『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』を宗教的視点から徹底考察、これを読めば100倍楽しめる!

デューン
イルーラン(フローレンス・ピュー)

ついに、待望の続編『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』が公開されました。

本作は、数々の映像化がなされてきましたが、中でもアレハンドロ・ホドロフスキー監督『デューン』が有名です。

ホドロフスキー版は未完の作品ではありましたが、のちの『スター・ウォーズ』シリーズや『風の谷のナウシカ』など、数々のSF作品に影響を与えたとされています。

つまり、『デューン』はSF映画の礎を築いた作品なのです。

世界でもファンが多く、世界中から愛されているSF作品の一つと言っても過言ではありません。

そのため、海外では前作『DUNE/デューン 砂の惑星PART1』(以下、『PART1』と表記)から大ヒットを記録し、第94回アカデミー賞でも堂々の6部門を受賞しています。

(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/dune/)

dune砂の惑星
https://www.facebook.com/dune/

しかしながら、日本では前作が興行収入はふるわず「コケた」とまで言われており、世界中でここまでハマらなかった国は日本だけだと言えます。

これは、日本人の宗教的知識の不足が原因だと、筆者は考えています。

というのも、本作『DUNE/デューン』シリーズの監督をつとめるドゥニ・ヴィルヌーヴは、作品のどこかに宗教的視点を入れることが多いからです。

今回の記事は、あくまで筆者の解釈であり、分かりやすくするために説明を簡略化しておりますので予めご了承ください。

また、『DUNE/デューン 砂の惑星PART2』(以下、『PART2』と表記)の物語にも触れますので、鑑賞後にご覧ください。

(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/)

あらすじ:彼は救世主なのか?悪魔なのか?

デューン
左:ポール(ティモシー・シャラメ)右:ハレック(ジョシュ・ブローリン)https://www.facebook.com/dune/

ハルコンネン家の陰謀により、アトレイデス家は滅亡した。

しかしながら、最愛の父とすべてを失ったポール(ティモシー・シャラメ)は荒れ果てた砂の惑星の中で生きながらえていた。

ポールは、砂漠の民フレメンと生活を共にしながら、救世主として崇められるようになっていく。

果たして、ポールは砂の惑星デューンを救う救世主となるのか?それとも…?

衝撃の事実がPART2で、ついに明らかに!

デューン
ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)https://www.facebook.com/dune/

本作の衝撃は何といっても、教母となったポールの母親ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)が、あろうことかハルコンネン家のウラディミール・ハルコンネン(ステラン・スカルスガルド)の娘だったということです。

つまり、アトレイデス家の後継者であるポールは、ウラディミールの孫なのです。

前作から登場するラッバーン(デイヴ・バウティスタ)や、本作で登場するフェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)はあくまで甥であるため、ポールの方が血統としては、ハルコンネン家の正統な後継者だと言えます。

筆者自身は原作未読ではありますが、原作の背景には宗教的要素が散りばめられているそうです。

また、ドゥニ版「デューン」では、前作から言葉や作品全体に宗教的要素が漂っていましたが『PART2』では、その色が濃くなっています。

中でも、この衝撃の事実によってこれが宗教的要素がある物語であることが確定しました。

個人的に大興奮の理由を丁寧に解説していきます。

劇中にも登場する、「預言者」って…?

デューン
https://www.facebook.com/dune/

ユダヤ教の物語には、かの有名な“モーセ”という人物が登場します。

モーセは、当時、苦しみを受けていたユダヤ人を救い出し「カナンの地」を目指すことになります。

その道中で、モーセが手をかざすと海が2つに分かれ道が出来た話は、誰もが聞いたことのある物語です。

ユダヤ教をはじめ、キリスト教、イスラム教には預言者という人物が登場します。

ユダヤ教においてはそれがモーセなのです。

予言とは異なり、文字通り「(神からの)言葉」を「預かる者」という意味であり、神からの言葉を唯一受け取ることができる仲介者として重要視されます。

詳細は省略しますが、モーセが生まれた時代では、ユダヤ人はエジプトで奴隷として扱われており苦しい生活を強いられていました。

さらに、ユダヤ人の繁栄を恐れたエジプトの王・ファラオは彼らを弾圧するようになり、王は「生まれてくる子供はすべて殺害するように」との命令をも下すのです。

その状況下で生まれたモーセは、両親の判断でナイル川に流されることになります。

ナイル川で、別の女性に拾われ育てられていくことになるのですが、実は、ここに『PART2』に繋がる要素が隠されています。

ポールは、本当に「救世主」になるのか?

