2024年、ピクサーの制作作品『インサイド・ヘッド2』の公開に先駆けて、ここ数年で配信スルーとなっていた3本の映画が劇場公開されることになりました。
中国系カナダ人の母子関係を描いた『私ときどきレッサーパンダ』(3月15日より公開)、
海に住む一族とイタリア人の少女との物語『あの夏のルカ』(3月29日より公開)、
そしてアフリカンアメリカンとジャズ/ソウル文化を力強く表象した『ソウルフル・ワールド』(4月12日より公開)。
2024年3月から4月にかけて順に公開される3本のあらすじと見どころを紹介します!
(冒頭画像:引用https://www.facebook.com/PixarLuca/)
❶『私ときどきレッサーパンダ』
2022年に配信された『私ときどきレッサーパンダ』。
2002年のカナダを舞台に、12歳の中国系の少女メイが、家系に伝わる不思議な伝統によりレッサーパンダに変身する能力を得てしまうという物語です。
メイは母親の手を借りてなんとか「レッサーパンダ」を抑え込み、言い伝え通り満月の夜までに完全にコントロールする術を身につけようとします。
しかし、満月の夜はメイの大好きなアイドル「4Town」のコンサートがカナダで行われる日。
両親に却下されても、どうしても友達とコンサートに行きたいメイでしたが……。
思春期の10代と親子関係を描いた秀作
『私ときどきレッサーパンダ』の原題は、『Turning Red』(赤くなる)。
「怒ったり感情が昂って顔が赤くなる」というような意味です。
この作品での「レッサーパンダ」とは、10代の子供に起きる体や感情の変化の象徴。
本作は、そんな誰もが持っている激情、癇癪、特にアジア人女性が「抑え込み蓋をしろ」と社会に強いられることが多い感情を、丸ごと愛して受け入れようという非常にポジティブなメッセージを発しています。
メイと母親のミンとの関係の細やかでユーモラスな描かれ方は、数々の親子関係が描かれてきたピクサーの中でもピカイチ!ぜひ注目してみてください。
『私ときどきレッサーパンダ』は、2024年3月15日から公開です!
❷『あの夏のルカ』
『あの夏のルカ』は、2021年に配信された作品です。
とあるイタリアの港町を舞台に、陸に住む人間たちと、海に住む種族「シー・モンスター」たちの関係が描かれます。
陸の世界に憧れを抱いているシー・モンスターの少年ルカは、ある日出会った同族のアルベルトと共に、人間の街にこっそり入ってみることに。
シー・モンスターたちは人魚のような下半身や鱗のある顔を持っていますが、陸に上がると人間と同じ姿になります。
ただし、水をかけられると元の姿に戻ってしまうので要注意。
ルカとアルベルトは人間の街に本物のバイク「ベスパ」を探しに行きます。
二つの世界と種族を行き来するファンタジー作品
『あの夏のルカ』の見どころは、男の子同士の『リトル・マーメイド』のようなテイストを残したルカとアルベルトの関係性です。
水に濡れると「本当の姿」が周りにバレてしまい街の人に追われるという設定と演出は、優れた性的マイノリティの表象になっていると言えるでしょう。
ルカとアルベルトをはじめとしたシー・モンスターたちの姿が変わる様子や、ランド・モンスター(陸のモンスター=人間)との分断、共存が描かれた秀作です。
『あの夏のルカ』は、2024年3月29日より劇場公開です!
❸『ソウルフル・ワールド』
2020年に配信された『ソウルフル・ワールド』。
主人公は、ジャズピアニストを夢見るジョー。
ようやく夢を掴んだと思った矢先に不慮の事故で亡くなってしまうも、どうしても諦めきれずなんとか現世に戻る方法を見つけるという物語です。
まだ死にたくないともがいたジョーは「死後」に続く道を逆戻りし、誕生前の魂たちが集まる場所に迷い込んでしまいます。
ジョーはそこで、長い間生を受けるための条件を満たすことができずにいる魂「22番」と出会いますが……。
圧倒的な映像美で描かれる、「天」の世界に注目!
『ソウルフル・ワールド』の見どころは、なんといっても死後/誕生前の世界を表現した圧倒的なイマジネーション。
たくさんの魂たちはもちろん、針金のような線の一筆書きで描かれた天界のスタッフ「ジェリー」たちのデザインも配信当時話題になりました。
また、中盤に登場する黒人専用の理髪店の場面にも注目です。
ジャズと同じように、黒人文化にとっての理髪店のコミュニティの重要さが描かれています。
ソウル=魂という音楽ジャンルと人生を主題にした、ミニマムであると当時にスケールの大きな作品です。
『ソウルフル・ワールド』は、2024年4月12日より劇場公開です!
製作の裏側を描いたドキュメンタリーも配信中!
今回紹介した3本は、コロナ禍の影響で劇場公開されなかった作品たち。
しかしその代わりに、ディズニー+という強力なプラットフォームで配信されています。
『私ときどきレッサーパンダ』の製作秘話ドキュメンタリー『レッサーパンダを抱きしめて』は、製作スタッフの多くが女性だったということや、リモート製作の背景などを知ることができます。
必見です!
そのほかにも、配信の作品ページにある「特典映像」タブからは、カットされた場面やアニメーションができる過程などを見ることができます。ディズニー+ならではのコンテンツですね!
劇場で作品を楽しんだら、配信で作品の裏側も楽しんでみてください!
《ライター:ぜろ》 担当記事一覧はこちらをクリック→
高校2年生で『アベンジャーズ』を観て以来の映画ファン。大学と大学院では映画研究にどっぷり浸かっていました。
アナログでファンアートを描いてはインスタグラムに載せています。楽し〜!
話題の作品や、そこにつながる過去の名作、注目のキャストなどをわかりやすく楽しく紹介していきたいです!
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