今回、紹介するのは『ジュリア(s)』です。
予告編を観て分かるように、本作は近年、取り上げられることが増えたいわゆる「if(もしも)作品」。
「もしも、あの時、この選択をしていたら…」という“If”が、今作では丁寧に描かれています。
ミニシアター系作品としてひっそりと公開がはじまりましたが、筆者の感覚として近年まれにみる大傑作であり、口コミ次第ではロングランもあるのでは、という感想を持ちました。
同じミニシアター系で多くの映画ファンを虜にした『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』に匹敵するような必見の良作です!
今回は、そんな『ジュリア(s)』の魅力と、特に、他の”if”を扱う作品とは一線を画す理由について考察したいと思います。
(冒頭画像:引用https://twitter.com/KlockworxInfo/)
ジュリアに重ねる、運命を決める要素は…?
あの時、あの場所で、違う選択をしていたら…あなたには、そんな瞬間はありますか。
これは、ジュリアという女性が積み重ねてきた選択を眺め「あなた自身」の人生を振り返るための物語。
あなたは今、幸せですかー?
“If…”で綴られる、エモーショナルな大傑作
近年、「もしも、あの時…」というテーマを掲げた作品は数え切れません。
それこそ、マーベル作品を筆頭に、アカデミー賞を騒がせた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が掲げるマルチバースだけでなく、人生の選択に焦点を当てた『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』や『わたしは最悪。』など、このテーマはいまや飽和状態にあります。
しかしながら、今回の『ジュリア(s)』に関しては、とにかくエモーショナルで、どこまでもリアルであり、必見の価値があります。
本作が傑作になりうる、3つの理由とは?
本作は、フランス版アカデミー賞とも言われるセザール賞において短編映画賞などを受賞したオリバー・トレイナー監督の長編デビュー作。
主演もエミー賞で主演女優賞を受賞したルー・ドゥ・ラージュではありますが、日本ではそこまで話題となっていません。
しかしながら、本作を見逃すと絶対に後悔すると思いますので、他の“If…”で綴られる作品とは一線を画すポイントを紹介していきたいと思います。
そして、そのポイントというのが本作が傑作になりうる3つの理由なのです。
●ルー・ドゥ・ラージュ(Lou de Laâge)
誕生日:1990年4月27日生まれ
星座:おうし座
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出身:フランス・ボルドー
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1.シームレスな“選択”の描き方
本作の特筆すべき最初の点は「異なる選択肢」の描き方が、流れるように、そして自然に描かれていることです。
他の作品では不思議な力を使ったりすることで分岐点そのものに戻り、再スタートしますが、本作ではその分岐点が“同じ画面上”で描かれます。
たとえば、物語冒頭、ピアニストを目指す17歳のジュリアが登場します。
ある晩、友達と寮を抜け出すために階段を駆け下りるジュリアがいるその向こう側に、寮母さんに見つかり抜け出せなかったジュリアがいるのです。
文章では伝わりづらいとは思いますが、人生の分岐点となりうる場面が映し出されるとき、同じ画面の中にもう一つの選択をするジュリアが映っているのです。
「いま、こうしたらどうなるかな…」「いま、こうなったらどうなるかな…」そんな頭に思い浮かべたことを映像として描いているのです。
同時並行で様々な人生が描かれるため、一見すると難解ではありますが、後半になるにつれ「あの選択をしたジュリアはこうなったのか…」と点と点が線でつながる楽しさがあります。
2.共感を呼ぶリアルな分岐点
2つの目の特筆すべき点は、誰もがもつ人生における葛藤をリアルに描いている点です。
これも他の作品でも描かれているのですが、ここまで共感できるものに出会ったことがありません。
オリバー・トレイナー監督は、本作について下記のことを述べています。
私たちは皆、偶然が決定的な影響を及ぼしたいくつかの重要な瞬間を覚えています。…(中略)…この物語が見る人の心に深く響き、感動を通して、それぞれの人生の大切な瞬間を思い出すきっかけになればと願っています。
つまり、監督は私たちが絶対に覚えている分岐点をジュリアに意図的に投影させているということです。
実際、映画の中では、仕事において「夢を実現するか」「現実を受け入れるか」、プライベートにおいては人生を共に過ごす相手として「誰を選ぶか」、親と「どう関わるか」…など、私たちが普段生きている中でぶつかる壁を、ジュリアという一人の人物に丁寧に投影しています。
私たちが生きている中で確実にくだしてきた決断をなぞって、ジュリアの人生や分岐点を描いているからこそ、共感を呼ぶリアルさがあるのです。
3.すべての選択を肯定する力
最後の特筆すべき点…これが他の作品にはなかった最大のポイントです。
これまで出会ったきた作品は「A」という選択肢を選んだ中で失敗したら、「B」という選択肢を選んで「A」をなかったことにします。
しかしながら、それは「A」がダメな選択であり、なかったことにする…ということを意味します。
これは映画だから成り立つことです。
実際には、私たちの人生は選択をした「失敗」だと感じたとしても、戻ることは出来ませんし、その置かれた状況で踏ん張るしかありません。
本作はそのことを踏まえたうえで、「どの選択にも、山もあれば谷もある」ということを丁寧に描いています。
すべては、人生において必要な出来事であり“偶然”にすぎません。
すべての選択を経て、最後に「幸せだった」と思えるように経験を重ねていくほか、ないのです。
そうした点においても、本作はどこまでもリアルでした。
『LE TOURBILLON DE LA VIE』壮大な「人生の渦」へ
本作は、英語のタイトルは『Julia(s)』であり、様々な分岐を経て生まれたジュリアの人生を意味するものとなっています。
しかしながら、フランス語のタイトル『LE TOURBILLON DE LA VIE』は、どうやら調べてみると“人生の渦”という意味になるようです。
私たち人間は、1日の中で35000回の選択をくだしている…という文章を昔、どこかで読んだことがあります。
その選択の一つ一つが私たちの人生に大きな影響を与え、私たちを築き上げているのです。
今が苦しい時期なのであれば、いつかは必ず幸せだと思える瞬間がくる。
今が幸せだと感じる時期だったとしても、いつかは苦しいと思ってしまう瞬間がくる。
でも、それもこれもひっくるめて人生なのではないでしょうか?
この『ジュリア(s)』は、そんな人生の渦に巻き込まれている私たちへの人生賛歌であるとともに、私たちにそっと手を差し伸べ、そっと背中を押してくれるようなあたたかな作品なのです。
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映画と音楽が人生の主成分のライターのファルコンです。
学生時代に映画アプリFilmarksの“FILMAGA”でライターをしていました。
大人になって、また映画の世界の魅力を皆さんにお伝えできれば、と思いライター復帰しました。
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