしれません!
まとめ:新作『ウォンカ』は、2023年12月8日公開!
さて、「チョコレート工場の秘密」の映画化作品2本を比較紹介してきました。
新作『ウォンカ』を観る前でも、観た後でも、ぜひ過去の作品や原作に触れてみてください。
また、「チョコレート工場の秘密」の映像化の企画は『ウォンカ』以外にもあるようです。
2020年以降続報がないようですが、タイカ・ワイティティ監督がネットフリックスでウンパ・ルンパたちを主人公にしたアニメシリーズを製作中とのこと。
かなりチャレンジングですが、期待できそうなコラボレーションですね!
《ライター:ぜろ》 担当記事一覧はこちらをクリック→
高校2年生で『アベンジャーズ』を観て以来の映画ファン。大学と大学院では映画研究にどっぷり浸かっていました。
アナログでファンアートを描いてはインスタグラムに載せています。楽し〜!
話題の作品や、そこにつながる過去の名作、注目のキャストなどをわかりやすく楽しく紹介していきたいです!
記事へのご感想・関連情報・続報コメントお待ちしています!