イラン映画が日本でも注目されるなかで、2023年に公開された映画『君は行く先を知らない』は最も注目を集めた作品のひとつです。
イランの大地を舞台に、行く先を知らない幼い次男と車で旅する家族が向かう先に待つ者とは…。
イランの人権問題や貧困などイランの社会情勢が、この旅を通して浮き彫りになる切ないストーリーとイラン映画の独特な世界観も含めて、見どころをご紹介します。
(冒頭画像:引用https://www.flag-pictures.co.jp/hittheroad-movie/)
イラン映画『君は行く先を知らない』:あらすじ
一家は、イランの大地を国境へ向かって車を走らせていました。
母親は車中で明るく振舞い、足にギブスをはめた父親は不愛想ながらも落ち着かない様子。
そして長男は時折苛立ちを見せながらもハンドルを握っています。
この旅の目的を知らない次男は、車内で悪態をつき両親を困らせます。
旅の途中、自転車レースで怪我をした男性を車に乗せたりと様々な出来事が起きるなかで、家族は目的地へと到着します。
そこで待っていたのは、覆面を被りバイクに乗った男性でした。
家族は、そのバイクの道案内によって、さらに違う場所へと向かいます。
幼い次男の無邪気さが唯一の救い⁉ 見どころをピックアップ
本作は、イランの荒野が舞台とあって国境までの道のりをひたすら映し出すロードムービーです。
両親の重々しい雰囲気や会話のやり取りによって、家族がどのような目的で国境へと向かっているのか少しずつ分かってきます。
そんな家族の心境を全く知らない次男のワガママっぷりは緊張感を和らげてくれるポイントでもあります。
また、母親もカーステレオの歌謡曲に合わせて体を揺らしたり、曲に合わせて後部座席の父親が無言でカメラ目線になるシーンなどイランの独特な世界観も見どころです。
イラン映画の特徴、子供を主人公にする意味
※イラン映画は、ほとんどの場合、イラン人の映画スタッフと俳優によって製作されています。
また、作品によっては子供を主人公にすることで政治批判と捉えられないようにしているとのこと。
これは作品が政府による検問に引っかからない工夫ともいえるでしょう。
内容によっては、監督が逮捕されてしまうこともあるそうです。
イラン映画の魅力でもあるドキュメンタリーとフィクションを融合させた作品は、低予算の制作にもかかわらず国際的に評価を受けているものばかりです。
※参考:公式ホームページ「ショーレ・ゴルパリアン」さんの本作品コメント
※イラン映画と「ショーレ・ゴルパリアン」さんについて【管理人・選】
※ショーレ・ゴルパリアン (通訳翻訳家/プロデューサー)映画プロデューサー、字幕翻訳家、東京藝術大学大学院映像研究科客員教授。イラン生まれ。79年来日、在日イラン大使館の大使秘書などを努める。
※イスラム革命、対イラク戦争、昭和の終わりにバブル崩壊、労働者の大量来日、アメリカの経済制裁……激動の時代のなかイランと日本を往復し、遠く離れた両国の「奥深くに似たところがある」「イランと日本は編みあわされた一つの国」と感じるまで二つの文化のかけ橋となった女性の映画愛に満ちた涙と笑いの半生記。【引用:Amazon】
※プロデューサー「ショーレ・ゴルパリアン」作品
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まとめ:パナー・パナヒ監督の長編映画デビュー
本作は「カンヌ国際映画祭」や「ベルリン国際映画祭」など数多くの賞を受賞してきたイラン映画の巨匠ジャファール・パナヒ監督の長男パナー・パナヒによる長編映画デビュー作です。
父であるジャファル・パナヒ監督のもとでコンサルタント、編集者、助監督を務めるなど実績を積み上げてきたパナー・パナヒ監督。
本作は、監督の家族や友人など周りで実際に起きた出来事から着想を得たそうです。
イランでは国民の人権侵害、表現の自由さえも制限されているなかで、イランの社会背景を映し出している本作『君は行く先を知らない』は観る者の記憶に残る作品といえるでしょう。
《ライター:sanae》
毎週金曜日は映画館に出没する某新聞社エンタメニュースライター。
子供の頃から観た映画は数知れず、気になった作品はジャンル問わず鑑賞。
日常生活を彩る映画との出会いのお手伝いができたら幸いです。
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