デューン
ポール(ティモシー・シャラメ)https://www.facebook.com/dune/

先ほど登場した、モーセをナイル川で拾った女性は、実はファラオの娘。

つまり、弾圧をしていた国王の娘だったのです。

王家の子供として育てられたモーセはある日、自らの血筋を知り、ユダヤ人を救うために動き出すのです。

お気づきの方もいると思いますが、おそらく砂の惑星デューンは、今なお争いが続いている、イスラエルの首都「エルサレム」だと考えられます。

そして、作中では先住民と表現されていますが、デューンに太古の昔から生活している砂漠の民フレメンは、ユダヤ人だと考えられます。

それを決定づけるように、ユダヤ教には「救世主(メシア)思想」という考え方があり、民族の危機に際し、救世主が現れると信じられています。

つまり『PART1』では、主人公ポールがその救世主であるかもしれない…という物語の運び方がされており、なおかつ『PART2』の前半部では、砂漠の民フレメンしか出来ないようなことをやってのけ、まるでフレメンの血筋であるかのように描かれているのです。

そして、フレメンたちは、ポールを「マフディーリサーン・アル=ガイブ」や「マフディー」と呼び、いわゆる救世主として扱うのです。

しかし、ここでまさかの展開が起きます。

彼は砂の惑星デューンを弾圧するハルコンネン家の血筋だったのです。

ユダヤ教の物語でいけば、ポールの出自は砂の惑星デューンに住むフレメンではあるはず。

だからこそ、フレメンたちの救世主になるはずなのですが、蓋をあけてみたらそうではない……

絶妙なツイストに筆者が気づいた時から、映画にも不穏な空気が漂いはじめます。

ポールを見つめる「チャニ」の眼差し

デューン
https://www.facebook.com/dune/

救世主であることを自身の力で証明していくポールに、最初に、そして唯一違和感を覚えたのはチャニ(ゼンデイヤ)でした。

砂の惑星デューンのため、と言いつつも狂信的な方向でフレメンたちを束ねていくポールの姿に、私たち観客はどことなく恐怖を感じたはずです。

そこで登場するのがキリスト教の話です。

こちらも詳細は割愛しますが、イエス・キリストは神の子と表現され、ユダヤ教徒である両親のもとで育てられました。

当時のユダヤ教の教えとは一風変わった宣教を行うイエスは、神の子であるため、宣教活動の道中で様々な奇跡を起こします。

そして、徐々に信者を増やしていき、最終的には宗教的異端者・反逆者として処刑されてしまうのです。

フレメンたちの伝承に基づき、これまでにない形で人々を先導していく姿はイエス・キリストの物語に酷似しています。

何より、覚醒するために「命の水」を飲むことで命を失いながらも復活する様は、処刑後に復活するキリストの物語に繋がります。

となると、チャニはこうした物語の中のどの立ち位置のキャラクターなのでしょうか……

かの有名な絵画「最後の晩餐」に描かれた、イエス・キリストを裏切った信徒ユダとでもいうのでしょうか?

女性が主役、ドゥニ監督作品で欠かせない視点

デューン
ベネ・ゲセリットの教母(シャーロット・ランプリング)https://www.facebook.com/dune/

もう一つだけ付け加えるとすると、ドゥニ監督作品で欠かせない「女性」の視点です。

実は、様々な宗教において歴史的に女性は権力が与えられていないことがほとんどです。

しかしながら『DUNE/デューン 砂の惑星』では、ベネ・ゲセリットという女性のみで構成される秘密結社が世界を動かす黒幕として存在していたり、と女性の視点が重視されています。

秘密結社「ベネ・ゲセリット」の本当の目的は?

彼女たちが待ち望む救世主は「クウィサッツ・ハデラック」という、過去と未来を繋ぐ超人的な能力をもつ者、つまり母ジェシカも、この結社「ベネ・ゲセリット」のメンバーであり、その中で登場したのが救世主ポールなのです。

つまり、多くのフレメンが信じるポールという救世主は、彼女たちによって“つくられた”救世主ともいえるのです。

となると、結社ベネ・ゲセリットの本当の目的は何のでしょうか?

