2019年に公開された映画、『セバーグ』。
「セバーグ」というタイトルは、この映画の主人公であり、1960年代から1970年代にかけて実際に女優として活動していたジーン・セバーグ(Jean Seberg)からとられています。
公民権運動に参加し、有名であるがゆえに世間から不当な中傷を受け続け命を経ってしまった彼女。
その※悲劇的ともいえる人生をどう観客に伝えようとしたのか。
それでは紹介していきましょう。
映画『セバーグ』あらすじ:公民権運動に共感するジーン
舞台は1960年代後半、黒人の公民権運動によってまさに時代が変わろうとしていたアメリカ。
フランスで女優として活躍していたジーン・セバーグ(クリステン・スチュアート)は、彼らの活動に共感し、寄付を行うようになる。
彼女の資金面での援助は公民権運動を推進する組織への大きな助けとなるが、過激派US党の党首ハキーム・ジャマル(アンソニー・マッキー)との不倫によってFBIに危険人物としてマークされてしまう。
そして捜査がエスカレートしていくにつれ、セバーグの精神も少しずつ壊れていく・・・
●ジーン・セバーグ(Jean Seberg)
誕生日:1938年11月13日生まれ
没 年:1979年8月30日(40歳)
出身:アメリカ・アイオワ州
▶おすすめの代表作品
深掘りポイント:色彩を使い分けた製作者の意図とは
映画というのは必ず偶然というのは存在しません。
全てのシーンに製作者の意図が込められています。
今回は、画面の色彩について少し深掘りしてみましょう。
まずはこの映画の主人公であるジーン・セバーグ(画像:上左)。
セバーグはハリウッドでこそ人気はあまりありませんでしたが、フランスでは一躍時の人になっていたため、60年代らしい黄色のドレス、赤いビキニなどを着ていたりと、カラフルな色使いがシーンのたびに多用されています。(予告編参照)
しかしながらこの映画の影の主人公というべき、ジャック・ソロモン(下中:ジャック・オコンネル)の場合はどうでしょう。
彼の登場するシーンを観てみると色彩は青が多用され、どちらかというと落ち着いていてクール、それでいて冷たい印象です。
この二つの色彩の対比によって場面の変化を観客がわかりやすいように伝えているのです。
このように色彩はその映画の空気感を感じ取るための重要な情報の一つなので、気になった方はぜひもう一度観て確認してみてくださいね。
※実録の「FBI対ジーン・セバーグ」参考本【管理人・選】
※J=L ゴダール監督の『勝手にしやがれ』で、いまも観客のこころをとらえて離さない、女優ジーン・セバーグ。自分を信じて全力で生き、愛し、演じたその生涯を暗転させたのは、FBIの謀略だった…。謎の死を遂げた稀代の女優の実像を関係者への取材や膨大な資料から浮かびあがらせる決定版評伝。貴重なプライヴェート写真など、60点以上を収録。【引用:Amazon】
※ヌーヴェルヴァーグのトップ女優は、「政治」に謀殺されたのか?秘蔵資料を駆使して個人と国家権力との相剋を徹底検証する、迫真のドキュメント。
映画『セバーグ』見どころ:生命力あふれる一人の女性
この映画の見どころはやはり、TIME紙の『2019年のベスト・ムービー・パフォーマンス』に選ばれたクリステン・スチュアートの演技でしょう。
このコラムを執筆したステファニー・ザカレックはこう述べています。
『クリステン・スチュアートは悲しみに満ちたセバーグの人生に心を開き、血管の隅々まで彼女の魂で満たした。そうして生み出されたクリステンの演じたセバーグは単に悲劇のヒロインとしてではなく、生命力溢れる一人の女性として観客に訴えかけている。』
と。
この映画の前半と後半でガラリと表情を変えてみせる、クリステン・スチュアートのこの演技力は、コラムから読み取れるように圧巻そのもの。
そして、2021年に公開された『スペンサー』(日本公開:2022年10月14日)で多数の賞を獲得したことからわかるように、彼女の女優としてのキャリアはこれからより飛躍していくことでしょう。
2010年代に入って輝き出した彼女の演技からは目が離せません!
参考:TIME紙『2019年のベスト・ムービー・パフォーマンス』
●クリステン・スチュワート(Kristen Stewart)
誕生日:1990年4月9日生まれ
星座:おひつじ座
身長:165㎝
出身:アメリカ・カリフォルニア州
CMブランド:シャネル
▶おすすめ代表作:『チャーリーズ・エンジェル』
まとめ:乗り移ったクリステンの演技の凄さ
この映画自体の評価はそれほど高くはないようですが、クリステン・スチュアートのまるでジーン・セバーグ本人が乗り移ったような圧倒的な演技は、一見の価値はあると思います。
そして、これは補足ですが、作品の途中で、ジャン=リュック・ゴダール監督の1960年の作品『勝手にしやがれ』でジーン・セバーグ本人が演じたパトリシアの役を、クリステン・スチュアートが演じるという、映画好きにはたまらないシーンも観ることができます。
ちなみに、ジャン=リュック・ゴダールのこの作品も1950年代後半から1960年代に興った映画運動、フレンチニューウェーブを語る上で欠かせない作品なので、そちらも観ていただくといいと思います。
本物のジーン・セバーグと比べてみると、よりクリステン・スチュアートの演技の凄さが確認できると思いますよ。
《ライター:yuho》 (カナダ・トロント在住)
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