映画には「記憶」をテーマにした作品が数多く存在します。
「記憶」と「映像」は親和性が高いため、映画のテーマとして採用されやすいのです。
そこで今回は、「記憶」をテーマにした数ある映画の中から選んだ3つの作品を、紹介したいと思います。
(冒頭画像:引用https://twitter.com/kino_arthouse/)
映画『彼女のいない部屋』
あらすじ:突然の家出、最後に明かされる真実
クラリス(ヴィッキー・クリープス)は何も言わずに家族を置いて部屋を出ます。
彼女は車で旅に出ますが、行き先は分かりません。
運転しながら、家族とこれまで過ごした記憶を思い出すクラリス。
果たして、彼女が家を出た理由とは何なのか……?
そして明かされる、思いもかけない真実とは……?
バラバラに思えた記憶が繋がる、技巧的なアート作品
主人公のクラリスは、夫と息子と娘と暮らしています。
部屋を出た彼女は、車を運転しながら3人との思い出を振り返りますが、その記憶は断片的で時間軸もバラバラです。
繋がりのないモンタージュのような映像が続き、初見ではストーリーを追うのが困難です。
そのため、2回観たくなる作品になっています。
この映画の最大の見どころは、現実と妄想の境目を見失った彼女が、実際には存在しない新たな記憶を作り出すところでしょう。
「記憶」は脳が作り出したもの。
その全てが現実に起きた出来事とは限らず、自分の都合の良いように書き換えて編集できるのです。
そして、クラリスが一人で部屋を出た理由が明らかになったとき、バラバラのように思えた記憶が繋がる技巧的なアート映画となっています。
映画『アフター・ヤン』
あらすじ:故障したロボットに残っていた記憶
舞台はロボットやクローンが一般的になった未来。
ある日、家庭用人型ロボットのヤン(ジャスティン・H・ミン)が故障してしまいます。
ヤンと一緒に住んでいたジェイク(コリン・ファレル)、その妻のカイラ(ジョディ・ターナー=スミス)、幼い娘のミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)はショックを受けます。
特に中国系の養女であるミカは、同じ中国系の顔立ちをしたヤンのことを兄のように慕っていたため、落ち込んでしまいます。
ジェイクはヤンを元気づけるために、修理に出しますが、ヤンが珍しいロボットであると判明。
ヤンのメモリーを持ち帰ったジェイクは、保存された映像を観ます。
そこには、家族ではない正体不明の若い女性の姿が記録されていました。
残された記憶を辿ることで、見える人生の軌跡。
この映画で描かれるのは、人ではなくロボットの記憶です。
家庭用人型ロボットのヤンは、残したい場面をメモリーとして保存できる機能を備えています。
さらにこのメモリーは他人も閲覧することができます。
メモリーカードを挿入したメガネを装着すると、目の前に星空のような無数の光が広がります。
そのひとつ一つが動画ファイルとなっているのです。
ヤンは古いロボットであるため、何世代にも渡る数えきれない記録が、アーカイブとして残されていました。
この映画を観ていると、記憶の深淵を覗いたような気持ちになります。
私たちの人生は、このような無数の記録が重層的に積み上がることで、形作られているのだと、思い至りました。
映画『レミニセンス』
あらすじ:「記憶潜入」という仕事する男
都市の大半が海に沈み、水に支配された世界。
ニック(ヒュー・ジャックマン)は人の記憶を画面に映し出し、分析する「記憶潜入」という仕事をしていました。
ある日、メイ(レベッカ・ファーガソン)という美女から「鍵を探して欲しい」という依頼を受けます。
メイに恋したニックは、記憶から鍵を見つけだし、彼女と付き合うことになります。
ところが、メイは姿を消してしまいます。
忘れられないニックは、メイの調査を始めます。
そして、メイが麻薬の売人と繋がりがあることを発見。
それをきっかけに、様々な謎が浮上します。
果たして、メイは何者なのか……?
記憶潜入で暴かれる、ミステリアスな美女の真実。
本作はSFサスペンス映画となっています。
主人公のニックは、「記憶探偵」を仕事にしています。
記憶へ潜入する装置を使って、他人の記憶を映画のようにスクリーンへ投影できるのです。
そんなニックは謎の美女であるメイと出会って恋愛をしますが、彼女には裏の顔がありました。
彼女は一体何者なのか、何の目的でやってきたのか……。
その謎を、記憶を手掛かりに解いていくという物語です。
出会った相手のことを知りたいと思った時、私たちは見た目や会話から人となりを判断して友達や恋人になります。
でもそこで、嘘をつかれたり、隠されたりした場合はどうでしょう。
そうなると、相手がどんな人物なのか、どのような人生を歩んできたのかを知ることはできません。
この映画のように、記憶を覗きでもしない限り、相手の真実の姿は分からないのです。
他人と本当の意味で分かり合うことはできないのだ、ということを思い知らされました。
まとめ
過去の記憶を思い出すとき、私たちはその情景を頭に思い浮かべます。
記憶は文字としてではなく、映像として脳にインプットされているのです。
その点で、記憶と映画は密接に繋がっているといえます。
私たちが映画に愛着を覚える理由は、そのためなのかもしれません。
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こんにちは!ライターの「げん」と申します。
映像が好きで、テレビドラマのプロットなどを書いていました。また、恋愛小説をファッション誌で連載したこともあります。これらの経験をもとに、映画を通して恋愛を学ぶ記事などを書いています。
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