ここで鍵となるのが、ポールの母親ジェシカです。

『PART2』におけるジェシカの姿を見て思い浮かんだのは、2021年に公開された映画『ベネデッタ』でした。

ベネデッタ
『ベネデッタ』https://japan.unifrance.org/

この作品は、17世紀に実在したベネデッタ・カルリーニという修道女をモチーフとしたものです。

彼女は幼い頃から、聖母マリアやキリストのビジョンを見続け、聖痕が浮かび上がるなど様々な奇跡が起きていく中で、民衆の支持を集めた女性です。

女性には価値がないとされた男性社会の中で、権力をつかみ、修道院長に就任した珍しい女性です。

ベネデッタの主張は、嘘だったのか本当だったのかわかりませんが、自らの出自を知り隠しながら民衆を導くジェシカの姿は彼女そのもののように感じます。

神のお告げを受けて…という点ではジャンヌ・ダルクも思い浮かびますが、これに関しては続編で明らかになるでしょう。

それぞれの大領家を「駒にすぎない」と言い張るベネ・ゲセリットの真の目的についても、続編で明らかになることでしょう。

救世主はポール、それとも妹のアリア?

デューン
アリア(アニャ・テイラー=ジョイ) https://www.facebook.com/dune/

ポールは、ビジョンの中で、水に満たされた砂の惑星デューンを目にします。

砂浜に見える一人の人物の後ろ姿…しかしながら、それはポール自身ではなく、ジェシカに宿った妹の姿でした。

これは観客にとってもサプライズでしたが、妹役として登場したのがアニャ・テイラー=ジョイだったのです。

救世主でありながら、多くの人々が飢えで苦しむ様子をビジョンで見た一方で、水で満たされた惑星の様子をビジョンで見たポール。

胎児であるにも関わらず、ジェシカの思考にも影響を与えるほどの妹の力。

果たして、ポールはフレメンが思い描く救世主なのか?それとも、惑星を滅亡へと導く悪魔なのか?

続編が待ちきれない展開に、多くのファンを唸らせることでしょう。

物語の語り手は「女性」、今回はイルーラン

デューン
イルーラン(フローレンス・ピュー)https://www.facebook.com/dune/

皆さんも気づいていると思いますが『PART1』の冒頭でモノローグを語るのは、ゼンデイヤ演じるチャニでした。

本作『PART2』の冒頭でモノローグを語るのは、フローレンス・ピュー演じる皇女イルーランです。

つまり、この作品自体が、女性の視点で語られる物語なのです。

となると、続編でモノローグを語るのは誰なのでしょうか?

奇跡のIMAX体験、今を逃すな!!

デューン
ラッバーン(デイヴ・バウティスタ)https://www.facebook.com/dune/

冒頭で警告した通り、本記事をここまで読んだ方はすでに鑑賞したことと思います。

しかしながら、皆さんはIMAXでしっかりと鑑賞したのでしょうか?

本作はほぼ全編にわたって、本来のIMAX画角でとられた作品であり、フルスクリーンが堪能できる劇場は日本に数館しかありません。

しかしながら、この映像体験は現時点で最高峰です。

サンパーを使ってサンドワームをおびき寄せる場面では、劇場全体が振動するほどの重低音が鳴り響き、画面の向こう側からサンドワームが襲い掛かってくる感覚を全身で浴びることができます。

今回は、あくまで個人的な視点および解釈に基づいて、考察をしてきましたが、ここまで考察しがいのある作品は稀です。

是非、皆さんの考えや意見もシェアして頂ければ、と思います。

《ライター:ファルコン》 クリックで担当記事一覧へ→

プロフィール,ファルコン

記事をご覧いただきありがとうございます。

映画と音楽が人生の主成分のライターのファルコンです。
学生時代に映画アプリFilmarksの“FILMAGA”でライターをしていました。
大人になって、また映画の世界の魅力を皆さんにお伝えできれば、と思いライター復帰しました。
記事の感想などありましたら、お気軽にご連絡くださいませ。

m.falcon0117@gmail.com

ブログ統計情報

  • 1,381,068 アクセス

Be the first to comment

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください