今回紹介する作品は、『クリード』シリーズの第三弾『クリード 過去の逆襲』。
ボクシング映画として世界的な反響を浴び続けた『ロッキー』シリーズを引き継いで作られた作品です。
前二作でロッキーの意志を継ぎヘビー級チャンピオンの座に輝いた主人公・ドニーが、「クリード」と名乗る以前に抱いていた闇と対決する物語を描きます。
(冒頭画像:(C)2023 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.CREED is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.)
映画『クリード 過去の逆襲』:作品情報
これまでずっと主人公ドニー役を演じてきたマイケル・B・ジョーダンが、今作では自ら監督を務めました。
メインキャストには、前2作にも出演したテッサ・トンプソンが本作でもクリードの妻ビアンカ役として登場。
またドニーの幼なじみで今回最強の敵となるボクサー、デイム役を『アントマン&ワスプ クアントマニア』、『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野』などのジョナサン・メジャースが担当しました。
映画タイトル | クリード 過去の逆襲 |
原題 | Creed III |
監督 | マイケル・B・ジョーダン |
出演 | マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャース、ウッド・ハリスほか |
公開日 | 2023年5月26日(金)【YouTube:予告編】 |
■2023年 /アメリカ映画 /カラー /G /116分 ■https://wwws.warnerbros.co.jp/creed/
●マイケル・B・ジョーダン(Michael B. Jordan)
誕生日:1987年2月9日
身長:183㎝
出身:アメリカ・カリフォルニア州
▶おすすめの代表作品(管理人・選)
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映画『クリード 過去の逆襲』:あらすじ
ボクシング界の英雄、ロッキー・バルボアがかつて死闘を繰り広げた親友アポロ・クリードの息子ドニー(マイケル・B・ジョーダン)。
彼は世界的なボクサーの子であることにさまざまなわだかまりを感じながらもロッキーとともに壁を乗り越え、いつしか世界チャンピオンに。
そして愛する妻ビアンカ(テッサ・トンプソン)との間に娘を設け、いよいよ引退の時を迎えました。
その直後に、幼いころからの幼なじみであったデイム(ジョナサン・メジャース)が現れます。
かつては家族同然に過ごしていた二人でしたが、クリードが少年時代に起こしたある過ちを被り、デイムは18年間の服役を強いられていました。
刑期を終え出所したデイムは、かつて目指していたボクシングのチャンピオンの夢をまだ諦めていないことをドニーに明かし、助けを乞います。
最初は快くデイムに協力していたドニーですが、なりふり構わず非道の限りを尽くし復讐心すら見せる彼の姿に怒りを覚えます。
そしてドニーは胸の奥にしまい込んでいた、自らの過去に決着をつけるべく引退撤回を決め、デイムとの戦いに身を投じていくのでした。
『Creed III』のメッセージ①:新たな潮流を築く作品に
『ロッキー』シリーズをベースとし、新たなボクシングの物語を形成した『クリード』シリーズ。
第一作、第二作は『ロッキー』シリーズのエピソードを展開させ作り上げられた物語でした。
しかし、本作は全く新しい物語となっており、主人公ドニーがクリードという運命の人物との接点を見出す以前をエピソードとしたストーリーとなっているのが特徴です。
■『クリード』シリーズ、作品解説【管理人・選】
※「クリードⅠ」:ロッキーが再び立ち上がる。親友アポロの息子をチャンピオンにするために。元ヘビー級王者アポロ・クリードの愛人の息子アドニスは、生まれる前に死んだ父を知らずに育つ。…【引用:Amazon】
※「クリードⅡ」:シリーズに新風を吹き込んだ傑作と全世界から大絶賛を受けた『クリード チャンプを継ぐ男』でロッキーのサポートを受け、一人前のボクサーへと成長した亡きアポロの息子、アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)。【引用:Amazon】
『ロッキー』シリーズは、移民系のアメリカ人ボクサーであるロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)が、その時々に出会う新たな対戦相手とファイトを繰り広げ、自身の道を切り開いていきました。
ロッキーの「過去との決別」は、第一作である『ロッキー』に彼がその思いを吐露したシーンで描かれました。
しかし以降は、自身の正直な気持ちに従って常に新たな挑戦者とリングで拳を交えています。
ドニーが対決する「過去」とは、彼がアポロの息子、アドニス・クリードとして大きく台頭していく以前の物語であり、ダークな過去を描くというビジョンは、新たなアプロ―チとなります。
