今回ご紹介する映画は『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(17)です。
パキスタン出身のコメディアン、クメイル・ナンジアニと、彼の実際の妻エミリー・V・ゴードン(アメリカ人、作家・プロデューサー)との馴れ初めを映画化した実話ベースのラブコメディ作品です。
脚本、主演はクメイル自らが担当し、エミリー役を『SHE SAID その名を暴け』のゾーイ・カザンが演じています。
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/thebigsickmovie/)
映画『ビッグ・シック』:あらすじ
スタンダップコメディアンのクメイルは、コメディ観覧にやってきたアメリカ人女性の大学院生エミリーと恋に落ちる。
2人の交際は順調に見えたが、パキスタン出身のクメイルは信心深いイスラム教徒である両親の意向で、お見合い結婚を迫られていた。
そんな異文化カップルのクメイルとエミリーであったが、ある日エミリーが突然昏睡状態に陥ってしまい、2人の間にさらなる障壁が立ちはだかる。
低予算映画ながら、口コミが拡がり大ヒット!
本作は製作費500万ドル(約5億円)の低予算映画であり、出演者の中に大スターがいるわけでもありません。
そのためか、公開初週は全米でたったの5館のみの上映でした。
しかし最終的には口コミが広まり2,597館まで拡大される大ヒットとなり、アカデミー脚本賞にもノミネート。
観客の心を震わせ、全米の注目をかっさらった作品なのです。
エミリーは、意図的な昏睡状態へ…
クメイルとエミリーの交際は順調かのように見えましたが、ある日エミリーは、クメイルが自分の知らないところでお見合いを受けていることを知り、クメイルとの別れを切り出してしまいます。
その後、エミリーの知人からクメイルに「エミリーが倒れて入院した」との連絡が入ります。
クメイルがいち早く病院へ駆けつけたところ、医師から「エミリーの命を守るため、意図的に昏睡状態にする」との説明が。
まもなくエミリーの両親も病院へやってきて、クメイルと共にエミリーの意識が回復するのを待つ、という流れに。
エミリーの両親にとっては娘を傷つけた元彼氏が突然現れたのですから、気まずいやら娘が不安やら大変ですね。
こうしてクメイルとエミリーのラブストーリーは、一旦お預け状態になってしまうのです。
”ぼくたちの”、「大いなる目ざめ」
エミリーというヒロイン不在の中、2人の物語はどうなるのかといった感じですが、実はお話が面白くなるのはここから。
エミリーの意識が戻る保証のない中、お互いの不安を埋めるかのように、エミリーの両親とクメイルは自然と一緒に過ごす時間が長くなります。
次第にクメイルはエミリーの両親と打ち解けていき、ある時クメイルはエミリーの母自身のなれそめについての話を聞かされます。
お互い他人であった2人が結ばれるにあたり、どんな障害があって、どんなふうに関係を成立させたのか。
本作自体がクメイルとエミリーのなれそめの話ということで、この場面はメタ的な視点をもたらします。
それは、民族や宗教に関わらず、どんなカップルも結ばれるまでの障害はつきものだということ。
これは他民族国家アメリカならなおさら顕著に表れるものでしょう。
つまり、邦題にもある通り、本作は「エミリーの昏睡からのめざめ」だけでなく、クメイルのパートナーシップについての「めざめ」を描いているといえます。
クメイルに学ぶ、コミュニケーション術
クメイルはイスラム教の家族と、アメリカ人のエミリーとの板挟みでずっと葛藤していました。
家族は尊重しているけれど、自分は宗教に囚われずにアメリカで生活していきたいと願うクメイル。
そんな彼がついに、板挟みの中につぶれることなく、自分の主張を通すときが来ます。
その主張の手法は「※アサーティブ・コミュニケーション」と呼ばれるもので、相手を尊重しながらも自分自身の意見を伝えるという意味があります。
近年人材育成の観点から、企業の研修でも注目されているコミュニケーションスタイルですが、ビジネスに限らず、相互理解の重要性がさけばれる現代において、あらゆる人にとって大切なものだと思います。
自分の意志を主張するクメイルの、恰好良いシーンの詳細についてはぜひ映画で確認してみてください。
まとめ:愛について学ぶ
少々異色なラブストーリーですが、これが事実だというのだから、やはり「事実は小説より奇なり」は本当ですね。
おひとりで、友達と、交際中のパートナーと、どんなシチュエーションでも面白く鑑賞できる映画だと思います。
もちろん夫婦での鑑賞もおすすめです!
『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』、気になりましたら鑑賞してみてください。
愛について学びたいときにはフロム先生の著作がおすすめです。
あわせてアサーティブ・コミュニケーションについての本もご紹介します。
■「愛」について学ぶ
※愛は技術であり、学ぶことができる――。私たち現代人は、愛に渇えつつも、現実にはエネルギーの大半を、成功、威信、金、権力といった目標のために費やし、愛する技術を学ぼうとはしない。
愛とは、孤独な人間が孤独を癒そうとする営みであり、愛こそが現実の社会生活の中で、より幸福に生きるための最高の技術である。
※著者:エーリッヒ・フロム
※在宅勤務が増えて、オンラインやメール主体のコミュニケーションが増えると、発言がしにくかったり、顔が見えないことによる攻撃的なコミュニケーションが増える可能性がある。アサーティブ・コミュニケーションの考え方は以前から日本に導入されていたが、いま改めて、そのニーズが増しているといえる。【引用:Amazon】
※著者:戸田久実
アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役。著書は『アンガーマネジメント』(日経文庫)『イラスト&図解 コミュニケーション大百科』『アンガーマネジメント怒らない伝え方』『アドラー流たった1分で伝わる言い方』(全てかんき出版)『働く女の品格』(毎日新聞出版)など。
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【編集:サイト管理人】
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