本記事では、“悩める少年”が主人公の映画を取り上げて紹介していきます。
子どもの頃に想像していた自分や未来の世界は、大人になった今見ている現実より希望に満ちていたはず。
映画に出てくる悩める少年達の眼差しから感じるエネルギーは、いつかの私たちのものでもあります。
大人になるにつれて忘れてしまうものを彼らの力を借りて想起すると何か見えてくるかもしれません。
是非、最後までご一読くださいませ。
(冒頭画像:引用https://japan.unifrance.org/)
❶『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』
あらすじと作品情報
”自殺ごっこ”を繰り返す19歳のハロルド。
彼の母親はハロルドに結婚相手候補と合わせるが皆彼に尻尾を巻いて逃げていくばかり。
そんなある日、80歳のおばあちゃん、モードと出会う。
自由奔放な彼女とハロルドは意気投合し、心が通じ合っていく…。
映画タイトル | 『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』 |
原題 | Harold & Maude |
監督 | ハル・アシュビー |
出演 | ルース・ゴードン、バッド・コート他 |
公開日 | 1971年 |
見どころ:分かり合うこと、唯一無二の作品
この映画ではとにかく二人の行動が突拍子もないです。
あらすじにもあるようにハロルドは狂言自殺を繰り返しますし、モードはしょっちゅう車を盗みます。
この二人は共鳴し合い、仲を深めるわけです。
「死んでるのって楽しいって気づいたんだ」と泣きながら言うハロルド。
狂言自殺を繰り返す彼を悲しい人物だと決めつけるのはこの映画のキャッチーさを減らしてしまい興醒めです。
でも、「分かるわ、そう思ってる人は多い。でも、生きていくの」と目を見て答えてくれるモードの存在がそこにはあります。
彼女を見てハロルドが救われていると思うと、モードに出会う以前のハロルドの孤独を感じます。
似ているようで似ていない、似ていないようで似ている二人。
初めて自分の心を開く時、相手と分かり合おうと思った時、少年はどのような眼差しで何をして何を言うのか。
血の気のない顔色のハロルドが遂げる心温まる気づきとは何だったのか。
唯一無二の作品です。
❷『ジョジョ・ラビット』
あらすじと作品情報
第二次世界大戦下のドイツ。
イマジナリーフレンドのアドルフ・ヒトラーがいる10歳の少年ジョジョ。
彼は亡き父親の影響もあってナチ思想にどっぷり。
一緒に暮らしている母親がかくまっていたユダヤ人の少女と出会う…。
映画タイトル | 『ジョジョ・ラビット』 |
原題 | Jojo Rabbit |
監督 | タイカ・ワイティティ |
出演 | ローマン・グリフィン・デイビス、スカーレット・ヨハンソン、タイカ・ワイティティ他 |
公開日 | 2019年 |
見どころ:成長したジョジョはどう生きていく?
ジョジョは10歳ながらに完全にナチ党の思想に頭を乗っ取られています。
この作品の色味は鮮やかで、コメディ映画で、非常にポップです。
10歳の少年がナチ思想をガッツリ信仰している異常さも受け入れることができるんですが、この違和感がだんだん顕になってくるわけです。
それはスカーレット・ヨハンソン演じる母親や、ユダヤ人の少女エルサとのやりとりによってのものです。
彼女たちはジョジョと正反対な存在でありながら、彼を前にして自分達の正しさを持ってして正面から向き合い会話をします。
そしてジョジョは自分が信じていた思想により、人が傷つき死んでいくのを目の当たりにし心に揺らぎが生じ始めます。
自分が道を誤り誰かを傷つけるのに加担した時、自分の心もまた傷ついてしまいます。
その痛みを持ってして成長したジョジョはどう生きていくのでしょうか。
必見です。
関連記事:映画『ジョジョ・ラビット』あらすじと時代背景、入隊したナチス・ヒトラーユーゲントとは?
❸『サム・サッカー』
あらすじと作品情報
高校生なのに親指をしゃぶる癖があるジャスティン。
ある日、歯医者のエセ催眠治療により、親指をしゃぶれなくなる。
薬の手なども借りて、彼の生活は何不自由なくなると思われたが…
映画タイトル | 『サム・サッカー』 |
原題 | Thumbsucker |
監督 | マイク・ミルズ |
出演 | ルー・テイラー・プッチ、ケリ・ガーナー、ティルダ・スウィントン、キアヌ・リーヴス他 |
公開日 | 2019年 |
見どころ:悩みを抱える主人公、孤独が際立って
「I felt like everything is wrong with me(全部ダメな気がした) 」
この作品ではなりたい自分にさせてくれないものに主人公ジャスティンが対峙します。
彼なりにそれを解決しようとする様も中々痛々しいです。
自分の一部と否定せずに付き合うことがテーマの映画です。それは勇気のいることなのですが、彼は不器用ながらに彼らしく生きていきます。
悩みを抱える彼の孤独が際立っていて、人のいる環境がすごく伝わる映画です。
『サム・サッカー 17歳、フツーに心配な僕のミライ』(Amazon:作品情報)
❹『大人は判ってくれない』
あらすじと作品情報
天真爛漫な12歳のアントワーヌ。
ヤンチャが故に学校では先生に叱られ、家では両親に怒られる。
幼き彼の反骨精神は育っていくばかり、彼の行く末はいかに…。
映画タイトル | 『大人は判ってくれない』 |
原題 | Les Quatre Cents Coups |
監督 | フランソワ・トリュフォー |
出演 | ジャン=ピエール・レオ、クレール・モーリエ、アルベール・レミー他 |
公開日 | 1959年 |
見どころ:頭が感情に浸されていくラストシーン
言わずと知れた名作ですが、観たことのある人はまだまだいるはずです。
この作品にはさまざまな名シーンがあるのですが、ラストシーンは最近の作品でもオマージュされてるほどです。
※以下、ネタバレ注意です。※
反抗を重ねたアントワーヌが送られた少年鑑別所から突如走って逃げ出し、海に行き着くのです。
(走っている長回しのシーンも最高ですよね。)
感情は言葉にすることができますが、このラストシーンは彼の感情を映像で表現することに成功したものと言えます。
試しに観てください。
ラスト観ているだけで頭が感情に浸されていくのを感じるでしょう。
おすすめです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
どの作品もおすすめですが、観る際にぜひ彼らに瞳に注目してください。
その悲しさと真っ直ぐさはとてつもないエネルギーを放っています。
ここで述べた各作品のポイントは私的なものでもあります。
映画は誰のものでもないので、感じるがままに映画をみて皆さんが何をどう思ったか、コメントなどで教えていただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
では、また!✨
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「大人はわかってくれない」のアントワーヌはフランソワ・トリュフォーの分身ですし、その後もアントワーヌ・ドワネルシリーズとして、主演のジャン=ピエール・レオと共に20年間にわたって4作の続編が作られましたね。「大人はわかってくれない」以降はコメディ要素も強くなってきて、アントワーヌは女性に振り回されたり、結構波乱万丈人生を送ることにもなりますが、トリュフォー自身の私生活もこんな感じだったのだろうな、と思いながら鑑賞していました。