また本作のように「過去を振り返る」というポイントは『ロッキー』シリーズにおいては見られなかった新たなカラーでもあります。
ある意味『ロッキー』シリーズを引き継ぎながらも、その物語の呪縛のようなスタイルを解き放った作品であるともいえるでしょう。
メッセージ②:「完全な敵」を作らない現代風のカラー
また本作で見られる特徴的なアプローチに、物語のキーとなる人物、デイムの人物像の描き方があります。
宿敵という存在は、1980年代前後の作品ではある意味「完全なヒール役」的存在として描かれてきました。
『クリード 炎の宿敵』に登場したイワン・ドラコは、かつて※『ロッキー4/炎の友情』の友情にも登場したキャラクターです。
アメリカと旧ソビエト連邦が対立し冷戦の時代にあった当時、ロッキーに対しイワンは終始「ヒール」という位置づけとされていました。
これは『クリード 炎の宿敵』においても、イワンの息子ヴィクターに引き継がれており、この作品では『ロッキー4/炎の友情』以降に辿ったイワンの悲惨な道のりも描かれながら、どちらかというと親子そろって最後まで「ヒール」的な位置づけとなっていました。
本作ではドニーとデイムが、時にお互いに対して憎しみすら見えるような表情をぶつけ合いながら戦いを繰り広げ、最後にはお互いの深い心情を描く表情で物語を締めくくっています。
ある意味「ヒール」的な位置で登場するデイムですが、物語としては激しい戦いを繰り広げながらもそれぞれが今の自分を存在させるために必要な人物だったことを振り返り、過去を葬り去るというよりはむしろ、向き合い受け入れるという前向きなメッセージとしています。
■『ロッキー4/炎の友情』【管理人・選】
※世界最強ボクサー“ドラゴ”参戦! 親友・アポロの復讐を誓う、ソ連でのデス・マッチ──…。
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「正義」と「悪」、単純に決めつけられないことばかりだ!
日本の池井戸潤が執筆した小説『下町ロケット』の第二作『下町ロケット2 ガウディ計画』でも同様のことが見られます。
物語の主人公的存在となる会社・佃製作所の宿敵として登場するサヤマ製作所の社長・椎名は、原作小説では完全な悪者的人物として描かれました。
ところが、以後に作られたテレビドラマ版で彼は小説より少し深い人物背景が描かれ、彼が「悪者」となったその経緯や理由のような部分が見えるようになっており、単に憎まれ役として決めつけられないように見える方向性が見えていました。
本作でデイムに設定された人物設定にはこれと似たような傾向も見られています。
つまり、「世の中のことは単純に「正義」「悪」と決めつけられないことばかりだ」、という現代的な普遍性を感じさせられるものとなっています。
『ロッキー』の「アポロ」と、「ドニー」とのつながり
シリーズを通して主人公ドニー役を演じ、本作では映画初監督も務めたマイケル・B・ジョーダン。
物語中でドニーは笑顔を見せる場面が非常に少ないのですが、ふと垣間見られる笑顔は、『ロッキー』シリーズでカール・ウェザースが演じたアポロ・クリードが見せた笑顔の面影が感じられます。
血縁関係のない二人ながらこのような印象をもたらすポイントは非常に作品の奥深さを感じさせます。
『ロッキー』シリーズではアポロという存在は、アメリカのボクシング界におけるスター選手という位置づけのみにとどまり、意外にもあまり深い人物背景は描かれず、またそれほど苦悩するような表情すら見せませんでした。
その意味で『クリード』シリーズで描かれるドニーの人物像、そしてドニーが見せる苦悩の表情は、そのままアポロという人物の本当の姿を想像させるところがあります。
このつながりは『ロッキー』シリーズと『クリード』シリーズを強いテーマで結びつけるための重要なポイントであり、シリーズの大きなメッセージとして存在しているようでもあります。
■『ロッキー』シリーズ、世界中を興奮と感動で包んだ、記念すべき第1作!【管理人・選】
※フィラデルフィアのしがない4回戦ボクサー、ロッキーに突然チャンスがやってくる。世界ヘビー級チャンピオンのアポロが人気取りのため、格下の相手と戦うことを宣言したからだ。かくして、薄汚れた下町の中、ロッキーのトレーニングが始まった……。
●1976年度アカデミー賞主要3部門受賞(作品賞/監督賞/編集賞)
ロッキー…シルベスター・スタローン、エイドリアン…タリア・シャイア、ポーリー…バート・ヤング、ミッキー…バージェス・メレディス、アポロ…カール・ウェザース
《ライター:黒野でみを》 クリックで担当記事一覧へ→
40歳で会社員からライターに転身、50歳で東京より実家の広島に戻ってきた、マルチジャンルに挑戦し続ける「戦う」執筆家。映画作品に対して「数字」「ランク付け」といった形式評価より、さまざまな角度からそれぞれの「よさ」「面白さ」を見つめ、追究したいと思います。
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