日本では2000年に初公開された映画ロッタちゃんシリーズが、20年以上の時を越えて2Kリマスター版でリバイバル上映されました。
原作は「長ぐつ下のピッピ」で知られるスウェーデンの童話作家アストリッド・リンドグレーンの児童小説「ロッタちゃん」シリーズ。
ふくれっ面が似合う5歳の女の子ロッタちゃんと、ブタのぬいぐるみバムセが巻き起こす愛情たっぷりの物語です。
『ロッタちゃんはじめてのおつかい』は冬から春へ、『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』は春から夏のエピソードが描かれています。
初公開はスウェーデンで1993年9月に、日本ではその約6年後の2000年1月に『ロッタちゃんはじめてのおつかい』が公開されました。
公開当時、恵比寿ガーデンシネマで動員80,000人、興収1億2,000万円を記録する大ヒット飛ばし、同年6月に『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』が公開されると動員37,000人、興行収5,750万円を記録。
今回は、そんな傑作シリーズ映画が再上映されたのを機に、2作品のあらすじと撮影秘話などをご紹介します。
(冒頭画像:引用https://twitter.com/Lottaeden2024/)
傑作シリーズの2作品:あらすじ
『ロッタちゃん はじめてのおつかい』
ある朝、ロッタちゃんは嫌な夢を見て不機嫌でした。
そんな彼女はママが用意したセーターがチクチクするとハサミで切ってしまいます。
気まずくなったロッタちゃんは、ぬいぐるみのバムセを連れてお隣のベルイおばさんの家に家出をします。
ママやパパが迎えに来ても帰らないロッタちゃん。しかし、夜になると寂しくなっていき・・・。
他、クリスマスのモミの木が売り切れでツリーが手に入らなくても諦めないロッタちゃんのエピソード。
そして復活祭の前日にイースター・エッグを買い忘れたパパ。そんな時、ロッタちゃんにはある名案が浮かぶエピソード。
オムニバス形式で冬から春へとつなぐ思いやりの詰まった物語です。
『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』
風邪を引いてしまったロッタちゃんは、買い物に行きたいのにママから外出禁止と言われます。
しかし、我慢が出来ないロッタちゃんはレインコートを着て雨のなか外出してしまい・・・。
他、春がきて湖でピクニックするニイマン家の一同。
しかし、バムセが行方不明に・・・そんな中、兄のヨナスは湖に落ちて溺れてしまい大騒ぎになるエピソード。
そして誕生日を迎えたロッタちゃんは、三輪車を卒業して兄や姉が乗るような自転車が欲しくてたまりません。
ベルイおばさん家にある大人用の自転車を盗んだロッタちゃん。
しかし、ロッタちゃんの乗った自転車が暴走してしまうエピソード。
こちらもオムニバス形式で春から夏の様子を描いた物語です。
ロッタちゃんの、微笑ましい撮影秘話
映画撮影時のこと。
ロッタちゃん役のグレテさんは、撮影の合間に石遊びに夢中になってしまいスタッフから呼ばれてもやめたくないと困らせたそうです。
そこでスタッフは、現場にいたおばあさんにロッタちゃんを演じてもらうとグレデさんに言ったそう。
そしたら慌てて「あんなに年を取ったおばあさんがロッタちゃんをやるくらいなら私がやるわ!」と言って事なき得たそうです。
微笑ましいエピソードですよね。
映画の原作者、アストリッド・リンドグレーン
1907年11月14日―2002年1月28日(94歳没)、スウェーデンのヴィンメルビュー生まれ
10代の時に女性運動家エレン・ケイに出会い影響を受け、教師をしながら執筆活動を行う。
1945年、娘のために「長ぐつ下のピッピ」を執筆。
以降、「長ぐつ下のピッピ」も含め「やかまし村の子どもたち」「やねの上のカールソン」「名探偵カッレくん」「ロッタちゃん」「おもしろ荘の子どもたち」などがシリーズとして誕生。
他にも、リンドグレーンは子供や動物の権利の擁護者としても活躍し、1993年にライト・ライブリフッド財団から財団賞を受賞。
1958年には、国際アンデルセン賞、1978年ドイツ書籍協会平和賞、1994年ライト・ライブリフッド賞を受賞。
「長ぐつ下のピッピ」シリーズは全世界で1億3000万部以上を売り上げた。
あの子役キャストたち、今、どうしてる?
ロッタちゃん役、グレテ・ハヴネショルド
1986年、ストックホルム郊外に生まれたグレデさん。
5歳の時に、父親が無断で応募したロッタちゃんのオーディションで約500人の候補から選ばれたそうです。
ロッタちゃん出演後は映画『セルマとヨハンナ』に出演し、テレビやラジオでも活躍。
地元の演劇学校で演劇を学んだのち2006年にホラー映画『フロストバイト』に出演。
現在は舞台を中心に活動しています。
また、ロッタちゃん一家と同じく、一男二女のお母さんになっているそうですよ。
ロッタちゃんの兄「ヨナス」、姉「ミア」の現在
ロッタちゃんの兄役を演じたマルティン・アンデションさん(画像:左)は、現在ブラジル在中。
ロッタちゃん出演後は学業に専念し、数学者になられたそうです。
また、姉役を演じたリン・グロッペンスタードさん(画像:右)は、現在スウェーデン官公庁の参事官を務めているそうです。
まとめ:物語が伝えたいこととは?
一見、わがままな少女に見えるロッタちゃん。
しかし、作品を通して見えてくるのは頑固で強情な性格の持ち主だけどそこが彼女の個性であるということ。
そしてロッタちゃんを取り巻く大人たちは常に彼女の思いを尊重し、温かく見守っている姿勢によってロッタちゃんの”自分自身を信じる心”が育まれているように感じます。
クリスマスのエピソードではロッタちゃんの信念が奇跡を起こし、素敵なクリスマスを過ごすことができました。
作者リンドグレーンは、これまで子どもの自主性を尊重する作品を多く描いてきました。
この”自主性の尊重”こそが子どもの個性を伸ばし、成長とともに様々な可能性を引き出していくといわれています。
そんな自主性を伸ばすためには幼少期の自尊心を育むことが最も重要。
強烈な個性と、ふくれっ面もキュートな幼いロッタちゃんに癒されつつ、彼女に関わる大人たちの姿勢からも大切なことに気づかせてくれる一作です。
《ライター:sanae》
毎週金曜日は映画館に出没する某新聞社エンタメニュースライター。
子供の頃から観た映画は数知れず、気になった作品はジャンル問わず鑑賞。
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